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俺は百合勇者の従者にならざるを得ない……  作者: ウニア・キサラギ
17章 彼女のために…… 
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394 敵の協力者……

 俺達が連れていかれたのは森とは正反対の場所だった。

 そこにあったのは小さな小屋だ。

 彼はそこに入り、階段を下っていく……。


 それを見て俺は驚いた。

 何故なら、本当に見たことのない小屋だったからだ……。

 そう今日の、今この時まで……。


「お、おい、爺さん……」


 その事を訪ねようとすると彼は「ほっほっほ」と笑うだけで立ち止まりもしなかった。


「師匠、さすがに何も言わないのは……」


 俺達が不安になる。

 そう言いたいらしいレラ師匠は爺さんの肩に手を置こうとする。

 しかし、彼は何も答えない。

 ただただ先に進むだけだ。


 今は話すことはできないというのだろうか?

 俺は疑問に思いつつも仲間達と彼の後に続いた。


 今は誰が敵で誰が見方かなんてわからない。

 わからないから……俺は見極めなくちゃいけないんだ。

 だからこそ、何も言われないから不安だ。

 このままついて行くことはできないなんて言えなかった。


 このまま背を向けたら攻撃される可能性だってある。

 ましてやもし味方だったとしたらこっちが信用できないとその時点で告げることになる。

 そうなれば当然彼らは深いだろう。

 その理由が分かったとしてもだ……。

 その結果得られるはずの強力な仲間が手を貸してくれないかもしれない。

 それだけはだめだ。

 だから、ついていくしかない。


 そう思っていると地下には広い空間があるようだ。

 頼りは精霊石の明かりだけ。

 爺さんはそれで部屋を明るくする。

 すると手近な椅子へと腰を掛けた。


「ここはわしの隠れ家じゃ……ほら、そこに武器があるじゃろ? 盗られるわけにはいかんからな……魔法で隠しているんじゃよ」


 魔法で隠すって幻覚魔法ってことか?

 だが、そんな魔法はないはずだ。

 とはいえ、現実にここは俺も知らない場所。

 アルセーガレンの賢者と言われる爺さんがなぜこんなところにそう言った小屋を建てているのかはわからない。

 だが、言っていることは嘘ではない。


「かつていた魔術師に作らせた場所だ」


 懐かしむ様に爺さんはそう言うと、その手を椅子へと向ける。


「立ってないでおぬしたちも座ると良い」


 俺たちは誘われるままに椅子へと腰を掛けた。

 すると――爺さんは真面目な顔を浮かべる。


「さて何から話そうかの」

「まずは町の中に敵が居ることだ……」


 俺はそう言うと爺さんはうんうんと頷き始めた。


「狙いはクリエか?」


 俺は彼に尋ねる。

 すると彼は困ったような表情を浮かべた。

 当然だろう、奴らの狙いがわかるはずがない。


「それはお前さん達の方が詳しいんじゃないか?」


 そう言われて俺は思わず頷いた。

 そう、だよな……だとするとまず間違いない。

 だが、そうするとなぜ今なのか? という疑問が生まれる。


「なぁ、奴らはファーレンの人間なのか?」

「行動から見ても直接的な行動にはあまり出ていないように感じます……過激派ならもう」


 攻めてきてもおかしくない。

 チェルはそう言いたげだった。

 その言葉に頷いて答えてくれたのは爺さんではない。

 レラ師匠だ。

 彼女は凛とした表情でその口を動かす。


「まずファーレンで間違いない……彼らは表向きは平和主義者だから……」


 表向きは……か……。

 厄介だな。

 ファーレンで間違いないと言いつつもその証拠がない限り攻めて行けばこちらの方が罪になる。

 さて、どうしたものか……。

 それに……。


「なんでファーレンは執拗にクリエを狙う? 奇跡の力を失ったら大して……」


 脅威ではない。

 罪ではあるだろう……だが、あそこまで頑なに裏で動く必要はない。

 彼らは公然としてクリエを連れて行く権利があるからだ。

 だからこそ、行動が不可解だ。


「確かにそうですね……」


 ヘレンは頷き、考え込んでいた。

 すると一人の少女が俺の服の袖を引っ張り始めていた。

 ファリスだ。


「どうした?」


 俺が声をかけると彼女は少し複雑そうな表情を浮かべる。


「多分、魔大陸と繋がってる……」

「何?」


 トゥスさんは彼女の言葉に食いつくとつかみかからん勢いで迫ってくる。

 俺は間に入りファリスへと何故そう思うのかを訪ねてみた。

 すると――。


「ドラゴンはもともと神大陸には少ない、神大陸のスライム、魔大陸のドラゴン……それが二つの脅威」


 そういえば……確かにこれまで何度もスライムとは会ってきた。

 恐ろしい魔物もいたがドラゴンなんてこの町に来てから初めて見た……。


「魔大陸はあまり豊な土地ではないみたいです」


 イリスもそういっているし……エルフがいないというのが何よりの証拠だろう。 

 だとすると……まさか……。


「つまり、魔王と繋がってるってことか!?」


 俺の言葉にファリスはこくりと首を縦に振った。

 そんな……まさか、こんなところで魔王が!?


「やっかい、だな」


 俺はそう言いつつ、ようやく合点がいった。

 奴らはきっと勇者が弱ったという言葉を信じないはずだ。 

 だからこそ、クリエを狙っているんだ……!

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