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320 料理?

 スクルドから旅立って進む俺達。

 街道沿いに進んでいくと小さな小屋を見つけた。

 恐らくは旅人が寝泊まりするための休憩小屋だろう。

 中に入ってみると小奇麗な小屋だ。

 以前俺とファリスが泊まった小屋が嘘のように見える。


「……薪もある、どうやら誰かが管理してくれてるみたいだな」


 俺は小屋にある物を確認し……。


「後は食料と水さえあればどうにかなりそうだ」


 とは言ったものの、問題はまだある。

 俺は料理が出来ない。

 そして、美味しい料理を作れるのはクリエだ。

 だが、クリエは今の状況で料理は出来ないだろう。


「となると……」


 俺はチェルの方へと目を向ける。

 彼女は誇った様な顔を浮かべ……。


「任せて!」


 何故だろう? 何故か不安が……。

 俺は恐る恐るとカインへと目を向ける。

 すると彼は何故か青い顔をしていた。

 一体どうした? なんて聞く必要はないだろう……。


「いや、やっぱり俺が作るよ」


 何故か分からない俺は自分で作った方が良い、絶対マシだと考えてしまった。

 と言うか、かなり失礼な話だとは思うんだが、そう思ってしまったんだ。


「なんで? とびっきり美味しいのを作ってあげるよ」

「なんでだろうね、アタシは凄く不安を感じるよ」


 トゥスさんは隠すそぶりも無く、そう言うとクリエの方へと向く。


「お嬢ちゃん、なんとかして料理位作れないかい?」

「………………」


 トゥスさんの言葉にクリエは可愛らしくきょとんとしながら首を傾げる。

 あれ? そう言えば、何でクリエに表情が? まぁ、昔の仲間に囲まれてちょっと記憶が刺激されたという事だろうか?

 だが、料理は作れそうにないな……。


「ちょっと! 作ってて目で見たのにそれは酷いと思うよ!」


 眉を吊り上げて怒ってらっしゃる彼女に対し、俺はどうしたものかと困ってしまった。

 カインの方へと目を向けると青い顔でがたがたと震えている。

 彼はゆっくりと俺に近づいてくると耳打ちをしてきた。


「妥協して丸焼きだけだ、丸焼き以外は駄目だ」


 丸焼きって……ただ焼くだけだろうに……。

 それ以外が駄目ってどういうことだ?

 俺は不安を感じつつ……カインへと目を向け。


「カ、カインは料理できるのか?」

「た、多少は……」

「カイン君の料理はまずいでしょ?」


 まずいでしょって……何故だろうか、この悪寒は……。


「わたしが作る……」


 そんな中、声をあげたのはファリスだ。


「ファリス、作れたのか?」

「神大陸の料理は知らないけど……料理はお嫁さんの基本」


 ああ、そうか、この子はそういう子だった。

 それなら……。


「初めてこのガキを信頼できるとアタシは思ったよ……そいつに頼むのが良いんじゃないかい?」

「褒め言葉でも駄目なエルフに言われたくない」


 何故そこで喧嘩になる。

 俺は頭を抱えそうになったが……とにかくここは迷っていたり争っている場合ではないだろう。


「ファリスに頼も――」

「だから、何で急に変えるかな?」


 うぐ!? どうやらチェルさんは張り切っていらっしゃるようだ。

 ほぼ強引な形で彼女が今日の料理当番になってしまい、俺達は不安を感じつつ待つ事になった。


 だが、ただ待つだけは愚策だ。

 そう思った俺はデザートと言う名目で辺りに何かが無いかと探し回った。


「ん?」


 そこで俺は見たことの無い木の実を見つけた。

 林檎ではない。

 だが、レムス達の好物でもない。

 あれは何だろうか? と手を伸ばしかけた時。


「キューラそいつは毒だよ、手を出さない方が良い」

「いっ!?」


 俺は慌てて手を引っ込めた。

 何だって毒の実がこんな所にあるんだよ!?


「厳密に言うと毒ではなく人間には腹痛を起こす作用のある身と言った方が良いね。便秘の薬になるがそのままならまず死ぬことになるよ」


 トゥスさん……ついて来ていたのか、でも助かった。


「なぁ、食べれそうな木の実ないか?」


 俺が訪ねると彼女は首をゆっくりと左右に振った。

 どうやら、俺達はカインが恐れる料理だけを食べないといけないらしい。

 ああ……一体どんな料理が出てくるのか……不安だ。


 そう思って帰るとどうやら料理は出来あがってしまった様だ。

 調理場が小屋に無かったらしく外での食事となったのは良いんだが、問題はその光景だ。

 見てみるとファリスが青い顔をして首を横に振っている。

 見た目こそはスープ? だと思うが、まるでマグマのようにこぽこぽと音を立てる黒いそれはとても食べ物には見えない。

 カインはというと……。


「もーすぐ寝るんだから」


 どうやら撃沈しているらしい。

 どうしたものかと思いつつ俺はスープを器へと注ぐ。

 すると何とも言えない匂いが辺りに漂い……食欲は急激に失せていく……。

 この世にこれほどの物があるだろうか?

 そんな事を考えつつ俺はスプーンにそれをすくい口へと近づけようとした。

 すると――。


「キュ、キューラお姉ちゃん駄目!」


 とファリスに止められる。


「そうだよ! ちゃんと手を洗わないと!」


 するとチェルにも怒られてしまった。

 ああ、食べる事からはどうやら逃げられない様だ……。

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[一言] 一難去ってまた一難( ˘ω˘ )
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