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399 安全な水辺を探して……

 動物を追ってさまよう……。

 水辺が近くにあるとは言い切れずに危険でもあるその行為だったが……。


「またあっちか……」


 俺達は動物の去る方向を見て落胆する。

 どうしても大きな目立つ方の川に行くのだ。

 まぁ、そっちの水は今は安全だろうし当然と言えば当然なのだが……。

 どこかに別の水があるはずなんだ。

 そう思って俺は木によりかかった。

 気を張っていたせいか疲れてきたのだ……。


「少し、休みましょう? キューラちゃん歩き続けてます」

「ああ、だけどほかに誰もいないだろ?」


 ヘレンやイリスを歩かせるわけにはいかない。

 かといって離れすぎてもダメだ……すぐに駆け付けられるような距離の場所を俺はうろついていた。。

 しかし……。

 こうも水が見つからないとは思わなかった。

 クリエは心配して一緒に歩いているせいか若干顔に疲労が見えてきた。


「クリエこそ向こうで休んでくれ」

「そんなの、ダメです!」


 そうは言われてもなぁ……。

 俺達の目的はあくまで彼女を――。


「私は……私は……」


 彼女はそう繰り返すと俺の方へと目をしっかりと向けてきた。


「キューラちゃんが傷物にならないか心配なんです!」

「心配してくれたのは分かったが、なぜその言葉を選んだのか詳しく聞きたくなってくるような言葉を選ばないでほしいな」


 俺がそう思わず突っ込みを入れてしまうと彼女は何のこと? と疑問を浮かべたのだろう。

 可愛らしく首を傾げた。

 こいつ……時々天然キャラを発動しているな。

 まぁ、そんなところも可愛いとは思うんだが……。

 ある意味魔性と言ったほうが良いのだろうか?

 俺はため息をつきながら別の動物を探す。

 しかし、このあたりに人間……。

 つまり俺達が来た所為か姿が見えなくなってきた。


 これは諦めてあっちの水を手に入れるか?

 そんなことを考え始めたところ……。


「おっ!」


 俺は小さな声を上げる。

 動物が居たのだ……それも水辺へと向かってはいない。

 もしかしたら別の場所に向かうかもしれないと俺はゆっくりと近づいて行った。

 すると――。


「あれ? さっきとは別の方に進んでいきますね」

「縄張りがあるはずだ……なら、別の水辺で水を飲んでる可能性だってある」


 俺はそう言うとようやく小さな、小さな川でその動物が水を飲んでる姿を確認する事が出来た。


 内心ガッツポーズをした俺はまずは仲間たちにと戻ることにした。

 水辺の近くで野営の準備をしようと思ったからだ。

 しかし、水生の魔物が居ないとは限らない。

 ある程度の距離は必要だろう。

 本当は水辺さえ見つかれば何でもよかった……。

 何故ならこちらにはライムが居るからだ。

 多少毒があろうがライムならば浄化が出来る。

 しかし、動物が飲んでいるということは安全だという証拠でもある。

 これ以上ない好条件に俺は喜んだわけだ。


 一度皆元へと戻り、連れてくると早速ではあるが野営の準備に取り掛かる。

 俺とクリエは水を汲み……。


「ライム、頼むぞ」


 ライムにその中へと入ってもらう。

 いくら動物が飲んでいるからと言っても生水を飲めるわけがない。

 そのまま飲んでしまえば腹を壊したりすることがあるからな。

 沸かすかスライムによる浄化はどうしても必要だ。

 しかし、動物がいるなら危険な魔物はいない。

 見れば意外と動物が行き来してこの水を飲んでいる。


「よし……」


 トゥスさんはそう言うと銃を構え的へと狙いをつけると引き金を引く……。

 今日の夕飯にするつもりだろう。

 ここはよほど平和なのか無警戒な動物はあっさりと狩られ……。


 彼女は獲物へと近づいて行った。


「お肉だけですか……」


 ヘレンは若干不満そうな声を上げていたがイリスは彼女の肩を遠慮がちにつつく。

 一体どうしたというのだろうか?

 そう思っているとパンパンに物が詰まった布袋を取り出していた。

 中身は木の実だ……。


「こ、これ……どうしたんですか?」

「必要かな……って思ったの」

 

 なるほどエルフである彼女であればそう言ったものを探すのが得意なのかもしれない。

 いや、事実得意だからこそ今持っているのだろう。

 何はともかく、食事はそろった。

 俺はクリエへと目を向ける。

 すると彼女は微笑み――。


「はい! 腕によりをかけて作りますね」

「ああ、頼むよ。クリエの料理は久しぶりだ」


 彼女の料理はおいしいからな。

 辛い旅ではあるが、そんな中で楽しみが一つでもあるのはうれしいもんだ。

 それも、彼女の手料理というのなら尚更だ。

 そう思っているとイリスたちは首をかしげていた。


「クリエ嬢ちゃんの料理は旨いんだ……キューラの作った変なスープよりもね」

「……おい」


 確かに俺は料理をできないけど……。

 確かにクリエの方がうまいがその言い方はないだろうに……。


「だ、大丈夫、キューラお姉ちゃんの料理、私食べてみたい」


 そして、ファリスはなんでちょっと興奮気味にそんなことを言うのだろうか?


「わ、私も食べたいです」


 君は食べたはずなんだが?

 そう思いつつも食事の準備は進んでいき……良い匂いがその場にし始めたのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] たぶんキューラちゃんがどこの馬の骨とも知れないやつに傷物にされるくらいなら自分がヤるくらいには思ってる可能性は否定できない
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