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377 罪の意識

 領主の不在。

 その時のための人材は集めた。

 薬の確保もするためにもしもの時は材料を取ってくることは約束した。

 だからこれからその為に旅立つ……。

 だが、肝心の連れはどうするか? だ……。


 カインが居ればカインに来てもらいたい。

 だが、それはもう無理な話だ。

 かと言ってクリエはついてくるとしてもあの状態だ。

 心配でしかない。

 するとやはりファリスは彼女の護衛になってしまう。


 トゥスさんはいつも通り来てもらうとしてもできれば薬に詳しい人が欲しい。

 そうなるとイリスだが、俺一人で守れるか?

 そこが疑問だ……。


 さて、どうしたものか……。

 いつもならそう焦って考えていたのだろう。

 だが、今回はまだ余裕があった。

 実は材料は既にあるのだ……それも考慮し薬をリストアップしておいたからな。

 だからこそ、すぐに旅立つ必要はない。

 かと言って……もしもの時の事は考えておいた方が良いとは思ってはいる。

 思ってはいるが……。


「クリエ……」


 俺はじっとこちらを見つめる女性に声をかける。

 すると彼女は嬉しそうに近づいて来た。

 近づいて来るなり抱きついて来たがまぁ良いか。


「どうだ? 声は出るか?」

「…………」


 俺の質問に対し彼女はだんまりだった。

 何も答えない。

 だが、彼女は呪われている訳じゃない。

 ショックは受けたんだろう。

 だが、それでも聞いておきたい事があるんだ……。


「クリエ頼む……君を守ってくれた人はどんな人だったんだ?」

「………………」


 あの時、クリエを助けた時見た墓のような物。

 あそこに眠っている人は一体誰だろうか?

 俺はその疑問を彼女に尋ねた。

 すると彼女は迷ったような表情を浮かべている。

 当時の事を思い出しているんだろう。

 辛いとは思う……。

 苦しいとも思う……。

 だが、彼女には乗り越えてもらわないと駄目だ。

 そうしないと彼女はいつまで経ってもこのままだ……。


 それじゃあいつか俺達が守れなくなる時が来てしまう。

 彼女には戦力になってもらわないと駄目なんだからな。


「クリエ……教えてくれ」

「………………たの」


 ようやく彼女が話をしてくれた。

 だが聞こえない。


「なんだって?」

「………………したの」


 した? 一体なにをしたって言うんだ?

 俺が怪訝な顔をすると彼女は泣きそうな、いや涙をこぼし口にした。


「私が殺したんです……」

「…………」


 ボロボロと大粒の涙を流した彼女は俺から離れようとした。 

 だが、此処でそれを許してしまえば取り返しがつかない気がした俺は彼女を抱き寄せた。


「そうか、辛い事をされたんだな」


 なぜ彼女がそうしたのかは分からない。 

 だが、理由なくそんな事をする人ではない。

 それも分かっていた。


 そう思っていた……。

 だけど彼女はぶんぶんと首を振った。


「どうした?」


 俺は疑問に思い彼女に尋ねた。

 だが彼女は口を開かない……。

 辛い事をされた訳じゃない、だけど殺した?

 どういう……。


「…………言いたくないなら言わなくていい、何をしてもクリエはクリエだ」


 これは慰めの言葉にはなっていない。

 ましてや、いくら世界が違うといえ殺しを許しちゃいけない。

 それでも、俺はクリエを支えたい。

 そう思ってしまった……それだけこの子は儚く、壊れやすい。

 そう見えてしまう……。


「……世界を壊す」

「……へ?」

「私は……世界を壊す存在だそうです……」


 顔を上げボロボロと涙を流す彼女は……笑みを浮かべているのだろうか?

 良く分からない表情をしていた。


「勇者じゃなかったんです……奇跡も勇者と思わせるための力です……私は、私を救おうとしてくれた人だけを助け、この世界を壊す為に生まれたんです……」

「…………」


 もしかして、そう言われたのだろうか?

 だとしたら許せないな……。


「散々勇者だとあがめて、自分達の言いなりじゃなきゃ破壊神扱いか……貴族の連中は……」


 ただ純粋にむかついた。

 語彙が無くなってしまったがそれだけ俺は頭に来たという事だ。

 しかし、彼女は首を横にふり……。


「違う、違うんです……」

「なんだ?」


 俺の言葉を否定する。


「私が殺したのは――」


 そこまで口にした時、突然扉が開けられた。

 驚き振り返ると其処に居たのはイリスだ。


「イリス? どうした?」

「……な、何でもないよっ! それよりもその、あの……フリンさんが探してたよっ!」


 切羽詰まった様な表情でいきなり現れた少女は何も無いといいつつ用事があると言う。

 何かおかしい。

 そう思っていると……。


「私が殺したのは父様の使いです……」

「…………え?」


 なんだ?

 何を言っている? 父様? だけどクリエの家族が貴族なんて話は聞いた事が無い。


「父ガゼウルの使い、この世界は失敗だって……だから、力を分け与えた私を自分の元へと戻らせ、キューラちゃん達を見つけ次第、避難……世界を壊すって言ってました」

「……なん、だって?」


 父ガゼウル?

 それって神様の名前、だよな?

 だけど何でそんな名前が出てくる? ただの伝承じゃないのか?

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― 新着の感想 ―
[一言] クリエって神の娘とかそういう……(゜ω゜)
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