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俺は百合勇者の従者にならざるを得ない……  作者: ウニア・キサラギ
17章 彼女のために…… 
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387 森へ

「それでは……危険です!」


 そう叫ぶのはフリンだ。

 彼は自分の部下を俺達につけようとしていた。

 だが……。


「いや、下手に兵を連れて行けば逆に目立つ」


 俺がそう言うと彼は言いよどむ。

 それもそうだろう。

 俺は事実を言っているだけだ。

 大人数で行けば何処に行くにしても目立つ。

 その上、今俺達はフリンが居たかもしれない場所に行くわけだ。

 彼には伝えてないがそれでも大人数で動くのは褒められた事ではない。


「それに……」


 俺は仲間を見渡す。

 トゥスさんは勿論、クリエにイリス、チェル……そしてご満悦なファリスと……。

 これだけでも多いんだ。

 戦えないヘレンだけは置いて行く事になるが……そっちはレラ師匠と爺さんに任せている。


「とにかく、もう時間が無い」


 俺はなるべく焦ったかのようにそう言い、彼をうならせた。


「でしたらせめて一人だけでも……」

「戦力ならこれで十分だ。逆に兵を連れて行けば反逆とみなされてもおかしくない状況に居るんだぞ?」


 あくまで俺はファーレンの元へと向かうそぶりを見せつつ彼と話す。

 すると彼はようやく折れ……。


「分りました」


 とだけ口にした。




 門を出ると俺達はまっすぐ進む。

 悪魔で目的地はファーレンだと思わせるためだ。

 だが、目指す場所違う。

 途中、つけている者がいないかを確認した俺達は森の方へと移動を始めた。

 そう、ドラゴンが居たあの森だ。


「……さて」


 目の前にして俺はどうしたものかと考えた。

 実はこの森には兵士が居る。

 あの後撤退させようかと思ったんだが、それもそれで怪しい。

 取りあえずはそのまま調査を続けさせているそんな状況だ。

 うっかり、ばったりと出くわす可能性がある。


「トゥスさん……」

「分ってるよ、道じゃない方を進む」


 彼女はそう言ってけもの道を選び歩いて行く……。

 なたを持った彼女は途中途中で舌打ちをしながら邪魔な枝を切り落としてくれた。

 その素振りだけを見るとはっきり言ってエルフだとは思えない。


「ああ、森が……森が……」


 一方彼女の行動に目を丸くし涙を流すのはイリスだ。

 彼女の肌は褐色……所謂ダークエルフと言われてもおかしくはないものだが……。

 この世界にはそんな種族はいない。

 ただのエルフだ……。

 そんな彼女は森を愛する俺達の知るただのエルフ。

 傷つけられる森に涙を流す心優しい子だ。

 だが、その光景は日本人の俺からすると……。


「鈍いね!! さっさと来な!」

「ちょ、ちょっと待ってください、今の枝は切り落とさなくても良かったんじゃないですか!?」


 とても奇妙な光景だった。

 だが、俺達の中ではこれが普通だ。

 とは言っても……。


「あまり森を傷つけるなよ? 人が通った時に怪しまれても困る」


 俺がそう言うとトゥスさんが目を丸めた。

 一体どうしたというのだろうか?

 俺は彼女の表情に首を傾げる。

 すると彼女は悪人染みた笑みを浮かべ……。


「へぇ……なるほどね、確かに切り口が新しいんじゃ怪しまれちまうね……」


 と笑い始めた。

 おいおい、それじゃ困るじゃないか……。

 そう思っていると彼女はだけどね……と口にし始め。


「ここは人が通らない」

「どうしてわかるんだ?」


 と言うかなぜそうはっきり言えるんだ?

 俺は不安に思いつつ彼女に問う。

 答えは単純だった。


「森の外からすぐ入るならここには来れるのさ……だけどね他の道は駄目だ。険しすぎる」


 確かに人が通る道ではない。

 だが、絶対にと言う訳が無いだろう。


「確かに……ここは何か変な感じがする」

「ファリス? 変な感じって?」


 俺はそんなのを感じなかった。

 だから彼女に問うとファリスは首を傾げ始めてしまった。

 どうやら何てい言ったらいいのか分からないみたいだ。

 困って俺は他の仲間を見渡すとチェルも首を傾げていた。


「口にはどう出して良いか分からないけど、こう……なんていうか、こう……」


 うーんうーんと唸りつつ何とか言葉を考えてはこうじゃないと繰り返す。


「ここは多分迷いの森になってるの」

「迷いの森だって……結界かなにかか?」

「いや、ただの自然さ……大きな森の中にはこう言った場所があるのは別に珍しくない」


 なるほど、そう言うものなのか? だけどそれじゃ……。


「大丈夫、なのか? 進んで……」


 俺が問うとエルフの二人は同時に頷いた。


「そりゃエルフが居るんだ……逸れるんじゃないよ」


 なるほど、森の民である彼女達なら問題はないって事かなら尚更逸れないようにしないとな。




 暫く進むと開けた場所についた。

 そこにはぽっかりと口を開けた横穴……洞窟だ。


「あそこか?」


 俺が指をさし確認するとトゥスさんは頷く。


「ああ、あそこだよ……」


 寝床として使われていたというのに小屋ではないのはすぐに見つからない為だろう。

 だが、人が来ないかが心配だ。

 トゥスさんはあいつらは森に入っていないと言っていたが、一応警戒してこっちの道を選んでくれた。

 つまり、あそこに誰かが待ち構えている可能性はあるはずだ。


「……行こう」


 だからと言って手をこまねいている訳にはいかない。

 そう思い、俺達は前へと歩き出した。

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― 新着の感想 ―
[一言] 相変わらずトゥスさんエルフらしくない
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