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310 まずい水

 沸かしてもらったお湯を俺はゆっくりと飲み始めた。

 すると……。


「まっずい……」

「そりゃすぐにスライムが居る水なんて見つかりっこないだろ?」


 俺の素直な感想にカインはやれやれと言った感じでそう口にした。

 とはいえ、この水まずすぎる……。


「な、なんだこれ!? 飲み水にはとてもできないぞ!?」


 あまりのまずさにカインもびっくりしている。

 いや、まずいなんてもんじゃない……生臭いし、なんか変な味するし、生臭い。


「……の、飲みづらいというか飲めないというか……」


 チェルも一口、口に着けた後はしかめっ面でそんな事を言った。


「これは一回浄化してもらわないと農業にも使えないんじゃないでしょうか?」


 バルもそう言っているが、確かにそうだ。

 だが、何でこんなにまずい?

 見た目は綺麗で透き通っているというのに詐欺だと言いたくなるほどまずい。


 そりゃスライムがすぐに見つかるとは思っていない。

 もし見つかったら大騒ぎだ。

 そんな事は分かっているが……。


「……こんなにまずいんだ、何か理由があるんじゃないか?」


 まず硬水と言う可能性。

 だが、それは無い……口当たりは柔らかい感じがする。

 これは恐らく軟水だろう。

 だとするとこの臭いだ。

 これが水をまずくしている……。


「臭いを出す魔物が居るって事かな?」

「ああ、ここじゃない上流か何処かに居るのかもしれないな」


 チェルが何気なく言った事にカインは賛同する。

 臭いを出す魔物か……もし、この水が毒かなにかがあるのなら怖いな。

 というか、それは無いか……先程から動物がちらほらとこの水を飲んでいる。

 まずくても河ぐらいしか水を飲める場所は無いはずだ。

 その上で毒があるなら動物は此処から去って行く……。

 だから毒は無い、間違いないだろう……多分、恐らく……あの動物が毒に耐性があるとかそんな事ではないなら。


「……キューラちゃん、もしかして、気分が悪くなったの?」

「い、いや、何でもない」


 俺はそんな水を皆に飲ませたのを後悔しながらどうしようかと考える。


「もしかして、この水毒があったとかか?」


 カインがそう俺に聞いて来て思わずびくりと身体を震わせる。


「それは無いよ」


 だが、チェルはカインへとそんな風に言ってくれた。

 何故だろうか? 俺は疑問に思うと……。


「ほら、あそこに生えてる花」


 彼女が指をさした場所には可愛らしい黄色い花があった。


「あれは毒のある場所には絶対に咲かない花だよ、だからこの水はまずくても毒は無いよ」


 それを聞いて俺はほっとした。

 すると、チェルは驚いたような顔をし……。


「キューラちゃん知らなかったの?」

「ぅ!? あ、えっと……」


 俺は彼女の言葉にしどろもどろになると彼女は大きなため息をつき。


「覚えておいてね、動物以外にも草花の事も知っておくと安全な水場が見つかりやすいよ」


 そ、そうだよな、基本だよな……と俺は思いつつ頷くのだった。

 するとチェルは何処か呆れたような表情を見せ……。


「でも、この水は毒が無くても使えなさそうだね?」


 っと言い、俺は再びがっくりと項垂れた。


「と、とにかくこれの原因を探ろう」


 俺は皆にそう伝える。

 この河の水は異様にまずい……。

 もし、昔からそうであれば、何らかの情報があったはずだ。

 だけど、そんな事は一切聞いていない。

 と言う事は何か理由があってここ最近まずくなった……と考えるのが普通だろう。


「そうですねすぐに出発いたしましょう」


 バルは兵士たちに声をかける。

 すると彼らは一斉に立ち上がった……。

 統率されたそれを見るとノルンは凄かったんだと思い知らされるが……今はもうそんな彼はいない。

 それでも、その原因となった俺を攻める事はせず付き従ってくれる彼らに感謝しつつ、俺達も移動の準備をし始めた。


 目指すは河の上流だ。

 とは言っても持ってきている食料の問題もある、そんな遠出は出来ないが分かる範囲では調べてみよう。




 暫く歩き、水の臭いを確かめてみる。


「んー?」


 だが、不思議な事に臭いがしない。

 ここなら大丈夫か? と思いお湯にして飲むとやはりまずい。

 どうやら温めると臭いが目立つようだ。


「一体どういう事だ?」

「うーん? 何かあるのかな……少なくともそのまま飲むのはやめた方が良いかも」


 チェルの判断に俺は頷いた。

 確かに、その通りだ。

 先程バルが止めてくれたから良いが、もしそのまま飲んでいたら何が起きるか分からない。

 動物や花の事もあるから毒って事は無いだろうが……。


「しかし、結構歩いたはずですが、原因が分からないですね」


 そう言うのはバルだ。

 彼の言う通り、先程の場所からは結構上流に来ている。

 だというのに原因が分からない。

 水は相変わらず綺麗なままだ。


「…………なぁ」


 俺達が疑問を浮かべる中、カインは突然立ち止まり河を見つめながら口を開いた。


「水をまずくする魔物っているのか?」

「……へ? 水をまずくする……魔物? 聞いた事無いな」


 俺はそう答えた。

 実際聞いた事は無いからだ。

 スライムが水を美味しくするのは誰もが知っている事だが、逆にまずくする魔物は聞いた事が無い。

 実際にそんな魔物が居るのなら情報が出ているだろうし……。


「いや、まてよ? もしかしたら突然変異か?」


 俺はロクタの事を思い出しそんな事を口にした。

 ロクタは突然変異で意思ではなく宝石を食べるようになる。

 そして、その宝石に連なった属性の息吹を操るはずだ。

 なら、水をまずくするスライムが居てもおかしくはない。


「まさか、な……」


 そう思いながら、俺は河を見つめるのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 身を守るために糞マズい水を作るようになったスライム(゜ω゜)?
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