313 まずい水の正体
暗殺者は気になるが、今は兵士に任せて俺は俺のできることをしよう……。
まずは、まずい水の原因かもしれない特異スライム。
それが居るかもしれないというあいまいな現状で川に色を付け調べると言う方法を考えた俺達。
だが染料が問題だ。
食べ物を使うには量が必要……当然そんな勿体ない事は出来ない。
ならどうするか?
「自然にある染料を使うしかないな」
俺はその手しか思いつかなかった。
自然の染料……色が出る者と言うのは何があるんだろうか?
「なんか、食物に住む場所、クリエの事、スライムの事……色々やる事がいっぱいだな」
特にどれが必要ないなんてものはない。
どれも俺にとってやらなければならない事だ。
かと言って一人でしょい込むには無理がある。
「それで、アタシの所に来たのかい?」
「ああ、トゥスさんなら何か知らないか?」
そう、俺はファリス達と共にトゥスさんに相談に来ていた。
一応はエルフである目の前の女性は煙草をふかしながら、考え込む。
だが、考える時間はそんなに必要なかったようだ。
「あるにはあるよ」
「本当か!?」
俺は彼女に詰め寄ると彼女は思いっきり嫌な顔をした。
「近い!」
「ああ、悪い……それで本当か? 染料のアテはあるのか?」
俺がもう一度問うと彼女は頷く。
良かったこれで水の方は……。
「知ってることだけどね、正確には染料と言うよりはそのまずい水の原因だね」
「は……?」
俺は固まり、彼女をじっと見つめた。
すると、その部屋に偶々いた黒エルフの女性はゆっくりと口を開く。
「水をまずくするの、水苔の一種……だとおもう」
「水苔? スライムじゃなくてか?」
俺の言葉に頷く二人。
一体どういう事だ?
「それは動物には栄養が豊富なんだよ、だから動物たちは好んで飲む、だけどね人間にはただのまずい水になっちまうのさ」
「勿論、飲んでも影響はないけど……酷い臭いで使えないよ」
酷い臭いでまずい水……間違いない、その水苔のせいだったのか。
「それで、どうやってそれを駆除するんだ?」
「薬だね、といっても香草を調合したものをつかんだよ、でもね、それが面倒くさい代物でね。薬師でも失敗する事が多い」
ああ……。
「キューラ大丈夫?」
「いや、頭が痛い……」
今だけでも聖女と泉探し、民達の暮らしの安定、その上その為の水の確保……の為の薬師探し……。
「どうするんだよ、これ……」
何から手を付ければいい? いや、うん……どれを優先すべきなんだ?
やっぱり民か? クリエは今のところ安定している。
だが、呪いなら何時何があってもおかしくは無いはずだ……多くの人は割けなくても聖女探しは辞められない。
とはいえ、民を放って置くなんて事は出来ない。
今は俺は此処を統治する領主だ。
彼らだけじゃない兵士だってクリエを守るためには必要になる。
なら……優先すべきは。
「薬師か……」
まずは水確保、その為の薬師、そして衣食住の安定をさせなければならないな……。
「薬師……薬、か……」
ここで何を言っても何も解決はしない。
俺はそう思い、近くに居たファリスとクリエへと声をかけた。
「二人共でかけよう」
「お出かけ?」
ファリスは首を傾げ、クリエもファリスの方を見ると真似をして首を傾げた。
なんというか、親を見て真似している子供のようにも見える。
クリエがやるからこちらはドキドキとしてしまうが……これ、元に戻った時に記憶とか残ってないよな?
いや、残っててもクリエの事だ気が付かないはず。
「キューラお姉ちゃん?」
ファリスに声をかけられ、俺は慌てて彼女の手を取る。
「ごめん、行くぞ?」
「気を付けて行ってきな美少女領主様」
いや、トゥスさん? 絶対からかって言ってるだろ、それ……。
「気を付けてね?」
イリスは心配そうな表情だ。
一体なにが心配なのだろうか? そう思ったがすぐに暗殺者の事を思い出し、頷きかけると……。
「街ではキューラちゃんを守り隊とか言うのが出来てるらしいの」
「何だよそれ!?」
いや、本当に何なんだよ!? なんか街に行くのが嫌になって来た。
だが、薬師の元へと行かないと駄目だよなぁ……。
俺はがっくりとしながら、ファリス達と一緒に部屋を出た。
二人を連れて向かうのはこの街スクルドの薬師の事だ。
餅は餅屋に任せるということわざがある。
専門家の事は専門家に聞くのが一番だ。
それにこっちは聖女と違ってそれが出来るからな。
外へと出た俺達は街の薬屋へと向かう。
場所についてはちゃんと把握しているし問題はない。
……と思ってたのだが……。
街の中を歩くと一人、一人となんか増えてきた。
なんというか、怖いな……。
俺が振り返ると其処には武器を身に着けた男女が居た。
いったい彼らは何者だ……いや、まさかこれがさっきイリスが言っていた?
「邪魔……」
そしてファリスが彼らを見て不機嫌になっている。
そりゃ後ろからぞろぞろと付きまとわれては不機嫌になるのも分かる。
こう出かける度について来られたら面倒だ。
「なぁ……」
俺は振り向き、彼らに告げた。
「ついて来られるのは、その……怖いんだが……」
だが、彼らは俺が振り向いた時にそれぞれ声を上げ……どうやら訴えは聞いてくれないみたいだ。




