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俺は百合勇者の従者にならざるを得ない……  作者: ウニア・キサラギ
17章 彼女のために…… 
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384 老人の助言

 俺は溜息をつき爺さんをじっと見つめる。

 すると爺さんは頷き……。


「なるほど、話があるんじゃな?」


 おっ! 意外と話が分かる爺さんなのか?

 そう思った時――。


「間違いなく、告白とかそういう事ではないぞ?」


 師匠のそんな声が響き、目の前に居る爺は心底残念そうな顔を浮かべた。


「なんじゃ、つまらん」

「いや、何でそう考えるんだよ……」


 心底呆れ見せると爺は大笑いをする。

 何がおかしいってんだ……。

 これで強いのだから納得は行かない。


「なに、どんな時でも余裕を持てという事じゃよ」

「貴方は余裕があり過ぎで逆に問題では?」


 爺の後ろから冷え切った声で紡がれる突込み。

 すると彼は頷き……。


「かもしれんな」


 ああ、もう……話が進まない。

 仕方ない強引だけど……。


「頼みがあるんだ」


 俺はもう一度、彼をこっちに向かせる。

 すると何かを言いそうになったので間髪入れずに話を切り出した。


「ファーレンに手紙を持って行ってほしい」

「…………」


 彼は差し出した手紙をじっと見て受け取らない。

 まぁ、いきなりそんな事を言われて、はいそうですか……何て言える訳が無いだろう。

 だが、そんな事はどうでもいい訳で……。

 要はこれからどうやってこの人に頼むかだ。


「俺はクリエを助けたい。だからこの手紙を持ってファーレンに敵対の意思が無いと伝えてほしい」

「それでどうするつもりじゃ? 国に入り偽物を見せ……奴の首を取るつもりか?」


 ぎくりと思わず、身体を硬直させてしまった。

 すると老人は近くにあった丁度良い岩に腰を掛ける。

 取り出したのは干し肉だ。

 それを適当な大きさにちぎり口へと運ぶと……。


「その程度の事、奴が予測できんと思うのか? お嬢ちゃん」

「なっ!?」


 俺は思わず言葉を失った。

 彼の言う通りだったからだ。

 王となれば誰かに命を狙われることは多いだろう。

 そうなれば警戒すべきは暗殺だ。

 毒、狙撃……色々あるが一番厄介なのはどれかと聞かれてこれだ! と答える者は少ないだろう。

 彼らにとってどれも厄介だからだ。


「……謁見の時に顔を見せるのは良いだろう、じゃが、同時に側近も自慢の騎士や魔法使いを用意するはずじゃ、ならばそう簡単に殺す事も逃げる事は出来んぞ?」


 そんな事――と言いかけて俺は口を閉ざす。

 すると爺は笑い。


「落ち着け、余裕を持つんじゃ」


 余裕たって、一体どうするって言うんだ。

 他に何か策があるのかよ……。

 俺はそう思い何かないかと探すが何も思いつかない。

 奴を殺すしか方法はない。

 だけど、確かに上手く行く保障なんてどこにもなかった。


「今お主の策でファーレンの元に向かっても周りは敵だらけ、王の首をはねた所で捕まり処刑されるのが分かり切っておる」


 それは……そうなのかもしれない。

 俺はその事は考え付かなかった……冷静ではなかったという事だろう。


「しかしな、ファーレンを借りに呼んだとして相手が来るとも限らん」

「ああ……」


 それは分かっている。

 いや、むしろ来ないだろう。

 来る理由が無い……ここには信頼できる騎士を送り込み制圧してしまえば良いだけだからだ。


「……ならどうする?」


 そう、結局そこになる訳だ。

 だからこそ、俺は相手の元へと向かう事を考えた。


「ファーレンを引きずり出すしかないだろう?」

「……は?」


 意味が分からなかった。

 目の前の老人が先ほど自分で言った事さえ忘れたとは思えない。

 何故なら笑ったからだ。


「困惑する表情も可愛らしいのう」

「師匠……」


 そして、いつもの事なのだろうか?

 レラ師匠にたしなめられると彼は咳ばらいをし、再び俺の方へと向いた。


「ドラゴンはどういった場所を好むか知っておるか?」

「いや……」


 知らない。

 俺はそう思い浮かべ言おうとした。

 すると爺さんは――。


「普通は気温の変化が無い場所じゃ、寒い雪山だったり、火山の中、居る場所は様々だがその特性だけは変わらん」

「…………それがどうしたんだ?」


 そう口にして俺はふと疑問を思い浮かべた。

 ドラゴンなのに、爬虫類なのに寒い所は大丈夫なのか? そんな事だ。

 だが……。


「しかし」


 俺の疑問は全く関係ない様で爺さんの言葉を聞いて俺は言葉を失う。


「ここは気温の変化が激しい場所じゃ……あと30日もすれば暑くなり始めるじゃろう、ドラゴンにとって一番住みにくい土地と言っても良い」


 つまり、ドラゴンは日本とかそう言った場所では住みづらい? そして、それがここだってのか?

 いやでも……。


「ドラゴンの子供が……」

「そう、あれは誰が置いていったのじゃろうな? もし、それがファーレンの身内であるならば……平和主義を語る王はどう言いつくろうつもりなのだろうな?」


 つまり爺さんはこう言っている。

 ドラゴンの秘密を探れと……それにはファーレンが関わっているはずだと……。


「しらを切られるかもしれないぞ?」

「……知らないふりはせんよ、仮にしたとしてどうして守ってくれなかったのか? と言えることが出来るじゃろ? ここはまだ奴の領地じゃ」


 なるほど……この爺さんの言っている事は確かに俺の策よりもいいかもしれない。

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