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332 準備

「な、ななななななんなななな!?」


 チェルは驚き何度も「な」と繰り返す。


「何してるのキューラちゃん!? ヘリスイーラなんて!?」

「へ?」


 ああ、なるほど……。

 チェルが驚いた理由はそっちか、確かに見た目だけならヘリスイーラに似ていた。

 だが、規模は狭く、威力も低い。


「今のはヘリスイーラではないね」

「だ、だって雷!」


 訴えるようにチェルは叫ぶが、トゥスさんは笑いながら手を横に振った。


「キューラのヘリスイーラはゴーレムさえも砕くんだからね、こんな所で撃ったら地面に穴が開きそうだ」

「………………」


 呆然とするチェルは俺の方へと目を向ける。 

 俺は慌てて首を横に振った。


「いや、待て……普通大魔法であるヘリスイーラで地面に穴が開かなかったらおかしいだろ!? 俺のとか関係ないぞ!?」


 そう言うと彼女は大きなため息をつく……。


「そもそも、大魔法をキューラちゃんぐらいの子が使える方がおかしいんだけど?」


 そうは言われましても……。

 確かに大魔法を使うにはそれなりの魔力が必要だ。

 今の俺なら強化したものを一発撃ったら魔力痛になってしまうだろう。

 強化しなければ使えるだろうが、それでも他の魔法が使える回数が減ってしまう。

 つまり、唱えることが出来るだけで使い物にはならない。

 なら、使えないのと同じだ。


「あれ?」


 納得行ってなかったチェルだが、ふと地面を見ると首を傾げている。

 どうかしたのだろうか? まぁ、怒られないならそれで良いか……。


「ま、まぁ……それはともかくこれは雷の武器だ」

「雷の武器?」


 俺の言葉に仲間達は首を傾げた。

 そりゃそうだろう……今までなかった武器何だからな。


「さっきのを見たろ? これで叩いたり衝撃与えたりすると放電する。これなら棍棒とかでも良かったんだが、金属が混じってた方が効果が出やすいんだ」


 俺がそう言うとトゥスさんは驚いたような表情を浮かべた。


「あんた……硬化の事を聞いたのはまさか……」

「ああ、後は精霊石の道具にして耐久力を上げる……硬化して欲しい」


 そう、これならば地に濡れても関係ない。

 叩けばいいだけだ。

 それなら硬化する理由が十分にある訳で……。


「これでゴブリン達を潰す……頼むトゥスさん」


 俺は彼女へと頼み込んだ。

 彼女はにやりと悪人染みた笑みを浮かべる。


「なるほどね、分かったよ。それ位ならしてあげるよ」


 後は……これで、十分に休んでおけば大丈夫だ。

 以外にもこの魔法は魔力を使うみたいだ。

 身体中がだるさを訴えてくる……。


「キューラお姉ちゃん大丈夫?」

「ああ、休めば大丈夫だ……魔力痛にもなりそうにない」


 俺はそういうとファリスの頭を撫でてやる。

 すると彼女は嬉しそうに目を細めた。


「…………」


 視線を感じ俺がそちらの方へと目を向けるとクリエが物欲しそうな顔で見つめてきた。

 つまり、自分にもしてほしいとでも言ってるのだろうか?

 俺は笑みを浮かべ、彼女の頭も撫でてやる。


「…………きゅーらぁ……うへへ……」


 この子はどんな状況でもうへへと笑うのか……。

 と、とにかく……今はそれでもいい。

 笑う様になっただけでも進歩だ。

 このまま呪いじゃなきゃ、このまま回復するって事もあるかもしれない。

 そうなれば良いが、簡単にはいかないだろうな。

 

「さて、じゃぁキューラはちゃんと休みな」


 トゥスさんはそう言うと武器を俺から受け取り作業へと移った。

 これでゴブリン退治の武器は集まった。

 あとは退治をするだけだ。


「その前に……」


 ちゃんと休んで、絶対にあの武器屋の娘を助けないといけないんだ。

 あの人は協力してくれた。

 それに……素材が粗悪だから仕方がないが……武器を作る腕はいいはずだ。

 腕のいい武器屋は何人も欲しい。

 恩を売って置いて家族と共にスクルドに連れて行く……そうすれば軍の強化にもつながる。

 その為に……。


「ファリス、クリエ……二人も体を休めるんだ」


 仲間達は頷いてくれた。

 これで準備は整う……あの魔物は油断が出来ない。

 だけど、これは絶好のチャンスでもある。







 食事を終えるとトゥスさんが帰って来た。

 彼女の手には三つの武器だ。

 雷の短剣が二本、そして雷の手斧。

 これだけでは普通は不安だが……。


「出来は?」

「元が悪いからね、クリードで売ってる安い武器程度だよ」


 十分だ。

 クリードの安い武器と言えばベントでは結構な値が張る。

 つまり、良質である事は間違いない。


「明日あの巣穴に向かう……良いな?」


 俺は仲間達にそう告げ、彼らは真剣な顔で頷く。


「待って!」


 その中で一人、不安そうな声を上げる少女が居た。

 彼女は手を上げ立ち上がると……。


「それだけど、薬も持って行った方が良いと思うの、あの麻痺毒が一度限りとは限らないし」


 確かにそうだな……だけど、面倒だ。


「あれを食らったら、すぐに動けなくなる。そもそも貰った時点で終わりだ」


 俺がそう言うとチェルは首を横に振る。


「大丈夫、私に考えがあるから薬の事は任せて?」


 チェルはそう言うと放牧場にあった草を取り出した。

 いつの間に拾って来たんだ?


「これはね牛とか羊とかに食べさせると良い香草の一つなの、毒素を防ぐ効果があって、これを加工して薬を作るの」

「なるほど……でも、さっきも言ったが……」


 俺がそう言うと彼女は「ふふふ」と笑い人差し指を頬にあてる。


「これの良い所は取り払うじゃなくて防ぐ所だよ? つまり――」


 そうか! 確かにチェルは取り払うとは言っていない。


「先に飲んでおけば効果があるのか!」

「うん、でも完全に防げる訳じゃない、それでも症状は軽くなるはず」


 はは、なるほど……どうやら麻痺毒もチェルのお蔭でなんとかなりそうだ。

 とはいえ、受けない方が良いのは変わらない……十分に注意しないとな。

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― 新着の感想 ―
[一言] クリエが若干戻ってる( ˘ω˘ )
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