302 フリンの助言
俺はすぐにフリンへと先程話した内容を伝えた。
すると彼は困ったような表情を浮かべる。
どうしたというのだろうか?
「つまり、今処刑場へと向かいたいと?」
「クリエをこのままになんてしておけない!」
そう言うと彼は「それは存じております」と口にした。
ならなぜそんな顔をするのだろうか?
「確かに貴女の目的はそちらでしょう、ですが……」
ですが? まさか街を見捨てるなとでもいうのだろうか?
確かに今すぐに出ていく訳にはいかない。
ちゃんと仕事を割り振り、何が起きても良い様に連絡手段を確立させてから――。
「本当に呪いなのですか?」
「…………え?」
予想外の言葉に俺は呆けた声を出した。
「もし呪いでない場合、貴女は自分自身で危機に陥りに行くだけかもしれませんよ?」
「ぅぅ!?」
た、確かにそうだ。
俺は呪いだとは言ったが、確信はない。
あくまでそう言った呪いがあるかもしれないと思っただけだ。
そして、その可能性は十分にある。
だからこそ、行く必要があるともいえるが……。
「まずは本当に呪いかどうかを調べた方が良いのでは?」
「し、調べるって言ったって……」
どうすればいいのだろうか?
呪いを調べる手段? そんな事できるはずが――。
「ノルン様は勇者を呪いの象徴としていました」
「は?」
突然そんな事を言われ俺は思わず聞き返す。
呪いの象徴だって!?
なんだか聞いてて気分が良くない言葉だな。
「その身に奇跡と言う力を宿す代わりに命を落とす事を約束されているのです。呪いと言ってもおかしくはないでしょう」
あ、ああ……そういう事か、確かにそうだ。
俺は頷くと彼は言葉を続ける。
「だからこそ、調べていたのです……」
「も、もしかして、呪いかどうか調べる算段があるのか?」
俺が訪ねてみると彼は笑みを見せてくれた。
「ええ……たった一つだけではありますが、調べる手はあります」
そうか、それなら……。
俺は彼へと詰め寄り、告げた。
「その方法を試してくれ! なるべく、急いで……!!」
「分っております、ですが準備には色々な素材が必要なのです」
おおう……そうか、そうだよな。
何せ呪いかどうかを調べるんだ……それぐらい仕方がない。
「それでどんな材料が必要なんだ? すぐに集まるのか?」
そんなはずはない。
俺はそう思いながらも質問をする。
するとフリンは頷いた。
「すぐに集まる物でしたら……問題はありません」
「つまり、問題がある物があるんだな?」
俺が再び尋ねると彼はまた頷く。
一体なにが必要だというのだろうか?
「呪いを調べるためには清らかな水……つまり、聖水が必要です」
「聖水……ねぇ」
まぁ、ありきたりだな。
でもそれ位なら教会とかに行けばありそうなものだが……。
「この聖水は聖女……つまり、選ばれた女性が作るものです」
「…………ほう」
なんだか、面倒くさい感じがしてきたぞ?
「聖水を作るにはまず、その元となる水晶の泉から水を汲んできて聖女達が代わる代わるガゼウル様への祈りをささげるのです……」
いや、まてまて、今の言い方だと……。
「それってどのぐらいかかるんだ?」
「ご安心を三日ほどです」
そ、そうか、それは良いんだが……まず水晶の泉?
「水晶の泉なんて初耳だぞ? 精霊の泉と違うのか?」
「ええ、貴重な物ですから、本来なら一部の貴族以外なら知りえません」
そうか……それなのに、彼が知っているという事はノルンのお蔭だな。
あ、いや……方法は知っていても水晶の泉はあるか分からないかもしれないな……。
「それで、泉のありかは分かるのか?」
「ええ、それはまだですが、珍しいとはいえ情報を集めるのは出来なくはないでしょう、問題はその聖女の方です……」
人を用意するのが問題か、確かにそうかもしれない。
今まで勇者や神官なんて言葉を聞いた事はあるが聖女なんて事は聞いた事が無い。
「生粋の人間、それも生娘、魔力が高く……魔法の心得があり、また……そんな人物が最低でも2、3人は必要です」
「おいおい……そんな人が居るのか?」
魔力が高く魔法の心得があるってなら冒険者を探せばいい。
だが、問題は最初のだ。
「どうやって調べるんだよ」
「……男性では襲ってしまう可能性がありますからね、女性同士で確認させるか、それか本人の言葉を信じるほかないでしょう」
そう、だよな……。
取りあえず一人は目星がついているが……相手は俺の事を男だって知っているんだよな。
聞きづらい……な。
かと言って他の奴に確かめさせるのも嫌だろう……。
まぁあいつがあんなだし大丈夫だとは思うが……。
それにしても、まさか聖女がそんな条件があるとは思わなかった。
というか、そもそもこの世界に居たんだな聖女……だから聖水なんて聞いた事が無かったのかもしれないな。




