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303 聖女候補

 さて、聖水を手に入れるにはまず聖女を見つけなければならない。

 泉の方は……どこにあるか分からないが、それは兵を使って探してもらうしかないだろう。

 同時に集めるなんて無理難題だ。

 当然聖女に関してもそうだが……一人は当てがある。

 まずは……そちらの方へと頼む方が良い。

 と言う事で俺は今教会に来ている。


「と言う訳なんだ」


 俺が説明をすると彼女は笑みを浮かべていた。


「うん! それでその聖女って言う役割をやればいいんだね?」

「ああ……そう、だな……」


 勿論言いにくい部分はまだ伏せている。

 だが、そんな風な返答をすると何かあると分かってしまうのだろう。

 チェルは首を傾げて訪ねてきた。


「どうしたの?」


 言うべきか言わざるべきか……。

 迷ってしまったが、言わなければ万が一と言う事もある。

 俺は迷いつつ大きなため息を付くと意を決して言う事にした。


「その、実は……な?」


 俺はゆっくりと口を開く。


「聖女の条件にさっき言った高い魔力があるだけじゃ駄目なんだ」

「そうなの? でもさっきは……」


 言っていなかった事がある。

 そう告げた俺はもう一つの条件を彼女に伝えた。


「最後の聖女の条件は生娘、つまり……そういうことだ」

「…………」


 俺の話を聞いたチェルは固まってしまった。

 そうまるでぴしりと言う音を立てるように……。

 まさか、あのカインの事だそんな事は無いだろう。

 そう思いつつも俺はふと思い出す。

 彼女達にはもう一人仲間がいた……まさかと思い俺は恐る恐るとチェルへと尋ねた。


「チェル? まさか……なぁ、その……」

「――っ!! 馬鹿なの!? そんな変な事言う訳ないでしょ!?」


 彼女は顔を真っ赤にして叫ぶ。

 まぁ、怒る気持ちも分かる。

 だけどこっちはこっちで死活問題だ。

 聖女の条件を満たすのは簡単に見えて厳しいだろう。

 この世界は神官と言っても別に神に身をささげている訳じゃないからな。

 だが彼女の反応を見るにまさかと言うのはありそうだ。

 かと言ってここで他にあたるよと言うのもなんだか気まずい……な。

 迷っていると彼女は真っ赤な顔をしそっぽを向き。


「と、とにかく話は受けてあげるけどそんな変な条件、納得できないんだからね!!」


 ああ、うん……どうやら心配は杞憂だったようだけど……。

 なんというか、うん……聖女を定めた人は一体なんなのだろうか?

 と言うか本当にそうじゃなきゃいけないなんて分からないと思うんだがな。


「キューラちゃんのエッチ! 変態!」

「いや、待て!? 聖女に条件を付けたの俺じゃないからな!?」


 そして、盛大な勘違いをされてしまった。

 思わず言い返したが、チェルは真っ赤な顔で怒りながらそっぽを向いてしまった。

 まぁ、気持ちは分からないでもない。

 なんというか、うん……。

 これは先が思いやられるな。


「な、なぁチェル?」

「………………」


 俺は彼女に声をかけるが、彼女はこっちを向いてはくれない。

 うん、話ぐらいは聞いてくれるはずだ。


「他に魔力が高い子って知らないか?」

「知らない! 知っててもしてないかなんて知らない!」


 怒っていらっしゃる。

 もう手遅れかとは思ったが、俺は彼女に謝罪の言葉を告げ、その場を後にする。


「…………」


 俺が去るまでの間、チェルは黙ったままだ。

 深いため息をつき……外へと出た俺はもう一度ため息をついた。


「これ……どうするんだよ」


 クリエを救うためだ。

 やらない訳にはいかない、そうは分かっていても……。


「き、聞きづらい」


 知り合いであるチェルでさえ、いや、知り合いだからこそか……。

 かと言って知らない人に聞くのも困りものだ。

 それによくよく考えてみればチェルの様な魔力を持った人がそうそう居るだろうか?

 更に考えれば、その上……アレな訳だし。


「……誰だよそんな規則作った奴」


 俺は大昔の人に対し、文句を一言言った後……考える。

 知り合いに魔法が得意で魔力が豊富な人間が居るか思い出していた。

 だが……。


「思い当たらないよなぁ」


 そもそも、純潔の人間という事は水の魔法に関係する事だと思うから俺達混血や魔族は駄目だ。

 水の魔法が使えないからな。

 魔法が使えないという理由でエルフやドワーフも駄目。

 やはり、人間しかいない。

 それは分かっているのだが……。


「人間の魔力が……」


 俺はそこまで口にしてふと思い出す。

 そう言えば以前助けたあの子達はどうだろうか?

 あの戦士の子は魔力が高いってことはないだろうし1人はエルフだったから無理だとしてもあの神官の子なら……。

 そう思ったが、すぐに首を横に振った。

 あの子達はあの偽勇者に酷い事をされているんだった。

 あの偽勇者の事だ望みは薄い。


 だとすると……やっぱり。


「探してもらうしかないか」


 俺はがっくりと項垂れながらも屋敷へと戻るのだった。

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