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363 水源へ

 俺達は水源へと辿り着く……。

 そこには多くの動物が居た。

 彼らはその水をごくごくと飲んでおり、とてもくつろいでいる様だ。

 だが、その水は俺達人間にとってはまずい水だ。

 とてもじゃないが飲めたものではないし、作物に影響を与えるかもしれない。

 だから、このスライム……パッツァに水を浄化してもらう。

 そのつもりで来た訳で……。


「パッツァ、頼んだぞ」


 俺はスライムであるパッツァにそう頼みこんだ。

 するとパッツァはプルプルと震えており、恐らくは返事をしてくれたに違いない。

 さぁ、水の中に行ってもらおう。

 そう思った時だ……辺りが騒がしくなり、俺達は周りを警戒する。

 すると――。


「嘘……だろ?」


 俺はそれを見て思わずそんな言葉を口にしてしまった。


「あ……ああ?」


 チェルもまた呆然とした様子でそれを見る。


「…………」


 ファリスとクリエはそれをじっと見つめ……兵士たちは困惑し騒ぎ出す一歩手前と言った所だ。


「面倒だね……」


 唯一トゥスさんだけはそんな事を言い、ため息をついた。

 そして、彼女は俺の方へと向き……。


「手懐けたらどうだい?」


 なんて言って来た。

 無茶を言ってくれるな! そう叫びたい所だったが俺は口に手を当てぶんぶんと首を振る。

 何故か?

 そこに居たのは……。


「ドラゴンの幼生体……」


 そう所謂ドラゴンベビーだとかドラゴンパピーと呼ばれるものだ。

 彼らドラゴンは空の支配者なんていう異名を持つ。

 だが、その子供は違う。

 水辺に棲み、動物や魚、人間を襲って大きくなる。

 だが、ドラゴンも賢いため人里の近くには子供を産み落とさないはずだ。

 だというのに……何故?


 俺は疑問に思いつつも身を縮こませ息をひそめる。

 まずい、まずいぞ……。

 相手は子供と言ってもドラゴン。

 最強クラスの魔物と言っても良い……こっちには同等の魔物スライムが居ると言っても楽な相手ではない。

 かと言って放って置く事はまず出来ない。

 何故ならこの近くにはスクルドがある。

 いずれ食事のために降りてくるなんて事はありえない事ではない。


「どうするの?」

「どうするだって? いや、やることは決まってる」


 倒さなければならない……。

 そう思った矢先脳裏に浮かんだのはカインの死だった……。


「…………っ」


 俺は体が震え、目の奥が喉の奥が……熱くなる。

 俺の所為だ……。

 俺の所為でカインは死んだ……。


「やることは……」


 決まっているはずだ。

 なのに俺は何も言えなかった。

 ただ黙り込んで……地面を見つめる。

 それしか出来なかった……。


「逃げよう?」


 そう言ってくれたのはチェルだ。

 彼女は震える俺の手を取り……優しい声をかけてくれた。


「もう、良いんだよ? 無理をしなくても、怖いんだよね? 辛かったよね? だから、もう逃げよう?」


 逃げるなと責める者は誰も居なかった……。

 兵士でさえ、黙り……誰も何も言わなかったんだ。

 でも、それでも俺は……。


「駄目だ、俺は此処で逃げちゃ駄目なんだ。クリエを守りたい、それだけは偽れないんだ」


 俺はそう言うとドラゴンの幼生体を睨む。

 向こうもこっちに気が付いた様だ。

 じっと見つめ、様子を窺っていた。

 逃げる時間はもうない……。

 どうやって戦う? 相手は子供でもドラゴンだ。

 そう簡単にその皮膚を貫けはしない。

 だが、此方には……。


「ライム、パッツァ……お前達が俺達の切り札だ」


 スライムが居る。

 日本のゲームでは最弱と謳われたスライム。

 だが、実際には最弱どころか出会いたくない魔物としてドラゴンと同格。

 いや、場合によってはそれ以上の魔物だ。


「例えドラゴンでも、スライムは捕食が出来る」


 そう、ドラゴンは火を吹く。

 火はスライムには聞かない……と言われている。

 スライムに効果があるのは氷だけだ。

 なら……この状況は悪くはない。


 ぴょんぴょんと跳ねながら二匹のスライムは俺達の前へと躍り出た。

 なんとも愛らしい動きだ。

 それを見たドラゴンの幼生体はまだ子供だからだろう。

 じっと見つめていた。

 普通なら逃げだしてもおかしくはない。


 そう考えると例え魔物でも心は痛んだ。

 だけど、野放しにして大きくなってからじゃ手遅れだ……。


「行くぞ!」

「やるのかい? って言ってもアタシ達は何も出来ないよ」


 分かってる。

 トゥスさんの銃をもってしてもドラゴンにはダメージは与えられない。

 もし、人の武器でドラゴンを倒すにはドラゴンの素材から作った武器だけだ。

 それだけが彼らの皮膚を貫ける。

 だが……そんなものは当然ない。


「……危なくなったら皆で逃げる、その準備はしておくから、ね?」


 チェルは最後まで俺の手を取ってそう言ってくれた。

 俺は頷き、ドラゴンを睨み……。

 ライム達の前に出た。


「キューラお姉ちゃん……」

「皆は辺りを警戒、ドラゴンだけが居るとは限らない」


 そして、そう口にし――大きく息を吸うと、ゆっくりと吐き出す。


「さぁ、行くぞ!!」


 そして、ドラゴン目掛け俺は駆け始めた。

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