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339 救う手段

「お、おい! キューラ!?」


 止めるカインの声がした。

 だが、止まるつもりはない!

 俺は拳を構え、ゴブリンの群れへと突っ込んでいく。

 元々子供だったそれは声を上げ、俺とトゥスさんへと襲い掛かって来た。

 溜まらずカインが追いかけてくる音もし――。


「カインは3人を守ってろ!!」


 そう一括すると立ち止まる音が聞こえた。

 ちょっと乱暴だったとは思う。

 しかし、これで良い。

 そう思い俺は前のゴブリンへと拳を叩きこんだ。

 すると――。


「な、なに!?」


 男は悲鳴に近い声を上げる。

 トゥスさんはトゥスさんで手斧をゴブリンへと振り下ろす。


「き、貴様ら!!」


 明らかに動揺している男。

 そんな事はまだどうでもいい……奴を殴るためにこの子達は邪魔だ。

 だが、放って置く訳にはいかない。

 助ける為だ。

 そう言い聞かせ俺は拳を振るう。

 一人一人は強くない。

 その上、俺の魔拳に驚いているのか動きは鈍かった。


「そいつらは子供だぞ! 貴様らは何をしているのか分かっているのか!?」


 裏返った声で叫ぶ魔族。

 それに対し俺は立ち止まり、答えた。


「ああ、分かってる」

「貴様らは子供を見捨てるというのか?」


 俺が立ち止まった事に安心したように笑う男は腕一本でゴブリン達を操った。

 だが……そんな事はどうでも良いんだ……。


 奴が何をしようと俺がやる事は変わらない。


「勘違いするな、見捨てる訳じゃない」


 俺がそう言うといよいよ男はケタケタと笑い初め。


「そうだよな? なら、大人しくしていろ!!」

「逆に聞くがこの子達を人間に戻す術はあるのか? 無いんだろう?」


 続く俺の言葉にピタリと身体を止めた。


「おいおい、図星みたいだね、分かりやすい」


 トゥスさんは大げさな態度でそう言うと、ニヤリと悪人染みた笑みを浮かべる。

 男はわなわなと震えているだけだった。

 だが、すぐに気を持ち直すと俺を睨み……。


「き、貴様戻らないなら殺すとでもいうのか――」

「それしか助ける方法が無いなら、俺はそれを選ぶ……こんな醜い姿に変えられて……孤児だからって人として生きる事も出来なくされたんだ……助けるにはそうするしかないだろ!!」


 俺はそう吼えると、男を睨んだ。

 すると男は唖然とし……すぐに笑いはじめた。


「そうか、そうか! 良いぞ面白い……だが、貴様に何が出来る? 何を言おうと貴様が殺すのだ。罪もない子供を!」


 そんな事は分かっている。

 姿形が変わっても子供だ。

 俺は子供を殺すことになる……それに胸が痛まない訳じゃない。

 だが、そうしないとこの子達は犠牲者を生む。

 ここで目の前の男を見逃せばもっと子供や他の人達がこうなってしまう。

 なら……俺は迷う必要なんてない。


「罪のない子供をこんな風にしたのはアンタだ! 俺は――この子達を助ける為に殺す!! これは俺のエゴで綺麗ごとだってのは分かってる、だがな……俺は恨まれようが、非難されようが……俺のやり方で助ける!!」


 そう言い切るとその言葉は予想外だったのだろう。

 男は目を見開き、頭をガリガリとかきむしり始めた。


「違うだろう! お前達は勇者の従者だろう! なぜそのような答えになる!? 貴様らは子供を殺せないはずだ!!」


 狂ったように喚く男は情けなく見えた。

 彼は俺達が勇者のお付きだと知って、子供には手を出せないと考えていた様だ。

 しかも、それを信じて疑わなかった。

 何て馬鹿な奴なのか……。


「キューラ!!」


 トゥスさんが叫んだ。

 彼女は俺達が会話をしている間もゴブリン達を倒してくれたみたいだ。


「この血なまぐさいエルフが!! 貴様もだ! 何故貴様は子供を殺せる!!」


 なんとまぁ、その通りな事を……。

 だが、その問いは彼女にとっては愚問そのものだ。


「うるさいね、アタシは勇者を狙う輩を殺すのが役割だ……例え子供だろうと女だろうと魔物だろうと関係ない、それが仕事だよ」


 そう言った彼女の瞳は酷く冷たかった。

 なぜ今そんな事を言ったのかは分からない。

 それに、俺自身そんな事は初めて聞いた。

 だが、今はそんな事はどうでもいい……。


「さぁ、どうする? お前のご自慢の盾は俺達には通用しないぞ?」


 そう言うと彼は虚ろな表情の女性へと手を伸ばす。

 だが、それをするのは分かっていた。

 分かっているなら対処はしやすい。

 俺は持ってきていた小石を取り出し、それを投げつける。

 すると、それは男の腕に当たり弾けた。

 同時に響くのは雷鳴……。

 音よりはダメージが低いだろう。

 だが、それでも彼には十分だったようだ。


「な!? 何だ、何が起きた!?」


 思わず手を引っ込めた男は俺の方へと目を向けた。

 俺はというともう数個手に取った石を持ちニヤリと笑う。


「雷だよ、この小石には雷の力が宿ってる……と言っても他のと違ってこっちはついでだったからな静電気でバチッ! っていく程度だけどな」


 だが、目論見通り、隙を作る事は出来た。

 俺はもう一つ小石を男に向かって投げると大地を蹴る。

 そして、彼の腹部に向け拳を振り抜いた。

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