308 食料問題
二日後。
カインとチェル、そして数名の兵を連れた俺は目的の森へと向かう。
「キューラ様、待ってください!」
そう言うのは兵士の一人であるバルだ。
「どうした?」
俺はそう言いながら後ろへと振り向く。
「トゥス様は良いのですか?」
「ああ……」
トゥスさんか……彼女は街に戻ってからあまり会っていない。
と言うよりも実は別の事を頼んである。
敵の狙いはクリエだ。
今はファリスと言う心強い味方がいるが、彼女一人にすべてを任せるのは酷。
だからこそ、トゥスさんには護衛をしてもらっている……っと言っても遠く離れた場所からだ。
じゃないと彼女の特技を活かせないからな。
だが、まぁ……ライムがクリエから離れたがらないからな。
この頃、林檎を受け取る時以外はほぼクリエにつきっきりだ。
俺、嫌われたのかな?
「彼女は別の仕事があるだけだ」
がっくりと項垂れつつ俺がそう言うとバルは首を傾げる。
「は、はぁ……」
だが、そんな事はどうでもよく……。
頭の軽さに俺は若干名残惜しさを感じつつ歩き始めた。
「キューラちゃん、頭どうかしたの?」
「……え?」
俺は知らず知らずの内に頭を触っていた様だ。
するとカインは笑いつつ。
「痒いんじゃないのか?」
そう言うと彼はチェルに睨まれている。
まぁ……痒いは無いな、ちゃんと洗っているし。
「いや、ただライムが居ないなぁって思ってただけだって」
「そっか……長いもんね、ずっと一緒だったんだし」
そうか、チェルやカインはライムと出会った少し前に出会ったんだっけ。
それも遠い昔のように思える。
そんな俺達が今は一つの街の為に動いている。
これがクリエを守る事に繋がるのかはまだ分からない。
だが、それでも手を貸してくれる人達の為に俺達は食料を探さなきゃならない。
街の出入り口へと向かいながら街を見渡してみるとふと気になった場所があった。
「あそこは田畑に使えないのか?」
俺が気になったのはぽっかりと空いている場所だ。
「いえ、あそこは畑にしようとしたのですが……人手が足りず、増やすことが出来なかったんです」
なるほど……ならあそこも使ってしまおう。
「奴隷兵の中から農業に詳しい者に管理させてくれ、それと、そうだな他にも狩りとか、そう言った事が得意な人は別の仕事をしてもらおう」
俺がそう言うと彼は驚いた顔をした。
「どうした?」
「どうしたって……奴隷ですよ?」
まぁ、それはそうなんだが……。
「そうは言っても彼らは主を裏切ってまで俺達を助けてくれたんだ。奴隷のままじゃ可哀そうだろう? 不満が起きる前にそう言った事は排除しておきたい」
彼らは無理矢理戦に連れてこられた。
奴隷兵とは呼んでいるが、もしかしたら徴兵されたのかもしれない。
そうじゃなくても奴隷兵と言う扱いに不満が出てくるだろう……ならこの街の仲間に引き込み、仕事をしてもらえばいいのではないか? と考えたんだが……。
「とにかく今までは人手不足で作れなかったんだろ? なら、手伝ってもらえばいい」
俺はそう言うと近くに居た見回りの兵士へとその事を告げる。
彼もバルと同じように驚いていたが、俺の命だと言うと敬礼をし立ち去って行った。
「寛大というか……なんというか……」
「当面の問題は食料だ。食料が無ければ人は死ぬ……その前に奪い合い、反乱だって起きるかもしれない。なら少しでも解消へと向かった方が良い」
その為に俺達は森へと向かうんだからな。
それとふと思いついた事がある。
それは例の孤児院だ。
あそこの子供達は農業が出来る……そう考えると今この街に必要な戦力の一つだ。
「他にもああいった土地はあるか? 出来れば家も建てれるぐらい広い方が良い」
「何を言ってるんです!? 奴隷に土地を!?」
また奴隷って呼んでるし話を聞いていたのかバル君は……。
「彼らを奴隷と扱わない、だが……管理は暫く町の人にしてもらいたいんだ。衣食住を与えて、その見返りに彼らの力を借りるんだ」
俺は、俺達はこんな所でくたばる訳にはいかない。
だから食料をはじめとした衣食住は早々に解決したい。
それに水だ……今は持つだろうが、井戸も作った方が良いだろう。
「まぁ、とにかく俺達は森に向かうんだろ? 早くしないか?」
「カイン君……私達ただ森に行く訳じゃないんだよ? 街で出来る事に気がついたらそれを先にやろうとするキューラちゃんは何も間違ってないよ?」
痺れを切らしているカインに対し、チェルはやはり呆れている。
彼女の言葉に感謝しつつも、カインをこれ以上待たせるのも悪いと思った俺は……。
「行こう」
っと口にするのだった。




