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283 急がば……

 コボルトを退治した俺達は方位と地図を確認する。

 今回の旅は失敗が許されない……。

 目指す場所はノルンに教えられた山だ。

 嘗てそこには世界を支配していた悪龍がいたという話だ。

 その為、山の名前はドラゴ山と言うらしい。


「変な名前だよな」


 俺は思わずつぶやいたが、二人はきょとんとしている。

 ファリスだけはこくこくと頷いて。


「私もそう思う」


 と賛同してくれた。

 因みにそのドラゴンは勇者の奇跡によって倒されたらしい。

 それを聞いて俺は嫌な気分になったが……。

 実際にその時代に生きた訳じゃない、俺が生きているのは今この時代だ。

 そして、そこにはクリエが居て彼女は今危機的状況にある。

 それを助けなければいけないんだ。

 一々、過去の人の事で怒ってはいられない。

 クリエを助けて、その後にゆっくり怒れば良い。


「よし、方位と地図は確認できたな」


 俺は地図を確認した後仲間達に出発を告げる。

 コボルトの死体はその間にカインが焼いておいてくれた。

 人じゃないからアンデッドになる可能性は少ない。

 だが、アンデッドにならずとも他の仲間を呼び寄せる可能性は高い。

 普段なら団体で行動するコボルトだが、今回は逸れていた。

 仲間の危機を感じ駆けつけられたらたまったものではないからな。


 そこで火だ。

 獣の魔物であるコボルトは火が苦手だ。

 燃える匂いがすれば自然とその場には近づかないという訳だ。

 今は先を急ぐ旅だから、用心はしておくに越した事は無い。


「怪我はないね? じゃぁ――」

「ああ」


 俺は心配するチェルに頷き再び合図をする。


「行こう、ドラゴ山へ……」


 クリエ……待っていてくれよ。

 今、そっちに行く……必ず助けてやる。







 それから俺達は何度となく魔物と戦った。

 ドラゴ山は街からは離れている。

 当然夜営もする事になった……だが、急ぐ旅だ。

 俺の気持ちは焦っていたんだろう、そしてそれは彼に伝わってしまったのだろう。


「進まなくても良いのか?」


 カインはそんな事を口にした。

 当然俺は首を横に振る。


「こんなに暗いんだ、魔物だっている……夜を進むの危険だ」


 冒険者の基本の一つ、理由が無い限り夜を歩くのは辞めた方が良い。

 勿論理由とは夜行性の魔物を狙うという事だ。

 つまり、今はその理由の外という事になる。


「でも、急ぐんだろ?」

「カイン君! キューラちゃんの言う通りだよ!!」


 チェルも俺の言葉に賛同してくれている。

 正直に言えば、ファリスなら夜目が効く……俺も多少なら大丈夫だ。

 なら進むべきだとも考えた。

 だが、それでも辞めた理由はある。

 簡単だ……それだけファリスの神経を擦り減らす事になる。

 人数が少ない俺達の貴重な戦力をだ。

 それだけは避けなくてはならない。


 今は俺もそれなりに戦えるだろう、だが俺とファリス、そしてカインを比べると二人の方が強いのは分かっている。

 その二人を潰しかねない危険な行為になってしまう。

 それだけじゃない、夜目が効くと言っても俺とファリスだけ、カインとチェルはそうじゃない。

 当然思わぬ事故に繋がり、足止めを食らう羽目になるかもしれない。

 そう考えたら下手に夜は進むべきではない。


「相手だって進んでるかもしれないぞ?」

「それは無いな……」


 俺はカインの言葉にそう答える。

 確かに隊であれば役割があるからこそ進めるかもしれない。

 だが、クリエの近くにはライムとレムスが居る。

 クリエを魔王の配下と考えているなら……恐らく……。


「下手による攻め込むのは逆に危険だ」

「でも、寝こみを襲うのは確かに良い判断だと思う」


 ファリスも首を傾げている。

 だが、俺はそう言い切る事が出来ると確信していた。


「俺が貴族なら魔王の配下であるクリエの傍にはもっと危険な魔物が居ると考える……ドラゴンとか、な」

「私もそう思う……疑われてるのがライムちゃん達が居るからっていうなら、警戒するのは当然だよ」


 この世界においてドラゴンは厄介さだけで言えば正直スライムよりも強い。

 なにせスライムは氷の魔法なら対策が出来る。

 だが、ドラゴンは違う。

 スライムと対峙すれば負けてしまうが人と戦うのならば口からは炎を吐き、鋭い牙と爪を持つ。

 そして、鋼鉄よりも固い皮膚を持つという恐ろしい魔物と言うのは変わりがない。

 その対策方法も実にやっかいだ。

 強力な魔法……それも普通の魔法使いが習得できるとは限らない物を使うか、それか……珍しい鉱石を使った武器を使うかだ。

 スライムよりも対策する方法は多い……だが、倒すのは難しい。


「そういうものなのか」


 カインは納得したのか納得してないのか分からないがうんうんと頷いた。


「だから、今日はしっかり休もう」


 とは言っても見張りは必要だ。

 交代で休むことにし……夜は更けて行った。

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