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371 領主として……

 結論から言うと……。


「無理ですね」


 たった一言で俺の案は蹴られてしまった。


「な、何でだ!?」

「キューラお姉ちゃんの言う事間違ってない……」


 俺が声を上げると低い声でファリスが怒り、俺は彼女を慌てて止めた。

 そして、魔法使いたちに目を向ける。

 すると彼らは溜息をつき……。


「案としては悪くはないでしょう。いえ、寧ろ良いと思います」


 なるほど、案としては……か……。

 つまり、根本的な問題と言う事か……。


「魔法を使って壁を作るには人数が足りないって事か」


 俺がその答えを言うと魔法使いたちは同時に頷いた。

 この世界にはマジックパワーって言う物はない。

 魔法を使い過ぎれば疲れるだけだ。

 

 最悪魔力痛という筋肉痛に似たものになる。

 つまり、疲れない限り魔法が使える。

 だが……流石に疲れない人間は居ない。


「そうか……悪かったな」


 いくら俺の魔法もあるとはいえ一人で壁を作るのは無理だと判断し、俺は部屋を後にする。

 恐らくは時間をかければ出来るだろう。

 それは分かっていた。

 だがなるべく早くほしい。

 そう思っていたからこそ俺は何も言えなかった。

 時間が掛かるのであれば結局、人の手で作っても同じ事だ。


「とはいえ、どうしたものか……」

「キューラお姉ちゃん」


 俺が途方に暮れているとファリスが顔を覗き込んできた。

 どうしたのだろうか?

 疑問に思いつつ彼女の方へと向くと――。


「本当に人が攻めてくるの?」

「は? いや、そう言う訳じゃない……ただ不安をだな」


 感じている。

 そう口にしかけるとファリスは――。


「なら、焦るの良くない……。焦ったら良い物作れないよ?」


 彼女はそういう風に言った。

 俺は暫く固まってしまった。

 だが、彼女の言う事は最もだ。

 焦って作っても意味が無い、それはきっと粗悪品になってしまうだろう。

 壁も畑も全部同じだ。

 来るかどうかも分からない敵に備えるのは良いとしても、ちゃんとしないと駄目だ。


「……そうだよな、悪かったファリス」


 俺は彼女にそう言うと頭を撫でてやる。

 すると当然の様にクリエも頭を差し出して来た。


「分かった分かった」


 俺は物欲しそうに見つめてきた彼女の頭を撫でる。

 そんなやり取りをしていると少し落ち着いて来た……。

 そうだ、確かに俺は色々と焦っていた。

 この近くに居るはずもないドラゴンと思ってはいたが、居る可能性だってある。

 それにもし敵がわざとそこに置いたのだとしてもだからなんだというのだろうか?


 備えは必要だ。

 だけど焦って備えても何も解決しない。

 そんな事は考えておくべきだった……。


「焦らず……じっくりと整えよう」


 そうだ、俺一人でなにかを解決できるわけじゃない。

 仲間は居る……今回だって頼ったじゃないか……皆でなんとかすればきっとうまくいくはずだ。


「さ、戻ろう……仕事も残ってる」


 俺はそう言うと二人を連れて執務室へと戻る。

 書類に目を通し判を押さないといけないからな……。







 翌日、俺は部屋の中で考え事をしていた。

 昨日言われた焦ったら駄目だという事だ。

 確かにその通りで、これからどうするかをじっくりと考えなくては駄目だ。

 まず、水の問題これは解決だ……兵士の方はレラ師匠が居る。

 問題は住居、食料……そしてもしもの時の為の壁だ。


「住居と食料は外せないな」


 俺は壁について見直してみる事にした。

 確かに、欲しい……責められた時に安全を確保できるが……。

 以前考えた通り交易がしづらくなる。

 それは得策とは言えないだろう。

 いずれはクリード王カヴァリとの連絡も取りたい。


「つまり、壁は入口が複数ないと意味が無い」


 それじゃ突破される可能性も高くなる。

 何より物資が足りない現状で作れば当然脆くなる。


「……なら」


 重要なのは壁があるかどうかじゃない、この街をどうやって守るかだ。


「…………」


 武器の在庫、それが今確認すべき事じゃないか?

 俺はそう思い直し、立ち上がる。

 以前フリンがくれた物があったはずだ……。


「調べてこよう」


 俺は独り言を口にすると武器の在庫を調べる為に執務室へと向かう。








 辿り着いた部屋で早速、調べていると分かったことがある。


「剣も弓も少ない」


 銃が無いのは当然として剣も弓も少ないのだ。

 かと言ってそれを扱えるまでに成長するには時間が掛かる。


「…………何か、手はないか?」


 例えば魔法でなんとか出来ないか?

 いや、駄目だ……。

 魔法でなんとかするにしたって魔法使いが居る。

 もっと根本的な……。


「……いや、待てよ? 魔法?」


 俺はふと気が付いた。

 魔法なら魔法陣の魔法はどうだろうか?

 あれならば魔法の弓や剣を作る事は出来るはずだ。

 そう思った俺は持ってきていた本へと目を落とすのだった。

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[一言] 人も物資も何もかもが足りない( ˘ω˘ )
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