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3 魔王の手下

 悲鳴の元へと辿り着いたキューラ。

 そこに居たのは彼の通う古代魔法科の先輩ミアラ……そして、見覚えのない少女だった。

 キューラは何か違和感を感じつつ、少女と対峙するのだが……。

 その少女が言う事には彼女は混血を切り裂き存在そのものを消して来たと言う……彼もまたその刃に掛けられたのだが……しかしそれはキューラと言う存在を消す事が出来なかったようで……?

 なんだ……なんで今度は何も起きない?

 いや、今はそれよりも先輩を守らないといけない! 俺は自身に起きた変化から無理矢理意識を引き剥がし目の前に居る幼女を睨んだ。


「お前は今までもこうやって切り殺して来たんだよな?」


 身体全体を焼くかのような熱さと痛みはもうない。

 だが、目の前に居る幼女は何としても追い払わなければならない……。

 こいつは何人も殺して来たんだ……なにより、放って置けばミアラ先輩は殺されてしまう。


「……だから、なに?」


 幼女は後ずさりをし……その顔は恐怖の色が強く出ていた。

 そこまでその魔王の力って奴は強力だったのか?

 だが、それはどうやら俺には効果が無かった。

 ……転生後は無詠唱以外これと言ったチートは無いと思ったが……どうやらあったのか? とにかくお蔭で九死に一生を得たな……。

 だが、俺の技術でこいつには勝てないだろう……しかし、呪いが効かない以上、幼女の様子から見ても交渉の余地はあるはずだ。


「今すぐ俺達から手を引け……思い出せない奴の事は許せない。だが……この場は見逃してやる」


 はっきり言って俺の方が不利だ。

 魔王の呪いは効かないが、万が一その鎌を捨て何かしらの攻撃手段に移られたら俺は対処が出来ない。

 俺は表情に出ないよう祈るが……幼女は鎌を手放し……。


「魔王様に言われたんだ! ちゃんと皆消すことが出来たらお嫁さんにしてくれるって!」


 てっきり攻撃をしてくると思ったんだが……おい魔王、お前ロリコンなのか? 顔も知らないけどロリコンなのか!?

 ミアラ先輩も目の前の少女がくねくねと動き始めたことによりその顔を歪めてるよ……あれは引いてる、絶対に間違いない。


「何よ! あんた達! 魔王様の事馬鹿にしてるでしょ!?」


 いや、どう見たって小学生……それも低学年な子をお嫁さんって……冗談か本気だとしたらロリコン以外の誰が居るって言うんだよ!?


「嘘じゃないからね! ちゃんとキキキ、キスまでして約束をしてくれたんだから!」


 ロリコンだな……間違い無くロリコンだ。

 しかし、そんな事はどうだって良い、今大事なのはミアラ先輩の安全だ。


「あんたを殺してそこの女を消して……後は一人ここはそれで終わり!」


 幼女はそう言うと腰から短剣を引き抜き――俺へと向かって来る。

 クソッ!! やっぱり諦めることは無かったか……。

 ターグ並み……いや、それ以上だ! 馬鹿正直に戦ったら俺には勝機は無い……なら――。


「シャドウ!!」


 魔法を唱え、即座に黒霧を生み出す。

 俺の得な魔法……短縮……いや、無詠唱魔法だ。

 普段ならまずは目を奪う、そう思ったのだが……相手は魔族だ。


「あはは……目を奪おうってしてるの? そんなの純血魔族には無意味!」

「なっ!?」


 幼女の赤い両目は靄の中に目立ち……その不気味な光は徐々に俺へと近づいてきた。


「っ!?」


 左の赤い目を頼りに間一髪の所で俺は刃を避ける。

 だが、避けきれず服は裂け胸の上を赤い筋が通った。

 その傷を慌てて見降ろした俺は違和感に気付く――。


「あ、あれ?」


 何か胸が若干膨らんでいるように見えた……けど錯覚だよな?

 いやだから今はそれどころじゃない――他の事に興味を取られてたら殺される!!

 目の前の敵に集中しろ、死ぬわけにはいかない! ミアラ先輩もいるんだ!


「フレイム!!」


 炎を生み出しそれを投げつけた。

 同年代では恐らく最速とまではいかなくても速い方だ。

 しかし自慢のそれさえも避けた幼女に俺は呆然とする。

 自慢げに口元を歪める幼女だが……そうだ、それでいい、もっと付け上がれ……。

 俺はちゃんと、予測していた……そう来ると思っていたんだよっ!!

 大丈夫だ、さっき作った霧のお蔭で辺りは暗い……これなら――!!


「邪なる刃よ、切り裂け……」


 俺は焦るふりをして口元を隠し小声で()()を唱える。

 これなら幼女に聞こえず……そして慌てている風に見えるだろう……


「あはははははは!!」


 幼女は笑いながらナイフを振り回して来る。

 辺りは俺の魔法で真っ暗になっていて左目だけじゃよく見えないが……それも計算の内だ。

 だって――そうだろ?


「シャドウブレード……」

「……へ?」


 半分は魔族の血が流れてるんだ。俺が知らない訳ないだろう?

 魔族は夜目が効く……俺達の様な混ざり者(クズレモノ)だって赤い瞳だけで見れば観ることが出来るんだからな……。

 それともう一つこの幼女の動きを見ればターグでさえ避けれる俺の魔法を避けれないはずが無い。

 だが、闇に紛れた攻撃、しかも一瞬で彼女の首元へ突き付けられた魔法の刃はどうだ? ましてや、見え見えの攻撃をされ……それを避けられた事で焦ったふりをしたんだ。

 これでも演技には自信がある……なんたってターグに女だと思い込ませたぐらいだからな……!


「……なっ!?」


 これが俺の策――。


「逃がすか! シャドウブレード!!」


 慌てて身を引こうとした幼女の後ろにもう一つの刃を作る。

 これで逃げ道は無い……。


「あ、ぁあ?」

「殺しはしない、子供を痛めつけてるんだ。気分が悪いからな……もう一度言うこの場から去ってくれ」


 甘いとは思う……だが、無理な物は無理だ。


「…………あはは……あははははははははは!!」

「な、何がおかしいんだよ!?」


 だが幼女は顔を歪め笑い声を上げる。

 その顔は子供の可愛らしい無邪気な顔とはかけ離れていて……俺よりもずっと小さい少女に恐怖を感じた。


「子供? 子供かぁ……」


 な、なんだ?


「そうかー子供に見えるんだね?」

「こ、子供じゃないか……どう見たって……」


 そう言うと幼女は自身の唇を舌でペロリと舐め……行儀が悪いな。


「だから見逃す? くすくす……良いよ、あんたも良く分からないし……今日は引いてあげる」


 ひ、引いてくれるのか?

 一先ずは安心だ……そう思う事にし魔法を解き俺はほっとすると――幼女はいつの間にか俺へと近づいてきた。


「うわぁ!? ひ、引くんじゃないのかよ!?」


 襟を掴まれ幼女の顔の近くへと引っ張られてしまった。

 このままではまずい、そう思ったのだが、彼女は笑みを浮かべると……。


「あんたはいずれ殺す……消せないから絶対に……この手を血に染めても殺してやる」


 まるで妖艶、そう言える声は俺の耳を抜け脳へと伝えられる。

 だが、興奮するどころか気を抜けば歯がガチガチとなりそうなぐらい、恐ろしかった。


「キューラァ!!」


 俺が必死にそれに耐えているとやっとターグ達の声が遠くから聞こえる。

 どうやら駆けつけてくれたみたいだ。

 それに合わせたかのように幼女は溶ける様に消え――。


「さ、去ったのか!?」

「キューラ君、大丈夫!?」


 ミアラ先輩は俺を心配し急いでこっちに来てくれた。

 良かった彼女だけでも守れたみたいだ……。


「っ!?」

「先輩? どうしたんだ?」


 俺がほっとしていると彼女は目を見開き俺の身体を見つめてきた。

 ――ってそう見られると流石に恥ずかしい。

 なんて事を考えると彼女は俺の目の前へと立ち、俺は二人から隠されてしまった。

 一体どうしたって言うんだ?


「キューラ!」

「ターグ君が言っていた悲鳴ってのはミアラ君の物だったのか……」


 まぁそうだけど、ミアラ先輩が目の前に居て、先生やターグから隠されてる……なんだこの状況?


「ミアラ先輩? 何でキューラを隠して……」

「そうだぞ、怪我をしていたら大変だ……学校の中とはいえ、襲われてしまったんだ。きちんと手当はしなければ」


 先生が言う言葉は最もだ。

 そう思い俺はミアラ先輩の後ろから出ようとすると……。


「だ、だだだだ駄目!? 後ろに居て!?」


 今まで見た事も無い怖い表情で止められてしまった。

 何があったのだろうか?


「へ……? 何でですか?」


 でも、ちゃんと無事である事は知らせないと悪いよなっと思った俺は再び前へと出ようとすると……。


「なんでも!! 大人しくしてるの!!」


 先輩は焦りつつ怒った口調で俺はその勢いに気圧され再び先輩の後ろへと隠れる。


「と、とにかく、その……私が連れて行きます。それと……先生その相談したい事が後で良いですか? 勿論キューラ君も連れて行きます」


 彼女はしどろもどろになりながらもそう言うと――。


「二人は後ろ向いてもらっていいですか?」

「なんでだ?」


 素直に後ろに向いた先生はミアラ先輩の必死さが気になったんだろうけど、ターグは当然の返答をし――。


「なんでも! 早く!」


 きつい言葉を当てられ慌てて後ろを向く……するとミアラ先輩は上着を脱ぎ始め――てなにし始めて!?


「ちょ先輩!? うわっぷ!?」


 その脱いだ服を俺へとかぶせた。

 な、なんだ二枚着てたのか……焦った……。

 いや、何ほっとしてるんだこのままじゃ……。


「先輩……これ血で汚れぇぇぇええ!?」


 その事を伝えようとしたら先輩はいきなり傷のある場所へ服の上から触れて俺は思わず叫ぶ――

 何をするんだ……あの幼女の所為で先輩がおかしくなったのか? そう思ったんだが彼女はいたって真面目で――


「嘘、やっぱり本物だ。……と、とにかくキューラ君はついて来て!」


 そう言って俺に服を無理やり記させると手を引っ張って校舎の方へと向かう――。


「へ!? せ、先輩痛い!? 服が擦れて痛いって!?」


 俺の訴えは完全に無視され俺の目には呆然としている先生とターグの姿が映った。

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