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373 薬師

 俺の態度に彼は溜息をついている。

 なんでだろうか? そう疑問に思った矢先に思い出した。

 そうだ、クリエの事で頼んでいたんだった!

 そう思いつつ、俺は彼の方へと目を向ける。


「それで、見つかったのか?」

「ええ、一応は……ですが、忘れるとはどういうことですか?」


 そう言われてしまえば俺は何も言えない。

 とはいえ、クリエのあれは呪いではない……。

 ショックからなっている物だという事は分かった。

 事実、彼女は彼女のままだ……。


「いや、その……まぁクリエは大丈夫だったって事だ」


 何とかそう伝えると彼はまた溜息をついた。


「そうですか、それならば良いのですが……」


 そう言って彼はレシピへと目を通す。


「それでこの調合ですが、その薬師に頼もうかと思っています」

「ああ、頼む……案内をしてくれ」


 フリンは頷き改めて歩き始める。

 俺はその後をついて行く……。

 さて、これで準備を開始できる。






 薬師の所へと辿り着いた俺達はレシピを渡す。

 彼はそれを読み……。


「これは素晴らしい調合方法ですね!」

「できそうか?」


 すぐに頷く事は無かった。

 だが、それをじっと見つめていた薬師は……。


「難しいですね、ですができないという訳ではありません」

「では、依頼を受けてもらえるのですね?」


 フリンの言葉に頷いた薬師に俺はほっとする。

 いくら凄腕だと言っても未知の薬だ。

 何せこの世界の薬ではないからな……。

 そう思いつつ、俺は彼へと声をかける。


「それじゃ頼むぞ、期待してる」

「ああ、時間はかかるだろうが、必ず数をそろえてみせよう」


 約束をしてくれたことはありがたい……。

 だが……。


「もし必要な物があったら言ってくれ俺と仲間で取りに行くよ」


 そう言うと彼は驚いていた。

 何故だろうか?


「君は領主だろ? 領主が直々に取りに行くのか?」

「そうは言われても他に取りに行く人が居るのか?」


 兵士は鍛練をしてもらわないといけない。

 自由に動けるのは俺達だ。

 なら、いくら領主と言えど街の為に動くのが当然だ。

 いや、領主と言えどじゃない、王としてだ。


「俺は守りたい人が居る……だから、俺自身が動かないといけない時はやるさ」


 そう言うと彼は怪訝な表情を浮かべた。


「可愛い顔して乱暴な口調だな」

「そこは放って置いてくれ……」


 女の子ではあるが、俺は一応男なんだよなぁ……。

 言っても無駄だが……今は女の子だしな。


「まぁ、材料が手に入るなら何でもいいさ……」


 彼はそう言うと、再びレシピへと目を通す。

 どうやら調合方法をじっと見つめている様だ。


「じゃぁ、俺達はそろそろ」


 このままここに居ては邪魔になる。

 そう思って俺達は部屋を後にした。









 部屋へと戻った俺はいつも通りの作業をする。

 領主になってからは行動が制限されてしまっているが、仕方のない事だ。

 そう思いつつふとある事に気が付いた。

 俺はいずれ魔大陸に行かなければならない。

 そうなるとこの街から出て行かなければならない訳だ。

 しかし、此処はノルンに託された街。

 そう簡単に手放すことはできないし……。

 領主が居なければ当然攻めてくるやつもいるかもしれない。

 どうする? 代わりを立てるしかないとは思うがその代わりの宛が居ない。


 せめて……。

 そこまで考えて俺は頭を左右に振った。

 何を考えようとしていたのだろうか?

 くだらない事は考えるな!

 そう自分に言い聞かせると……。


「そういえばキューラ様」


 俺が判を押した書類を確認しているフリンが口を開く。

 どうしたのだろうか?

 俺が顔を上げると……。


「先日キューラ様を訪ねてきた者がいるそうです」

「俺を?」


 一体誰だろうか? そう思って尋ねてみると――。


「ええ、何でもヘレンとか名乗っていたようで……」

「ヘレン!?」


 ありえないその名前に俺は思わず立ちあがってしまう。


「どうしたのですか!?」


 それに驚いた様子のフリン。

 だが、無理もないだろう……だってヘレンは……。

 ヘレン……は……死んだはずだ。

 だけど、誰が見たんだ? クリエはヘレンに関して何も言わなかった。

 だが、彼女を守っていた誰かは死んだはずだ。

 それはヘレンではなかったという事だろうか?

 いやでも……なんだって、ここに……。


「……その人は今どこに?」

「宿に居るかと……」


 仕方ない直接会って確かめるしか無いか……。

 そう思って俺は立ち上がるとフリンは当然と目にかかって来た。


「執務が遅れています」

「それよりも大事な事だ……今後の街に影響する」


 もしヘレンが生きているのなら俺がたった今考えた問題は解決できるはずだ。

 それには彼女に会う必要がある……!


「ヘレンに会ってくる」


 俺はそれだけを残し部屋を去った。

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[一言] いったい何者なのか……
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