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402 蛇

 爺さんのセクハラを受けながらも見張りの交代の時間が来た。

 俺達は明日もあるんだ……。

 これ以上の体力の浪費は避けたい……主に爺さんの所為だが……。


 その日はもう休むことにし、目を閉じる。

 そんなことを思いながらも俺は出来ればアウクに会えたらなと思っていた。

 だが、俺のそんな願いは叶う事はなく……。

 朝を迎えた。

 もしかして見放されてしまったのだろうか?

 いや、そんなはずはないはずだ……。


 だが、この頃彼に会えない。

 それが何を意味するのか分からない。

 見捨てられたのか……。

 それとも別の理由か……だが、そんなことで立ち止まっている暇はない。

 俺はカバンの中からリンゴを一つ取り出すとライムへと差し出した。


 ライムは嬉しそうにぴょんぴょんとはね、リンゴを抱えるようにして取り込むとじわじわと溶かし始めている。

 本当にかわいいやつだ。


「ライム今日もクリエのことを頼む」


 俺はそんなライムの頭を撫でてそう口にした。

 ライムは恐らく分かったと言ってくれているのだろうプルプルと震えている。

 とにかく、今は進むしかない。

 そう考えながら俺は起き上がると……。


「……よし!」


 身を引き締めるために両頬を軽くたたいた。




 歩き始めてどのぐらいの時間がたっただろうか?

 今はどこらへんだろうか?

 街道を進んでいないからわからないが、方位を確認しながら俺達は順調に進んでいた。

 この先にクリードがある。

 そこにつけば王様の手を借りる事が出来るはずだ。

 今のところは順調だし問題はない……。

 そう悠長に考えられるほど俺は考えなしではなかった。


「止まってくれ!」


 仲間たちに合図を出した俺は目の前を睨む。

 爺さんとトゥスさん、それにレラ師匠は俺の横に並ぶとそれを確認していた。

 魔物……ゴブリンだとかそういったものではない。

 そもそも人型ですらない。

 大きな蛇の魔物だ……。


「厄介だね」


 ただ人と事トゥスさんがそう言うと俺達は頷く。

 何故厄介なのか? 理由は簡単だ……。

 あれには死ぬほどの毒はない。

 だが、問題はその毒だ……受けるとだんだんと体がマヒし動かなくなる。

 そして……最後には丸呑みだ。

 しかも、あの魔物は大喰らいでもあり……村ぐらいなら一匹で壊滅させる。

 この人数ならあっという間に腹の中だろう。


「トゥスさん、銃で倒せるか?」

「おそらくね……そんなに固い皮膚じゃないはずだよ……だけど」


 彼女が渋っている理由は分かる。

 音だ。

 音がすれば当然寄ってくる魔物もいる。

 盗賊なども来るかもしれない。

 だからこそ、自分たちの居場所を特定させる音を出すのは正直避けたいところだ……。


「今は追われる身だもんな……」


 俺は思わずそうつぶやき、辺りを見回す。

 しかし、この道を行かないのならさらに遠回りしなくちゃならない。

 そうなってしまうと……。


 地図を確認しつつ蛇を警戒する。

 いけないことはない……だが、この先には山がある。

 俺達はまぁ大丈夫だとして……。

 二人は?

 無理だな……普通に歩いてても疲労が分かるぐらいなんだ。

 それで山に入るのは自殺行為だよな。

 だとしたら……あの蛇を倒すしかない。

 倒すしかないんだが……トゥスさんの銃は使えない。

 接近戦は危険だ……。

 そうなれば当然……。


「俺の魔法か……」


 相手は蛇、爬虫類だ。

 冷えれば当然動きは鈍くなるはずだ……。


「何言っているんだい……あの大きさの蛇だ、魔法じゃ……」


 確かに危険だ。

 だが、やってみる価値はある……。


「任せろ……大丈夫だ」


 それだけを言い残し俺はゆっくりと蛇へと近づく……どんな器官で察してくるかは分からない。

 だが、良し!!


「氷の精よ、我が呼び声に答え、無数の矢となりて降り注げ――アイス……アロー!!」


 声を潜めて詠唱を唱え魔法を発動させる。


 魔法を使うだけなら詠唱なんていらないが……あえて詠唱をする理由は……。


『――――!!』

 

 そう、氷の矢の数を増やすためだ。

 狙いは蛇ではない……蛇の周り。

 その温度を急激に下げる!! これなら――!!


「駆け抜けるぞ!! クリエ、ライムを絶対に落とさないでくれよ!!」


 ライムは氷に弱い。

 こんなところに置いていったら死んでしまうだろう。

 だからこそクリエに頼み、俺達は巨大な蛇の横を通り過ぎていく……。

 睨んだ通り、蛇の動きは鈍くなっていた。

 しかし――。


「あ!?」


 イリスが凍った足場の所為で転び……。


「何をやっているんですか!?」


 ヘレンがそれを助けに行ってしまった。

 いくら動きが鈍くなっていたとしても獲物を逃がすほど愚かではないだろう。

 蛇はその顎を開け……二人はそれを見つめていた。


「だ、ダメ!! キューラちゃん!!」


 チェルの声が聞こえ、俺は戻っていたことに初めて気が付いた。

 だが、冷静な対処をしている暇なんてない!!


「アースランス!!」


 地面から岩の槍を作り出し、それを足場に高く飛びあがった。

 ここからじゃ蛇の周りが良く見えず、彼女たちに当たるかもしれなかったからだ。


「氷の精よ、我が呼び声に答え、矢となりて迫る脅威を我が敵を……立ちはだかるものを穿て!! アイスアロー!!」


 咄嗟に詠唱を変え、一本の氷の矢を蛇へと解き放った。

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[気になる点] 酔ってくる魔物 ↓ 寄ってくる魔物 [一言] 誰一人脱落せずに行けるのか……
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