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俺は百合勇者の従者にならざるを得ない……  作者: ウニア・キサラギ
17章 彼女のために…… 
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393 師匠達の元へ

 牢に男を閉じ込めた後、鍵は俺達が管理することになった。

 ここから離れるのは気が引けたが今は仕方がないだろう。

 部屋へと向かうことにする……。


 すると途中、先ほどの兵士が話をつけてくれたのだろうフリンがこちらへと向かってきているのが見えた。

 彼は頭を下げると――。


「キューラ様、お戻りになられたと聞きましたが……」

「ああ、ちょっと話があるんだ」


 俺は彼にそう言うと彼は首を傾げた。

 その表情はどこかいぶかしげに見える。


「ですから……」

「ここじゃだめだ、誰かほかに人がいない場所……聞かれにくい場所はないか?」


 どこに敵が居るか分からない。

 まして目の前の男が敵なのかもしれない。

 この状況で回りに聞かれる、そんなリスクは避けておきたい。

 そう思ったからこその言葉だった。

 すると……。


「でしたら、レラと彼女の師が良い場所を知っています」

「へぇ……いい場所、ねぇ」


 トゥスさんは警戒するような表情を見せたが、俺はそれ以上何も言わないように手で制する。

 そして、フリンに向け首を縦にふると――。


「ヘレンも連れて行く……彼女はどこにいるんだ?」

「今部屋におられます」


 そうか、ならこのまま部屋に向かって彼女を連れて行こう。

 それで後はそのレラ師匠達が知る場所で話をする。

 今はそうすることが最善なのかもしれない。


「キューラお姉ちゃん、こいつ信じられる?」


 ファリスは警戒するようにフリンを見つつ俺の袖を引っ張っている。

 周りを見るとイリスやチェル、クリエも不安そうだ。

 だが、今は……信じるしかない。


「何かあったら俺が皆を守る」


 そう伝えるとファリスは笑みをこぼした。

 俺が守るなんて大それたことできるわけがない……。

 そう思うのはもうやめだ。

 いつかはしないといけないんだ……。

 ここでそうやって卑屈になっても仕方がない。


 なら、覚悟を決めて守ってみせる。

 そう決めたんだ……!

 それにそう言った気持ちが魔拳の正しい使い方につながるならもうこの気持ちは曲げれない。

 クリエを助けるためにあの力が必要だからだ。


「キューラ様?」

「あ、ああ! 一度部屋に行こう!」


 俺はフリンに声を掛けられ、頷くと彼も連れ部屋へと向かった。

 勿論仲間達も後に続く……。


 だが、他に誰か……尾行する奴がいないかは俺には判断ができない。

 そう思った俺は――。


「トゥスさん、頼む」

「はいはい、分かってるよ」


 俺は彼女の返事に安堵をし、部屋へと向けた足を急がせた。

 彼女ならば誰かがつけてるなら教えてくれる。

 だが、敵はいったいどこにいるんだ?




 とりあえず部屋までたどり着いたが……。

 俺はトゥスさんの方へと目を向けた。

 すると彼女は首を横に振る。

 怪しい気配はしなかったという事だろう。

 ここまでは平気だったのか、不思議ではあるが、今のうちだ。

 そう思って部屋の中へと入るとそこには書類の山に埋もれるヘレンの姿があった。


「ヘレン!」

「い、今ちょっと忙しいので書類を増やすのは――」


 戸惑っている彼女の前の書類を乱暴にどかすとフリンが何かを言ったがそんなことを気にしてはいられない。


「キュ、キューラさん!?」

「ついてきてくれ、早く!」


 俺は彼女の手を取ると立たせる。

 慌てた彼女は――。


「ちょ、ちょっと痛い!?」

「悪い!!」


 引っ張ってしまった事を謝りつつ、俺は事態を説明している時間はないと思った。

 焦りは禁物だ。

 だが……。


「時間がないんだ、説明は後でする。今はついてきてくれ」


 それだけを伝える。

 すると納得いかない表情を浮かべる彼女。

 だがついてきてくれるようだ。


「まったく何なんですか……」


 そう言いつつも俺達の方へと来てくれた彼女に感謝しつつ、俺はフリンの方へと顔を向ける。


「それで、レラ師匠達は?」

「ええ、こちらです」


 俺たちは彼の後をついて歩いていく……。

 さっきファリスに言われたことだが、本当に彼を信じられるのだろうか?

 それはわからない。

 だが、今は彼に頼るしかない。

 だから、頼むぞ……。


 祈るようにそう心の中でつぶやいた。

 彼に連れられた場所は訓練場だ。

 そこでは目を丸くするレラ師匠達がいた。

 俺は彼女たちに手早く事情を話す。

 すると――。


「なるほど……師匠」


 老人へと目を向けた彼女は何かを言いたげだ。

 すると老人はうんうんと頷き……。


「ふむ……じゃが、気になるのぅ……なぜわしらを信じるんじゃ?」

「それは……わからない」


 俺はそう言うと彼の眼を見る。

 そこには何かの答えを待つような……いや、待っている老人の姿があった。


「わからない、分からないさ……だけど、俺はクリエを守りたい、助けたい。そのためなら……少しの可能性にも賭けたいんだ」


 そう言うと老人は黙り込み、静かに頷く……。


「町の外に行こうかの」


 そして、そういいながら立ち上がるとレラ師匠は慌てて彼の後を追い。

 俺たちはその後を追うことになった。

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