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358 水の都の始まり

 起きた俺は食事へと向かう。

 食堂に着くと其処にはトゥスさんの姿もあった。

 珍しいが、きっと俺を心配したんだろう。


「その顔、どうやらいつものキューラみたいだね」

「ああ……迷惑をかけた」


 俺は頭を下げると彼女はそれを手で制した。


「やめな、アンタが簡単に頭を下げちゃいけない」


 きっと王や領主だから責任は取れ、そう言いたいんだろう。

 だが、そうは言っても俺は――。


「いや、クリエを守れなくなるところだったんだ。頭を下げて当然だ」


 そう伝える。

 彼女には聞きたい事がある。

 勿論チェルにもだ……だが、今はそれよりも食事を取って、やる事をしないとな。


 出てきた物は実にシンプルだ。

 スープにパン、そして一個のリンゴ。

 領主としてこれだけの食事しかなかった。

 理由は物資が少ないからだ……これでもちゃんと食べている方なのだろう。

 つまり、街の者はこれよりも少ない量なのかもしれない。


「……御馳走様」


 味付けもしっかりしている。

 きっと味気ない物を食べてるものもいるだろう。

 そう思いながら俺は――。


「フリンは?」

「ここに居ります」


 何時の間にそこに居たんだ!?

 そう思ったが丁度良い。

 俺は彼へと目を向け――。


「連れてきたスライム……マスカットにベリィ、パッツァは何処に?」


 ライムはクリエと共にいたが、他の三匹はいなかった。

 だから尋ねたのだが、彼は頷くと――。


「丁重に部屋に居れております。……今は食事をしている所ですよ」

「そうか、今案内を頼めるか?」


 スライムを連れてきた理由。

 それは水の確保だ。

 本当はもっと大量のスライムが居て欲しかった。

 だが、3匹でも十分すぎる。


 これでようやく一つ、いや二つ問題が解決する。


「分りました、では――」


 彼の後を追うため俺は立ち上がる。

 そして――。


「トゥスさん達も来てくれ、話したい事がある」


 そう伝えるとトゥスさんは面倒そうにチェルは首を傾げた。



 フリンの案内で俺達はスライムが居るという部屋へと辿り着く……。


「ここです」


 彼はそう言うと部屋の扉を開けた。

 中はきれいに掃除されており、木箱の様な物には水が貼ってあった。


「随分と丁寧にしてくれたんだな……」


 俺が素直に感心すると彼は咳ばらいをし、頷く。


「これから街の為に働いてもらうのです、なによりキューラ様から賜った大事な使い魔をどうして手荒に扱えますでしょう?」


 な、なるほど……気を使ってくれて助かる。

 この子達には本当に沢山働いてもらわないといけないからな……。


「ベリィ、マスカット、パッツァ!」


 俺が名前を呼ぶとスライムは水から出てきた。

 彼らはプルプルと震えてどこか可愛らしい。

 撫でてやりながら水の方へと目を向けた。

 綺麗な水だ……。

 まぁ、当然か、スライムが使っていたんだ。


「よし、それじゃお前達に頼みがある――」


 俺はそう言うと彼らにそれぞれ持ち場を用意した。

 これで水の心配は当面ないだろう。

 それと……重要な事もだな。


「もし、緊急時の場合……この街に危害を加えようとする奴が居たら守ってくれ……いいな?」


 俺の願いに彼らはプルプルと震え、答えてくれた。

 これでこの世界においてある意味ドラゴンよりも強い魔物が街の護衛につく……。

 弱点は氷魔法だから、完全に安全とはいかないだろう。

 それでも対処がしづらいのは間違いない。


「それで、キューラ話って何だい?」


 俺がスライム達と話している中、トゥスさんは痺れを切らしたようで話しかけてきた。


「いい加減酒、飲みたいんだけどね」

「昼間からですか? 良い御身分ですね」


 な、なんかチェルの態度が怖いな。

 そう思いつつ、俺はフリンの方へと目を向けた。


「人払いを、フリンもここからいったん外に出てくれるか?」

「はっ……!」


 彼は丁寧な礼をすると部屋の外へと兵士を連れて出て行ってくれた。

 足音が遠のくのを確認し、俺は話を切り出した。


「話って言うのは……」


 気になっていた事だ。

 アイツが表に出ている間の事は何となくだが覚えている。

 だからこそ、俺は気になった。


「役割ってのは何だ?」


 俺が聞くとチェルは驚いたような表情を浮かべ、慌てたようにこちらへと寄って来た。


「キューラちゃんは良いの、そんな事考えなくても」

「いいや、聞いて来たんだ言うべきだね」


 チェルの言葉にそう切り返すのはトゥスさんだ。

 彼女はゆっくりと息を吸い、話し始めた。


「アタシ達勇者の従者……その末裔が与えられた物さ……だからこそ、アタシ達は4人集まらなきゃいけないんだ」

「4人? 従者の末裔が……」


 その役割ってのは一体なんだ?

 何故そんなことが決められている?

 焦るな、これからそれを聞くんだ……。


「まずはアタシの役割だね、勇者に危害を加える者を消す、それが役割さ」

「消す?」


 俺が訪ねると彼女はニヤリと笑い。


「分からない訳じゃないだろ? 殺すって事さ」

「――なっ!?」


 確かに彼女は殺すことに抵抗は無かった。

 だが、それが役割?

 なんなんだよ、その役割って……。

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― 新着の感想 ―
[一言] そしてキューラちゃんの役割は……( ˘ω˘ )
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