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365 スライムとドラゴン

 ドラゴンの攻撃を避ける。

 それは簡単な事ではない。

 そもそも避け続けることは不可能だ

 その証拠にその時はすぐに訪れた……。


「がっ!?」


 腹部に大きな尻尾が当たり、俺は体を曲げ、地面へと叩きつけられる。


「――――っ!? ――――ひゅっ!?」


 苦しいなんてもんじゃない。

 痛いなんて事で済ませられない。

 ライムがもし居なかったら、俺は死んでいただろう。

 だが、それでいい……。

 これでドラゴンが湖の近くへとより近づいた。


「パッツァ!!」


 俺はちゃんは今しかないそう思い名前を呼ぶ。

 すると湖の水を飲んだパッツァは巨大なスライムとなり、現れた……。

 十分だ。

 ライムではなくパッツァに頼んだのは色だ。

 パッツァは透明感がある青い色……ドラゴンは目が良く人間と同様、色を見れるという話がある。

 だからこそ、保護色であるパッツァに湖の中へと入ってもらった。

 ドラゴンはそれに驚き、小さな羽を羽ばたかせ飛ぼうとする。

 だが、幼生体だからだろう……飛ぶのに時間が掛かる様だ。


「捕食しろ!!」


 スライムはドラゴンをも喰らう。

 そう……ドラゴンは恐ろしい魔物だが、生き物である以上天敵がいる。

 それが、水辺に生息するスライム。


『…………………………!!』


 暴れ回るドラゴンは水辺から逃げようと必死になるが、パッツァは既にドラゴンを捕らえている。


「いいぞ……!」


 いくらドラゴンと言っても体力がある。

 それも子供なら尽きるのも時間の問題だ。

 事実パッツァに絡みつかれたドラゴンの動きは鈍くなっていき……。

 徐々に徐々にと湖の方へと連れていかれている。

 恐らく中で消化するつもりなのだろう……。


「…………」


 俺はそれを見つめて呆然としていた。

 懐かれたから良い。

 だが、それは水辺で良く起きる事でもある。

 うっかりスライムを刺激してしまい喰われてしまう冒険者は少なくない。

 スライムが自分よりも大きいものを食べる時……。

 それは獲物を水の中へと引きずり込む時でもある。


「これが、スライム……」


 チェルもその捕食光景を見たのだろう。

 口元に手を添え、怯えるようにじっと見つめている。


「こ、こんな魔物を使い魔に……」


 兵士もまた腰が抜けた様でその場に座り込んでいた。

 パッツァの方はドラゴンを湖に引きずり込み――。

 恐らくは俺達を守る為だろう、ドラゴンの口を拘束した。

 当然水に落ちたら死を実感したらしいドラゴンはより一層暴れるが……水棲の魔物ではないドラゴンがそんな事をすれば……。


「なんとか、なったのか……」


 水に落ちたドラゴンはまだ暴れているし安全とは言えない。

 だが、もう逃げる事は出来ないだろう。

 じっと見つめていると段々と大人しくなっていくドラゴン……。

 最後にはびくんびくんと痙攣を繰り返していた。

 見ればすでに溶かされている場所も見える。

 この後はじっくりゆっくりと捕食をされるだけだ。


「ライム、もう良いぞ……」


 俺は身を守ってくれているライムへとそう告げる。

 すると、ライムはプルプルと震えだし、俺は身構えた。


「んひゃぁ!?」


 だが、そんな事で我慢できる事は無く……酷く情けない声を出してしまった。


「キューラちゃん……」


 ぅぅ……なんて声をあげてるんだ。

 俺は恨めしく思いライムを見る。

 すると地面に居た使い魔は誰かに抱えられ……。

 彼女はライムを大事そうに抱きしめると……。


「うへ、うへへへへ……」


 と笑う。

 おい、クリエの奴本当に呪われてるのか?


「クリエ、戻ってるんじゃないか?」


 俺は彼女に問うと彼女は笑うのを止め真顔になった。

 そして、可愛らしく首を傾げ……。


「ああ、うん、何でもない」


 もしかして潜在的に意識が残っているのか?

 だとしたら、うん……クリエは本当に変態だな……何て思い浮かべつつ、いつものクリエの反応にほっとする。

 もしかしたら、呪いじゃないかもしれない。

 そうなれば聖女の捜索も打ち切っても良い。

 事実、捜索を開始してから何の情報も無いんだよな。

 たった一人、チェルを覗いて……。


 このまま彼女が元に戻ってくれれば……。

 そう思いながら俺はクリエへと近づく。

 するとクリエの腕に抱かれていたライムは俺の頭へと乗っかり、彼女はじっとライムを見つめていた。


「らいむぅ……」


 そして、どこか寂しそうな表情を浮かべてライムの名前を呼ぶ。

 どうやら今のクリエはライムがお気に入りみたいだ。


「ライム、クリエの傍に居てくれ」


 そう言うとライムはぷるぷると震えて今度はクリエの頭の上へと乗っかった。

 するとクリエは自身の頭の方へと視線を動かし、へにゃりと表情を崩すと……。


「うへへ……」


 ああ、うん、表情が凄く可愛いと思ったけど笑い方はそのままなのか……。

 まぁ、クリエだしここで「えへへ」って笑ったら何処かおかしいのかと思ってしまった所だが……。


「キューラちゃん、それでどうするの?」

「ん? ああ……ドラゴンはいずれパッツァが消化するだろうし……水源はこれで大丈夫だ」


 そう言うと俺は周りをぐるりと見まわす。

 どうしてこんな所にドラゴンが? そんな疑問は生まれたがここで考えても何かが分かる訳はないだろう……。

 それよりも、一旦戻って調査隊でも編成した方が良い。


「帰ろう!」


 俺はそう言うと、スクルドへと目を向けた。

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[一言] ドラゴンが呆気なく……
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