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314 薬屋へ

 結局行列は俺達が薬屋の所に着くまで続いた。

 非常に迷惑な話だ。

 その証拠に……。


「いらっしゃ…………ひぃ!?」


 薬師は俺達を見て驚いている。

 当然だ……。

 客が来たかと思ったらいきなり大所帯。

 しかも武装してるんだから驚かない訳がない。


 俺は溜息を吐きながら後ろへと振り返り……。


「ほら、ビックリしているだろ? 帰ってくれ……」


 なるべく強くならないよう注意をし、彼らに帰るように告げた。

 だが、彼らはそれでも帰らず。

 それどころか…………。


「キューラちゃ……様に何かあったら大変なので!!」


 おい今「キューラちゃん」とか言いかけたよな?


 いや、それは置いておいて……とにかく……今後もこうなったら面倒だ。

 俺はそう思い彼らに告げた。


「あのな、いくらなんでもやり過ぎだ! 他の人に迷惑が掛かっているのを分かるだろう?」


 迷惑を迷惑と思っていないのは問題だ。

 まぁ、俺自身が迷惑と思っているんだが……。

 それ以上に周りの人間にとっても迷惑だろう。


 と言うかこれじゃ話すに話せないという内容だったらどうするんだ。


「ですが――」

「ですがもでもも無い! 心配してくれるのは嬉しいが、俺には頼れる護衛が居る! それに、まだ話せない内容を相談する時もゾロゾロと着いて来られては困るんだ」


 その内容を聞かれてぬか喜びされてしまったら出来なかった時に失望されてしまう。

 あくまで俺は領主な訳だし、この街も守って行かなければいけないんだからな。

 正式に進めたい話ではなく、こうもやっとしたものを民に聞かせる訳にはいかない。


「お前達にはお前達の仕事があるだろう? それをしてくれ、それが俺を、俺達の助けになるんだ」


 かと言ってついて来た人達もこの街の民。

 ないがしろにするつもりなんて微塵もない。

 なら、説得するしかない訳で……。


「な?」


 俺がそう言うと渋々といった感じで彼らは帰っていく……。

 それを見て真っ先に胸をなでおろしたのは俺ではなく、薬師だ。


「すまなかった……」

「ああ、いえ……可愛らしい領主様だとこういった悩みもあるんですね」


 ああ、うん……。

 なんか、昔はこの見た目を使って悪戯とかをしたが、今となってはもっと男っぽくて良かった。

 いや、でも結局女になるんだったら変わらないのか?


「それで、キューラ様、何用でしょうか? わざわざこんな店に来られるとは……」

「それなんだが、ちょっと頼みたい事があるんだ」


 俺は彼に水路を確保したい事、そして近くの河から水を引きたい事。

 その水が恐らくは水苔の所為でまずくなっているとの事を伝える。


「なるほど……ですが、それは困りました」

「困る? 困るって調合が出来ないって事か?」


 難しいと言っていたし、出来ないと言われても仕方がない。

 そう思っていたのだが……。


「いえ、確かに調合自体は難しく絶対に出来るとはいえませんが作る事は私にもできます……」

「ん? なら何に困るんだ?」


 俺が訪ねると彼は呆れるそぶりも無くゆっくりと口を開く……。


「お聞きになっていると思いますが、その水は動物にとっては栄養豊富です」

「あ……」


 そこまで聞き俺は納得した。


「そうか、そんな場所があるなら狩りには持ってこいだ」

「そうなんです、今までは水には困っておりませんでしたからね、薬の必要はなかったのですが……作るとなるとその栄養が損なわれてしまうので動物が減ってしまう可能性が……」


 それはまずいな……。

 水は必要だ……今ある水苔のお陰で動物が寄ってきているというのに駆除してその影響がなくなる可能性があるとはな……。

 ……それは流石にまずい。

 何せ今は食料難だ……狩りが出来、動物が必ず来る所と言うのは貴重だ。


「どうしたものか……」


 俺は腕を組み首をひねる。

 あの水場は取っておいた方が良いというのは良く分かった。

 だが、あの水は飲み水に適さない。

 野菜にだって臭いや味が移るかもしれない……。

 だが、水はどうしても必要だ。

 雨水をためる巨大な桶は後々考えるとしても……いや、まてよ?


「なぁ、それってスライムが入ったらどうなるんだ?」

「は、はぁ? どうでしょうか? スライムは人間にとって美味しい水を作ります。勿論動物も好む味です」


 つまり、あの動物達はまずいけど栄養があるから来てるって事になる。

 もし、スライムがそこに居れば?


「……って事はやっぱりスライムが必要か」


 俺はそう言うと大きなため息をつく。


「スライムですか、そう言えばファーレンにスライムが大量発生したと以前、こちらに訪れた旅人が言っていましたよ」

「……なんだって!?」


 ファーレンと言ったらこの街も同じファーレンだが……。


「首都から遠いらしく、特に目立った被害も無いので兵を派遣できないとか……」

「それは此処から近いのか?」


 俺は彼に問うと彼は頷き……。


「はい、隣町とはいきませんが、ファーレンから向かうよりは……」

「それだ!!」


 俺は彼の手を取り、ぶんぶんと振る。

 すると彼は驚き目を丸めていた。


「助かったよ薬屋! これで水は問題が解決出来そうだ!」

「ああああ、い、いえ……や、やわら……」

「ん?」


 何故薬屋は顔を赤くしているのだろうか? まぁ、良いか!

 とにかくそのスライムを捕獲するしかない! 兵をっと思ったが、遠いんじゃ兵を派遣したら食料が結構高くつくだろうな……それに街を守るのに使いたい。

 なら、いつもの仲間と行くとするか……。

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― 新着の感想 ―
[一言] それを言うならテンプテーションなのではw
[一言] キューラちゃん罪作りなヤツだぜ( ˘ω˘ )
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