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370 悩み

 さて、これで兵士は良い。

 師匠に任せておけば十分だろう。

 次の問題は食料だ。

 俺は食料を管理している場所へと足を運ぶ。

 するとそこには一人の男性が何やら調べている様子だった。


「ご苦労さま」


 俺がそう声をかけると彼はびくりと身体を動かし、俺の方へと目を向ける。


「キュ、キューラ様!? 何故こんな所へ!?」


 どうやら帳面を付けていたらしい彼は慌ててその手を止めた。

 仕事の邪魔をしてしまった。

 そう思いつつもこれから聞く事も重要な事だと割り切る事にした。


「今の蓄えはどうだ?」


 俺が訪ねると彼は難しい顔をした。

 まぁ予測通りと言ったら予測通りだ。


「水は確保できました……ですが、まだ何とも……このままではいずれ底をつきますね」

「そうか、なら早く出来る物はないか?」


 そう、俺がここに来た理由は皆を餓死させないためだ。


「え? ええ……腹持ちがよく、おおよそ14日で出来る芋がありますが…………あれは……」

「ならそれを大量に作ってくれ、まだ空いてる畑があるだろ? そこ全部を使ってくれ」


 俺の言葉に彼は驚き目を丸める。


「ですが、味は全くないですよ!? 煮込んだりしてようやく……」

「味なら塩でも胡椒でもハーブでもなんでも使えば良い、だが餓死は避けなきゃいけない」

「それは……」


 彼は黙り込みじっと帳面を睨む。


「ただでさえ人数が増えてるんだ、現状どうしても食料は必要だ」


 そう付け足すと彼は悩みに悩んだような表情を浮かべ……。


「分りました……領主様のお言葉に従います」


 その言葉とは裏腹に表情には不満が現れていた。

 ごめんな、そう言いたかったが黙っていると……。


「ですが、他の作物はどうするんですか?」

「新たに畑を作ってそこで作るんだ……」


 無茶な要求だ。

 それは分かっていた……だが、これをしなければいずれ俺達は……。

 それも分かっていたからこそ俺はここに来た訳だ。


「それじゃよろしく頼む」


 それだけを残し俺はその場を去る。


「さてと……」


 次は……あそこだな。

 そう呟いて目を付けたのは遠くに見える壁だ。

 今建設している街を守るための壁……。

 そちらの方へと向かって俺は歩き始めた。


「街の外にも簡易的でも構わないから柵が欲しいな……」


 そう、俺が行く理由はその為だ。

 何もかも無茶な要求になってるなぁ……。

 そう思いながら俺は壁へと向かう。


 建設中の壁は木を積み上げられ、後は魔法で土を盛り完成だ。

 だからこそ、壁の建設には魔族も少なくはない。


「それで、外にも壁と言うか柵が欲しいんだ」


 俺は現場を管理している女性へとそう告げる。

 すると彼女は難しい顔を浮かべ……。


「それは無理な相談だキューラ様」

「どうしてもか?」



 尋ねてみると彼女は頷き現場へと目を向ける。


「手伝ってくれてるとはいえ、道具を使った事も無かった奴も居たんだ。今現在でかなり遅れているのはアンタだって知ってるだろ?」

「そう、だな……」


 確かにその通りだ。

 だが、どうしても柵は欲しい。

 俺が悩んでいると彼女は――。


「仕方がないね、なら魔法使いならどうだ?」

「魔法使い?」


 俺が疑問を浮かべ尋ねてみる。

 すると――。


「木による補強を無しにして魔法だけで壁を作る。壊れたとしても魔法で作ってるなら補強はたやすい、じゃないか?」

「そうか……魔法使い」


 確かにそれならすぐに出来る!

 俺は彼女へと頭を下げると急いで屋敷へと戻った。

 魔法使いなら屋敷にも居るからだ。

 それに壁を作るって事なら属性的にも俺でも出来る。

 つまり、うってつけと言う訳だ。


「問題は……」


 実はまだ問題がある壁を作るという事は他国からの侵入を防ぐだけではない。

 物資などの運搬も防いでしまうという事だ。


「最低でも物資を運ぶ穴は開けておかないと駄目だよな」

「キューラお姉ちゃんかしこい」


 ファリスは俺を褒めてくれた。

 更にはクリエも頭をこくこくと降っている。

 俺は子供なのだろうか?

 そう思いつつも、ファリスの頭をなでてやると物欲しそうにクリエに見つめられた。

 仕方がないとクリエも撫でてやると二人は何とも言えない笑顔になっている。


「さて、行くぞ二人共」


 俺は二人を連れて屋敷へと戻る道を歩く……。

 色々と準備を進めてはいるが、これで戦争にならない方が一番良いと思う。

 勘違いであってほしいとも思っている。

 だが、実際にはそうはいかないだろう。

 きっと誰かが裏で動いている……それがファーレンなのかベルゼなのか、はたまたそれ以外なのかは分からない。

 だが、間違いなく……この街は狙われているんだ。


「……守らないとな」


 俺はそう呟き、いずれ来るだろう戦いに備えたい。

 まだ間に合うはずだ……そう願いつつ俺は屋敷へと戻り、魔法使いたちが居る魔術研究室へと向かった。

 そこは魔術研究とはついているが魔術で研究をする訳で魔術を研究する訳ではない。

 一体なんの為に作られたのかは俺には分からないが、それでも残っているという事は重要な事を調べているはずだ。

 いずれその話も聞きたい。

 だが、今は……。


「誰かいるか?」


 俺はノックをした。

 ここには別の話をしに来たんだ……。

 その話はまた別の機会にしよう。

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― 新着の感想 ―
[一言] 壁とお堀を作ってスライムを飼おう( ˘ω˘ )
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