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俺は百合勇者の従者にならざるを得ない……  作者: ウニア・キサラギ
17章 彼女のために…… 
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389 暗殺者?

 あまりにもあっけない最期だ。

 彼は何も悪くない……だが、たったの一瞬でその命が奪われた。


「てめぇ……」


 俺はわなわなと震え、拳を握る。

 だが、動けない……動けないんだ。

 奴の攻撃が見えなかったからだ……それに――。


 隙が無い!


 俺はそう思ってしまった。

 相手はどう見たって隙だらけ……そう見えるのに、今責めたらこっちが負ける。

 その未来が容易に想像できてしまった。


「どうした?」


 男はわざとらしい態度を取りそう口にする。

 だが、その言葉にはならない。

 乗ってはいけない……。


「どうやら話が通じるようだな。お前に言いたいことがある、そこにいる勇者をこちらに渡せ……」

「残念だが通じないな……断る」


 俺は彼の言葉に返事を返す。

 これだけは変えられない。

 変えてはいけないことだからだ。


 俺にとって大事なことはクリエを守ること……。

 たとえ俺の立場が変わろうともそれだけは変わらない……。

 それがどんな状況でもだ!


「キューラちゃん……」


 クリエが俺の名前を呼んでくれた。

 ひどく不安そうな声だ。

 だが……それでも俺は奴の言葉に従うつもりはなかった。


「貴様程度では俺に勝てるわけがない、そう言われてもか?」

「お前がどんな奴か知らないからな……第一大事な仲間を渡せと言われてはいそうですか、なんて渡す馬鹿がどこにいる? 少なくともここにはいないぞ」


 俺は皮肉をたっぷり込めて口にする。

 すると男は大笑いをし……。


「下らん!」


 男は腕を動かした。

 同時に何かがきしむ音がした……そして首が締まる気配もだ……。

 魔法か!? そう思ったもののそれは否定した。


 こんな魔法はない!

 詠唱が必要だ……何より、何をされてるのかが分かった……糸が見えたからだ……。

 こいつは糸を使い人の首を落とした。


 それが理解できた……。

 しかし、どうする? 下手に動いたり手で触れば……。


「このまま死ぬか?」


 そう言われて俺は固まってしまった。

 首を落とされる寸前。

 そんな状況で動ける人間は少ないだろう。


 できるとしたら何も考えていない奴か……。

 それとも何か対策を持っているやつ……。

 そのどちらかだ……。


 なら俺はどうだろうか? 答えは簡単だ……奴は確かに強い。

 普通だったら恐れてしまうだろう。

 だが――!!


「死ぬわけにはいかないんだよ!!」


 そう、俺はここで死ぬわけにはいかない! 死ねないんだ!!

 ここで死んだらクリエが悲しむだろう。

 そんな結果なんていらない……必要ないんだ!!


 例え領主になろうが……例えそれで旅が足踏みすることになっても!!

 俺はクリエを守りたい。

 彼女を助けたい……その為に俺が死ぬわけには――!!


「だからな……お前を倒させてもらう!!」


 そう言うと男は糸をさらにきつく締めてきた。

 このまま首を落とすつもりなのだろう。

 だが、それも種がばれてしまえば、恐ろしくも何でもない。


 ナイフを取り出した俺は首元の糸を切った。

 男はばれるはずもないと思ったのだろうか? 少し驚いた表情をしたがすぐに顔を引き締める。

 まだどこかに糸がある、そう感じた――。


「皆そこから動くなっ!!」


 このままではクリエ達に被害が行ってしまう……。

 それだけはダメだ!!

 この場一帯の安全を確保しなくちゃダメだ……!!


 だが動くなと言ってもそれだけでは奴は簡単に首を落とすだろう。

 根本的な解決にはならない。

 解決するには――元から立つしかない!!


「シャドウブレード!!」


 ナイフは決して質の良い物ではなかった。

 なら魔法であるシャドウブレードならどうだ?

 いくら詠唱をせずとも威力は十分だ……。


 だが、今回はそれを分散させる……紙切れ一枚を切るのがやっとだろう。

 でも……それで言い。

 この糸は頑丈だが、切れないわけじゃない――。


「な!?」


 その証拠に男は表情をさらに歪めた。

 ランタンの火に照らされた顔は明らかに焦りを見せた……。

 そりゃそうだろう……おそらくは気が付かれないように付けていた糸を切られたんだからな。


「さぁ、小細工は無しだ」


 俺はそう口にし、男を睨む。

 奴は一歩後ろへと下がる……確かに暗殺にはこの上なく適した武器だろう。

 だが、種さえ気が付けば後は簡単だ……。


 俺は八の表情が演技ではないことを祈りつつ。

 一歩、また一歩をと近づく……。

 男は逆に一歩、また一歩と後ろへと下がる。


「どこにそんな力が……化け物か」

「誉め言葉として受け取っておいてやる……」


 俺はそう言うと拳を握り奴に告げてやる。


「もう、誰一人として仲間を傷つけさせない、殺させない!!」


 そうだ……。

 誰にだって俺の仲間を殺させてなるものか!!

 俺が……俺が守るんだ!!

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― 新着の感想 ―
[一言] ん?首が落ちたのは兵士の方?
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