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346 テイム!

 さて、ここからが問題だ。

 例え此方が林檎を差し出したとして従者になるのか?

 ライムの時は偶然だった。

 レムスの時は……仕掛けられていたものだ。

 俺は慎重に林檎を差し出す。


「好き……だろ?」


 差し出したソレを見ているのか、そうじゃないのかスライムは固まっている。

 ここで投げたりして当たってしまえばきっと攻撃されたと思いこちらを襲うだろう。

 そうなったら最後逃げるしかない。

 せりあがって来た水はいくつもあり、スライムの数はざっと四、五匹と言った所だし、勝てる見込みがないからだ。

 よくもまぁ、ここまで増えるまで放って置いたものだと言いたいが、村の事を考えると仕方がないのかもしれないな。

 俺はそう思いつつ、林檎を湖に向かって転がした。

 するとスライムは転がる林檎へとその身で覆いかぶさり、身体の中に林檎を取り込む。


「…………」


 どうだ?

 そう思いながら俺は生唾を飲み込む。


『…………っ!!』

「へ!?」


 もし従者になっているならスライムは大人しくなるはずだ。

 そう思っていた俺は予想外の事に対処が出来なかった。

 スライムは突然俺の方へと体当たりをかまして来たのだ。


「キューラ!?」


 トゥスさんの声が聞こえたが……取りあえずは大丈夫だと言う事を知らせる為に俺は手を上げる。


「な、なんだ……じゃれたかっただけか……」


 どうやら林檎が美味しかったのか、スライムはじゃれついて来た。

 つまり、これは成功って事で良いんだろうか?


 そう思いながら俺はもう一つ林檎を取り出すと湖に向かって転がす。

 この調子で上手い事行ってくれればいいんだが……。


「魔物に好かれるか……まるでアイツだな」

「何か言ったか?」


 トゥスさんが呟いたような気がし、俺は彼女へと問う。

 すると彼女は首を横に振り……。


「なんでもないよ、続けな」









 結局仲間になったスライムは五匹中、三匹だった。

 他の二匹は満足したのか林檎を身体に残し、再び湖の中へと潜り込んでしまった。

 深追いは危険だ。

 そう思った俺は取りあえず三匹をスクルドに連れて帰る事にした。


「そう言えば名前、どうするの?」


 ファリスにそう問われ、俺は少し考えた。

 三匹のスライムはプルプルと震えている。

 ライムはクリエの護衛で彼女の腕に抱かれていた。


 さて……ライムはライム色だからと言う事でそう名前が付いたのだが……。

 目の前に居るスライムは水色、青、薄い緑だ。


「……ブルーハワ……」


 いや、待て俺は何を言おうとしている……。


「ぶるーはわ?」

「待て待て今のは無しだ。……青いのがベリィに緑のはマスカット……水色が……」


 水色の食べ物なんてあっただろうか?

 そう思いながら思い浮かべるがなにも思い浮かばない。

 うーん……。


「パッツァとか……どうだ?」

「……キューラお姉ちゃん食いしん坊? パッツァ以外果物ばっかり」


 うぐっ!? いや、まぁ……この世界にもベリーやマスカットにライムはある。

 アクアパッツァはあるか分からないが、あったとしたらそれも食べ物だ。

 いや、仕方がないだろ?

 最初にライムに出会った時もそうだが……名前をと言われて……食べ物を連想してしまった。

 急に名前をと言われるとやっぱり戸惑ってしまうな。

 でも、今回のスライムは急に仲間にしたと言う訳じゃなかったのだから、ちゃんと名前は考えておくべきだったか……。


 プルプルと震えるスライムを見つめながら俺は一人反省する。

 なんというか、ライムの時とは違ってどこか訴えられるような感じがしていた。

 もしかして、名前が不服なのだろうか?


「えっと、ベリィ……」


 俺はスライムの名前を呼ぶとやはり食べ物の名前と気が付いたのかベリィはプイっとしてしまった。

 ぅぅ……。


「キューラお姉ちゃんにその態度、生意気……」

「いや、うん……悪いのは俺だよ……」


 今度魔物を手名付ける時はちゃんとした名前を考えて置こう。

 いや、でもそれだと……他の子達がかわいそうか?

 うーん、どうしたものか……。



 俺達は翌日帰る事にし、その日は牧場にあった空き家で休むことにした。

 村の中心から少し離れたその場所なら、武具屋の人に何か言われる事も無いだろう。

 夜になり、食事を作り眠る準備をする。

 普段の野営と何ら変わりがない。

 そのはずだった……。


「……何か焦げ臭いね」


 そう口にしたのはトゥスさんだ。何かあったのだろうか?

 俺は嫌な予感を感じ小屋の外へと出てみた。


「嘘、だろ……」


 そこで見たのは燃える村。

 何が起きたのかはさっぱり分からなかった。

 だが、聞こえてきたのは悲鳴……俺はこのままではまずいと仲間達の方へと振り返った。

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