領主として……。
スクルドを出て暫くし、出会った爺。
彼の名前は分からない。
だが、賢者と呼ばれるほどの実力を持つ爺さんだ。
その存在を知った当初は早く会いたいと思っていた。
だが、レラ師匠と出会ってからは別に会いたいとは思わなくなった……。
師匠なら彼女が居れば十分だと感じたからだ。
それにアルセーガレンへと向かうには遠く、またトラブルもあったからな。
「………………」
しかし、その爺は向こうからやって来てくれた。
と言うだけなら嬉しい。
だが、この爺さんは……。
「うむ、決めたぞい、あ奴をワシの嫁にする、じゃが……領主殿も将来が楽しみじゃな、今のうちに唾を……いや、いっそものにしてしまうのも手じゃな」
ただのエロ爺と言った方が良い。
だが、実力は確かなもので、俺達が束になっても敵わない。
この爺さんをこのままスクルドに向かわせていいものか?
俺はそんな事を考えてしまった。
「どうした? ワシに惚れたのか?」
「それは天地がひっくり返るような事があっても無い!」
俺ははっきり言うと彼へと尋ねた。
「それで、スクルドに行って何をするつもりだ?」
「じゃから、レラの奴を……」
「そうじゃない! 何が目的なんだ?」
俺は彼に問う。
するとふざけた態度を改めた爺さんは……。
「それを言ってどうなる? もしお主に不都合のある事だとしてお主はワシに勝てるのか?」
その場の温度が下がった気がした。
思わず後ろに下がってしまいそうになるのを堪え、俺は答えた。
「勝てなくとも戦わなきゃいけない時はあるんだ……」
俺がそう言うと仲間達は武器を構える。
すると老人は笑い始めるのだった。




