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俺は百合勇者の従者にならざるを得ない……  作者: ウニア・キサラギ
17章 彼女のために…… 
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396 出発

 さて、俺達が幸運だったのは門兵が敵ではなかったってことだ。

 何故それがわかるか? それは単純な理由だ。

 もし俺なら逃げることを考え、町の中から出さない。

 怪しまれる前ならばともかく、あの男を捕らえた後なら尚更だ。


 だが、門兵は特に止めることはせず。

 その結果今ここに俺達がいる。

 最悪な結果としては爺さんたちが敵であり、彼らと一緒に行動をしている……。

 だから止める必要がなかった。


 なんてことだが……今のところそんなそぶりは見せてきていない。

 おそらくは大丈夫だろう。

 なら、善は急げだ。


「早速移動をしよう」

「え!?」


 俺の言葉に驚いたのはヘレンだ。

 彼女は慌てたように――。


「あの、お洋服とかお食事とか……」

「準備にはもう一度町に入る必要がある、危険だね……キューラの言う通りすぐに移動したほうが良い」


 トゥスさんは俺の案に賛成のようだ。

 しかし、ヘレンは――。


「せ、せめて下着……」

「諦める」

「そう、だな……今は贅沢を言っている場合ではない」


 いや、まぁ……下着の替えが欲しいというヘレンの気持ちはわかる。

 わかるんだが……下着は贅沢なのだろうか?

 まぁ、布が高い土地もあるだろうし、そう考えれば贅沢品なのか?


「ぅぅー」


 そんなに睨まないでくれって……。

 今は町に戻るのは避けたいんだ。

 どこに敵が居るか分からないんだからな。

 だからこそ、俺達は安全であるクリードへと向かいたい。

 それにしても……。


「どの方角に進めばいいかを確認しないとな」

「どれ、これを見ると良い、ワシの地図だ」


 爺さんは地図を取り出し机の上へと広げる。

 そこには少し古くさいが確かに地図だ。

 足りない部分は書き足しているみたいだ……どのぐらい使っていたのだろうか?

 微妙に見にくいな。


「えっと……」

「やっぱり、私の町とは離れていますね」


 ヘレンがそう言ったように俺達は元居た場所からはかなり離れている。

 その代わりクリードに近くなった。

 正反対に移動していたのはまぁ驚いたが……。

 それでも今回は幸運だ。

 これが元居た場所に近かったらクリードまで時間がかかるからな。

 さて、方角も決まった……。


「それじゃ行くぞ」

「ってお買い物は!?」

「諦めたほうが……よさそうですね」


 苦笑いをするクリエに対し貴方たちは持ってきてるから良いですけど!? と抗議するヘレンの声が聞こえた。

 だが、うん……一度町に戻ってもとは思うんだが、ヘレンはだめだな……。

 確実にマークされているだろう……今頃はいなくなってて……。


「キューラ様、私はここに残ります」

「……フリン?」


 予想外の言葉に俺は彼の名を呼んだ。

 すると彼は微笑み……。


「もし私まで行けばすぐに動き出すかもしれません……が、私が戻り嘘の情報を流せばその分、時間が稼げるでしょう」


 確かにそうだ。

 そうだけど…………危険だ。

 もう奴らに一緒に行動していることがばれているかもしれない。

 だというのに町に戻る意味はあるのだろうか?

 一緒に行ったほうが……。


「もともとキューラ様に残っていただいていたのは私のわがままです」

「いや、そうは言っても……ノルンの遺言でもあったわけだしな……」


 俺に町を譲る。

 そう言ってくれたのはノルンだ。

 正しくは言ったではなく、遺書が残っていたわけだが、大してそこは問題じゃないだろう。

 だから、彼のわがままというわけではない。

 確かに領主になれと言われた時は困惑をした。

 しかし、今となってはいい経験だ。

 いずれ俺は魔王になるわけだしな。

 この町を少しでも収めた時間が後で役に立つ時が来るかもしれない。


「……フリン、何か秘密があるのか?」


 レラ師匠はフリンに対しそんなことを言い始めた。

 一体どうしたのだろうか、フリンは迷うそぶりを見せ……。


「いえ……」


 彼はそう言った後さらに迷ったような感じだった。

 彼にしては珍しい……。

 そう思っていると今度は俺の方へと目を向け――。


「実は、ですね……あの遺言は確かにノルン様のものです」

「ああ、分かってる……」


 それは分かっているんだ。

 俺は仲間たちに目を向けた後すぐに頷いた。

 すると彼は――。


「ですが一度破棄されたものなのです……私が捨てるように命を受けました」

「……は?」


 言っている意味が分からなかった。

 しかし、彼は一呼吸置き再び口を動かす。


「こんな事を言うと下らないと言われそうですが、嫌な予感……を感じたのです。それで皆が納得するものをと隠しておいたのです」

「お前――!!」


 レラ師匠は顔を真っ赤にするが、俺はなるほどとしか思えなかった。

 結果として彼の感は当たった。

 もし、あの手紙がなかったら領主を決めるのに時間がかかった。

 いや、その間に責められていたかもしれないんだからな……。


「ですから、私には責任があります……キューラ様どうか……私に命をください」

「……わかった、そこまで言うなら俺達が戻るまでスクルドの平和は任せた」


 もう平和と言えるかは分からないけどな……。

 だが、それが彼なりのけじめというなら俺には何も言えない。

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