361 決意の朝
朝起きると目の前には綺麗な顔があった。
「すぅ……すぅ……」
規則正しい寝息を立てるそれは間違いなくクリエだ。
当然俺は驚いて固まってしまっている訳だが……。
起きない訳にはいかない。
とは言え、ずっと見ていてはこっちの気が持たない。
そう思って後ろへと向くと――。
「…………」
今度は可愛らしい寝顔があり。
「んぅー、ぅー……」
寝言? みたいな事を言っている。
彼女は見間違えるはずもないファリスだ。
なぜこうなった?
俺は確かに一人で寝たはずだ。
だというのにクリエとファリスに囲まれてしまっている。
逃げようとしたら回り込まれたというより最初からいた。
これでは起きようにも起きれない。
どうしたものか、そう思っていると――。
「――っ!?」
突然身体に何かがまとわりつくと同時に背中に柔らかいものが当たった。
クリエが寝ぼけたらしく抱き着いて来たのだ。
首筋には鼻息があたりどぎまぎしていると今度はすり寄って来た。
「~~~~っ」
当然、俺は固まってしまうのだが……。
「ぅ~」
寝言を口にしたファリスは服の裾を掴んだらしくこちらもすり寄ってくる。
どうなってる?
というか、何で本当にこうなったんだ?
寝るに寝られない、起きるに起きれない状況に俺は心臓の音を聞きながら堪えていた。
いや、寧ろもう耐えれそうにない。
自分の心臓の音なのにやけにうるさく感じ、尚且つ顔は熱い。
「キューラちゃん!」
そんな中、救世主が現れ、扉を開けた。
俺は助けを求める為彼女の方へと向く……するとそこには固まった様子の少女が居て……。
「…………」
彼女は笑顔で口元を開けたまま数秒固まっていたかと思うと俺の様子を見て何かを察したのだろう……。
「はぁ、ほら皆起きて? 朝だよ、ご飯だよ?」
と起こしてくれた。
うん、本当に助かった……。
「チェル、ありがとう……」
「あはは……」
彼女の名を呼び礼を告げると彼女は苦笑いで答えた。
「何で3人で寝てたの?」
「分からない、俺は一人で寝てたはずだ」
そう言ったが彼女達のベッドは乱れていない。
最初から俺のベッドへと潜り込んだらしい……。
「まぁ、二人共キューラちゃんが好きだから潜り込んだんだね」
「…………お、おう」
信じてくれるのは嬉しいが……悲しい気持ちにもなるな。
「羨ましいよ……本当に」
「…………チェル」
そうだ、カインはもう……居ないんだ。
どんなに望んでも彼はもう……ここには来ない。
俺はチェルが落ち込む様子を見て、同じようにがっくりと項垂れる。
だが、何時までもそうしている訳にはいかない。
何故なら……。
「所でチェルさん……」
「……ん?」
チェルの名を呼ぶと彼女は何を改まってと言った風に首を傾げた。
俺はそんな彼女を見つめながら乞う。
「二人を早く起こしてくれないか? その困る。色々と……」
今は少女だが一応俺も男なんだ。
自分で思い浮かべてなんだそれ? とは思うが事実は事実。
「割と困って――ひゃ!?」
早く助けだしてほしい。
そう思って懇願する中、俺に抱きつく二人の手が身体を這いまわった。
「ちょ!? 待って!?」
くすぐったい。
思わず身をよじりながら我慢をしようとしたが、満足に動けず。
「へ、変なとこ触って!?」
「へ!? ちょっと、二人共起きて……起き――!」
チェルが慌てて助けに来てくれたが、突如彼女の声が消える。
どうしたのか? 疑問に思って顔をそちらへと何とか向けると……。
チェルの姿が無い。
そんな薄情な人だったとは思えない。
「きゃぁ!? あ、だ……駄目ですク、クリエさん!?」
どうやら彼女はクリエの餌食になったようで……若干面白くないとは感じたが同時に気の毒にも思ってしまった。
なんて悠長に考えている暇はなく。
「待て待て待て、いくら大きいと言ってもこのベッドに四人は狭いって!?」
「きゅう……」
押しつぶされへんな声を上げるチェル。
完全にクリエの抱き枕だ。
対し俺は――。
「きゅーらおねえちゃ……」
寝言を呟いたファリスはギュッと掴まってくる。
当然振りほどく訳にもそもそも動く事も出来ない。
結果俺達はフリンが起こしに来るまでこのままで……起こしに来てくれたは良いが……。
その時には俺とチェルの衣服は乱れており、チェルは彼に向かって枕を投げつけたのは……印象的だった。
というか、俺は良いのか? 彼女も俺が元は漢だと知っているはずだが……。
なんか、納得いかないようなほっとしたような複雑な気分だった。
その後食事を済ませた俺達は製造途中の貯水庫へと向かう。
目的はスライムの一匹をその中に入れる事だ。
その後は川に向かいやはりスライムによる水の浄化をしてもらう。
これで大分水分の問題は解決するはずだ。
まだまだ色々とあるからな、まずは一つと言った所か……。




