372 本
「…………」
簡単な魔法を撃ちだす道具……。
つまり魔法の武器を作る……それは簡単な事ではない。
精霊石の道具なら尚更だ……。
エルフしか作れない道具なのだから当然で……幾らこちらにイリスやトゥスさんが居ても限度ってものがある。
だが、この世界にも銃は確かにある。
しかも、魔法を撃ちだすのではなく火薬だ。
つまり、エルフの作った銃をどうにか大砲の様な物に変えれたら?
いや、そこまで強力で無くていい……。
せめて簡単に扱えるもので十分だ……投擲の弾を開発してしまえば良い。
例えば着弾すると燃えるとか、凍るとかそう言ったものだ。
出来ないか? 俺は魔法陣の本を調べていく……。
「ない、ない……! 無い!!」
ページをめくっては何度も繰り返す言葉……。
強力な物なくていい、此方が有利に動けるようになるものだ。
俺はそれを探し、そして……。
「あった!」
それは攻撃性のない物だった。
だが、相手の自由を奪うには十分な物だ……。
「睡眠爆弾か……」
それはただ眠るというだけの物。
昏睡ではなく、永遠と寝続ける物ではないが拘束するには十分な時間が稼げるだろう。
問題は仲間にまで影響があるかもしれない事……。
投げた場所には暫く近づかないようにとも書いてある。
元もは魔物を大人しくさせるための物だとの事だ。
「魔法陣は……ってあれ?」
魔法陣の事は一切書かれていない。
不思議に思い見返してみると……。
「これまさか、薬の調合も載ってるのか?」
そう、全部読みこんだわけじゃないから気が付かなかったが、薬の調合方法まで載っている。
俺には薬は作れないが……。
「調合師さえいれば作れるじゃないか!!」
俺はそう口にして、別のページにも使える薬が無いかを調べ始めた。
「これもだ! これも使える!! 何だよ一杯あるじゃないか……」
どうやら、運はある様だ。
これで……きっと!
暫くして、俺はお茶を手に取る。
「ふぅ……」
リストアップした薬は敵を沈黙させるための睡眠爆弾。
そして、現在よりも効果の高い傷薬。
一時的に痛みを軽減できる鎮痛剤だ。
他にも色々薬はあったが、取りあえずこれだけでも良いだろう。
何故なら材料がその辺でも取れるのが良い。
「これを調合師に頼めば……」
戦いを有利に進めることが出来る。
そして、最後に一つ。
強力な鎮痛剤だ……これは痛みという痛みを感じなくなる薬。
危ない薬に思えるし実際にそうだろう……。
痛みって言うのは傷に気がつき死なない為にある様な物だからな……。
何故これを作るか? それは簡単だ……。
「……これで走ることが出来ればきっと助かる」
随分と運任せではあるが、死なせない為だ。
だが、これはあくまで最終手段……。
傷を負った人をすぐに治療できない時に使い、魔法使いのいる所へと運ぶための物だ。
「良し!」
俺は手にした羊皮紙を丸め、フリンの元へと向かう。
目的は勿論今作ったこれの事を話し、調合師を紹介してもらうためだ。
彼はすぐに見つかった。
というのも部屋を出るとすぐそこに居て、驚いた顔をしていた。
「キューラ様、どうされました?」
「フリン! 丁度良かった」
俺は彼に向かって笑みを浮かべると彼は少し顔を赤くする。
どうかしたのだろうか? そう思いつつ首を傾げると咳ばらいを一つし……。
「んんっ! それで、どうされました?」
「ああ! それがな、これを見て欲しいんだ」
先程作ったそれを手渡すと彼はすぐに見てくれた。
その間ふむふむやらうんうんと頷いたりしている。
なんだか、落ち着かないな……そう思いつつ彼が読み終わるのを待つ……。
すると彼は――。
「なるほど、これが叶えば確かに戦争での安全面が増しますね」
肯定してくれた! そう思った矢先……。
「ですが、この睡眠爆弾というのは味方まで巻き込んでしまいます。薬もどんな副作用があるのか分かりません」
「そ、それは……」
そうなんだよなぁ……。
だが、それを言えばキリが無いのも事実だ。
「何とか研究を進められないか?」
「キューラ様が望むのであれば有用性はありますしやっては見ますが、実用できるかは分かりませんよ?」
「それでも頼む」
俺がそう言うと彼は頷き……。
「では、今から調合師の所へと向かいましょう、キューラ様も来ていただけますか?」
「あ、ああ!」
彼はあっさりとそう言ってくれた。
そして、歩き始め俺は彼の後を追う。
「でも、調合師というか薬師はすぐに見つかる物なのか?」
俺が訪ねると彼は「ははは」と笑い。
「優秀な薬師はそう簡単にはつかまりません。ですが、前々から探していたでしょう?」
「……ん?」
前々から?
俺が疑問を浮かべると彼は心底呆れたような表情を浮かべた。
俺何か変な事をしてしまっただろうか?




