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俺は百合勇者の従者にならざるを得ない……  作者: ウニア・キサラギ
17章 彼女のために…… 
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398 不安と信頼

 俺達はクリードへと向け歩いていた。

 だが、街道は使えない。

 何故なら俺達は指名手配をされているからだ。

 向こうの領地に入るまで安全とは言えない。

 だからこそ、安全にクリードへと向かうため街道は避けてきたわけだ。

 しかし……。

 そうなれば当然魔物はいるし、道は荒れている。


「痛っ!?」

「ヘレン、平気か?」


 悪路を歩き続けた結果、旅になれていないヘレンやイリスには疲労が現れていた。

 しかし、ここで歩みを止めるわけにはいかない。

 なんて言えるわけがない。


「少し休もう」


 俺はそう提案した。

 いくら急ぐ旅でも彼女たちが付いてこれなければ意味がないからだ。


「そうですね、このまま進んでも怪我しちゃうかもしれませんし……」

「チッ! まったく、面倒なことになったもんだ」


 トゥスさんはそう言いつつも銃を肩にかけその場に座る。

 どうやら休むことには賛成なようだ。

 しかし、彼女の言い方だと――。


「ごめん、なさい」


 イリスは勘違いをしたんだろう、そう言ってしゅんとしてしまった。

 しかし、彼女に対し面倒くさそうにため息をした彼女は首を振る。


「あんたを責めてるわけじゃない」


 トゥスさんは目を閉じながらそう口にした。


「でも……」

「ふん! アタシはあのままあそこでくすぶってるよりこっちのほうがましだよ」


 それは、俺に対しての言葉だな……。

 まぁ確かにくすぶってはいたのかもしれない。

 正直に言うとあのままクリエが安全に暮らせる街があるのならそれでもいいと思っていた。

 そう、俺にとって重要なのは敵を倒すことではない。

 クリエさえ無事ならそれでいいんだ……。

 そう思ってはいたんだ。

 だが……。


「考えは甘かった……魔王がいるんだ、皆が不安に思っている……。そうなれば当然勇者を求める……」


 俺がそう言うとクリエはつらそうな表情を浮かべた。

 そう、彼女にはその力がもうない。

 だから、誰かが彼女の代わりをしなければならない。

 そして、そうなると次の勇者が生まれるんだろう。

 だからこそ、ルイスが生まれ、あいつは勇者としての責務に狂ってしまった。

 なら、俺は――。


「なら、俺は魔王を倒してやる」

「勇者になるとでも?」


 トゥスさんは呆れたような態度を取っていたがどこか楽しそうだ。

 俺はそんな彼女の言葉に首を横に振った。


「そう呼びたい奴がいるなら勝手に呼べばいい、俺はクリエを守るために魔大陸に渡る……そして、魔王を倒して魔王になる!」


 彼女の一生を守るため、なんて大げさだろう。

 だけど、彼女を守りたいという意志だけは偽りではない。


「それは良いですけど、今はどうするんですか? このままクリードに安全に抜けられるんです?」


 そう言われるとつらいものがある。

 安全にとは言えないからだ。

 今はまだ追手が来てる雰囲気はない。

 だが、いずれ追手がかかるだろう。

 そうなれば道中戦闘は避けられなくなってくる。


「……フリンがどのぐらい耐えられるかだが……」


 俺は思わずそう口にする。

 すると、ため息をついた女性が一人いた。

 トゥスさんだ……。


「それも確実じゃぁない……敵だったらすぐにばれる」

「わかってはいるさ、だけど仲間であれば彼の手を借りるのが最善だ」


 そう言うと、考えが甘いねっとトゥスさんは言うが、他に手がない。

 そう言ったほうが良いと思う。

 誰かが足止めさえしてくれればクリードへと近づくのは少し楽になる。

 だが、それさえもできない状況であればすぐに追いつかれ戦闘や気疲れを起こしてしまう。

 少しでも安全に前に進めることに越したことはない。

 それに――。


「連れて行くほうにもリスクがある……行く先々で罠にはめられるのはごめんだ……寧ろ追っ手をかけるならこの方が手っ取り早いんじゃないか?」


 そう、もし俺が敵であるならついていく……。

 その方が足取りを掴みやすいからだ。

 俺達がちゃんとした町へと入れないのは分かっている。

 だから逆に追うのが大変だ……そう考えることは十分にできるわけで……。

 だったら一人ついて行った方がとらえやすいのは事実だ。

 そう考えると彼は進んで残ることを口にしたこともあり信用はできるんじゃないだろうか?


「……それに」


 俺の言葉に仲間たちが振り返る。


「スクルドから安全に離れる事が出来た。これは今のところは騙せているってことだろ? 彼が戻ったんだしすぐに襲うことは可能のはずだ」

「それさえも罠だったら……?」


 トゥスさんが用心深いのは分かるが……。


「私は……キューラちゃんの考えに同意見です」


 クリエがそう言ってしまえばトゥスさんは何も言えないのだろう。

 舌打ちをして黙り込んだ。

 彼女を守るためと言っておきながら、また彼女に助けられた。

 そう思いながら俺は立ち上がり……。


「ヘレン、イリス……もう大丈夫か?」


 二人に声をかけるのだった。

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