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323 朝

 朝になり、目を覚ました俺は伸びをする。

 するとライムは俺の頭の上に乗りぴょんぴょんと跳ね始めた。


「ご飯か? ほら……」


 鞄の中から林檎を取り出しライムに渡すとライムは嬉しそうにプルプルとしているのを頭で感じた。


「ん?」


 そんなやり取りをしていると視線を感じそちらの方へと目を向けてみる。

 するとそこにはクリエがじーっと見つめてくる姿があり。

 どうやら俺達のやり取りを見ていた様だ。

 だが、どうしてだろうか? 今度は物欲しそうな顔で俺の方を見てくる。

 もしかして……。


「林檎食べたいのか?」

「………………」


 答えないか……少しは反応見せてくれるようになったと思ったんだが……。

 まぁ、食べたいのは間違いないだろう。

 そう思った俺は林檎をもう一つ取り出し彼女へと差し出した。

 すると彼女は表情を少し明るくし、林檎を手に取ると早速かじり始める。

 しゃくしゃくと音を立て林檎を貪るクリエは満面の笑みだ。

 やっぱり食べたかったのか……。


 今回は彼女の意図が分かったが、いつもそうだとは限らない。

 やっぱり早く彼女を治さないと……。

 でも、本当に呪いなのか?

 いや、でもいつものクリエなら俺に抱きついてくるはずだ。

 この頃はそれが無いからな……さみ……じゃなくて心配だ。

 いつもと違う。

 だが、別に嫌われている訳ではない。

 それは分かるし、そうなるとやっぱり呪いの線が一番怪しい。

 だが……ショックのあまり記憶喪失になっているというのも考えられる。

 どっちにしたって現状ではどうにもできない。


「……何やってるんだい、お嬢ちゃんをじっと見つめて」


 そんな事を考えていたらトゥスさんに注意をされた。

 その声に反応したクリエはぴたりと止まり、口の周りを林檎の果汁で汚したまま小首をかしげている。

 だが、俺の視線の方へと目を向けると笑みを浮かべ……。


「きゅーらぁ」


 …………。


「今、キューラって言ったのかい?」


 俺とトゥスさんは顔を見合わせる。

 確かにそう言った。

 だが、明らかにおかしい……舌っ足らずというか、なんというか……。

 子供? いや、確かに子供っぽいかと言われるとどこか子供っぽい。


「ありあとー」

「――っ!?」


 というか、それは卑怯すぎないか?

 以前と姿が変わっている訳ではない、だが……クリエの声でなんとうかこう……いけないものが目覚めてしまいそうだ。


「キューラ……アンタ顔真っ赤だよ」

「べ、別に良いだろ!?」


 クリエの手前、うるさいとは言えないし、怒鳴る訳にはいかない。

 そう思って口にした言葉だったが、トゥスさんには壺だった様でくすくすと笑い。


「そろそろ飯の準備するよ、さっさとしないと牛殺しがまた用意されそうだしね」

「……ああ、それだけは勘弁だ」


 俺ががっくりとしていると服が引っ張られる。

 ファリスは居ないしクリエか、俺がそう思って振り返ると――。


「きゅーらぁ、ありあとー」

「あ、ああ……美味しかったか?」


 うん、なんというか破壊力がすさまじいな。

 って言うか俺に変な趣味が植え付けられないか心配になって来た。



 食事はファリスが早起きして作ってくれたみたいで何とか普通の食事にありつけた。

 しかし、チェルはふくれっ面になっていた……まぁ、その程度で済むなら放って置こう。

 俺達がここで倒れる訳にはいかないからな。

 そんな事を考えつつの食事は終わり、俺達は小屋を旅立つ準備をする。

 そして、すぐにそれも終わり、目的地へと向け歩き始めた。

 真っ直ぐ街道を進んでいく……。

 目的地にはこれでつくはずだ。

 途中、馬車にすれ違ったりしたが、魔物は少ない。

 これならもうちょっと早く着けるだろうか?

 そんな事を考えている矢先だった。


「まちな、キューラ」

「……どうした?」


 トゥスさんの声を聞き、俺は振り返る。

 彼女は街道にしゃがみ込み何かを調べている。

 一体どうしたというのだろうか? 俺は首を傾げつつ彼女に近づいた。


「ゴブリンだよ、それも新しい」

「…………そうか」


 ゴブリン。

 以前はファリスと一緒に居た魔物だ。

 彼らは知能があり、また戦いを好まない。

 だが、はっきり言って厄介な魔物である事には変わりがない。

 知能がある、道具を使うそして、仲間を傷つけられれば怒り狂いこちらを殺しにかかってくる。


 そうゴブリンが厄介なのはは温厚で人と接触をしないように普段隠れて生活しているが、自分達に危機が迫れば人を襲う事だ。

 その上、装備を剥ぎ自分達で使い始める。

 ゴブリンに負けた女性が、なんて事は無いが賢いからな人質には使われるかもしれない。

 そうなったらさらに厄介になることは間違いない。


「血の跡……はないようだね、ただ……街道に現れるって事ははぐれたか……何かを狙ってるね」

「つまり馬車とかか?」


 俺が訪ねると彼女は頷く。


「恐らく食糧かなにかだろうね」

「ゴブリンが人を襲ったのか?」

「多分ね、流石に喰うもんが無くなったら襲うだろう?」


 なるほど、確かにそうだ。

 面倒な事になって来たな……行商人が襲われたらスクルドにも影響がある。

 それに倒しておかないと後々街まで来そうだな。

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― 新着の感想 ―
[良い点] これは色々殺しに来てる( ˘ω˘ ) 登場時の男嫌いな態度 ↓ デレデレ(若干ヤンデレ?) ↓ バブみ [気になる点] きっと読者全員クリエやキューラちゃんのフルネーム覚えてない問題 (…
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