表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
292/490

280 屋敷へ

 街に戻り屋敷まで行くと見覚えのある人物が入口でそわそわとしている。


「あれは……」


 見間違えるはずもない、師匠だ。

 普通じゃないその様子に俺は不安を感じた。

 何かあったのだろうか? そう思いつつも焦る気持ちを抑え、近づいて行く。

 すると彼女は俺達へと目を向けやはり同じように近づいて来た。


「師匠! 何――」

「良かったキューラ無事だったか!」


 彼女は俺が質問しようと思ったらすぐに言葉を投げかけてきた。

 思わず口をパクパクとさせてしまうと誰かに服を引っ張られる感触を感じ俺はそちらへと目を向ける。

 すると――。


「凄く心配……してた」


 ファリスがそんな事を小さな声で教えてくれた。

 なるほど……そういう事か。


「皆、怪我はないか? 食事は?」


 お節介と言ってしまえばそれで終わってしまうだろう彼女の態度。

 しかし、心配をしてくれた人に対しそんな事を言うつもりはない。

 俺は頷き……。


「大丈夫ですよ師匠、誰も怪我させませんでしたし……」

「でもキューラは無茶したよな、盗賊相手に一人で立ち向かうんだもんな」


 おい……カイン君? 何故をそれを今言うんだい?

 ほら師匠が固まった後すぐに俺を睨んできたじゃないか。


「本当か?」

「い、いや……あれは相手を油断させるためで……」


 ファリスが居たからこそできた事だ。

 見た目だけなら子供であるファリスが一番弱いと考えるだろうし、実際にそうだった。

 そのお陰もあって盗賊を倒せた。

 なんて言うつもりはない。

 何故なら最初からファリス一人でなにも問題は無かったからだ。

 確かに作戦ではあった。

 だが、同時に俺自身がどこまで通用するか調べたかった事もある。

 ましてや、師匠達がファリスが強い事を知らなくても、カインやチェルは知っている。


 なら最初からファリスに一緒に戦ってもらえば良かったんだ。

 なんて言われる事は目に見えていた。

 だからこそ、俺は黙り込み。


「はぁ……」


 師匠は大きく溜息をついた。

 そして、俺を見つめ……。


「大方、実力を試したかったという所か? 無茶は駄目だ!」


 見透かされている。

 過ごした時間は短いはずなのに……良く分かるな。

 俺が感心していると……。


「キューラ、返事が無いぞ?」

「あ、は、はい! 分かりました……」


 俺は思わず謝りながら返事をする。

 チェルの様に怒られるだろうか? そう身構えていたのだが、彼女はそれだけでいいみたいで。


「それじゃ屋敷に入ろう」


 と口にすると扉を開けてくれた。


 屋敷に入ってまずする事は領主であるノルンへの報告だ。

 だから、彼が居る部屋へと案内をされた。


「良く戻って来た!」


 嬉しそうな笑みを浮かべた領主は俺達を迎え入れてくれた。


「ね、ねぇ……この人がキューラちゃん達を助けてくれた人なの? 貴族だよ?」


 チェルは小さな声で耳打ちをしてくる。

 当然だ。


 貴族と言えば勇者を嫌う……いや、違うな。

 人として扱わない……と言った方が良い。

 だが、目の前の人物は少なくとも今の所そう言った所はない。

 勇者を嫌うのは一緒だが、他の貴族とは違う理由だ。

 俺が騙されてなければだが……。


「さて、そちらの女性が君達の仲間の一人、だったな?」

「え……あ、は、はい!」


 チェルは頷いた後に丁寧な例をする。

 するとノルンはうんうんと頷き……。


「無事なようで良かった……それでキューラ殿、孤児院の方は?」

「ああ、実は――」


 俺は孤児院の事を伝える。

 ファリスからも話は伝わっているはずだが……実際にレイチェルさんと話したのは俺達だ。


「それで、身体の方が……」

「そうか、ならあの子達を送って正解かもしれないな」


 ん? どういう事だ?


「あのエルフの子は実は薬を作れるんだよ……薬師と言うには実力が足りないが、それでも効果がある薬が作れるんだ。兵士に熱病の薬を作ってくれたぐらいだ役に立つだろう」


 と師匠が口にした。

 なるほど……そういう事だったのか、確かにそれなら彼女達を向かわせて正解だ。


「何はともあれ、ご苦労だった……無事仲間も見つかったようだし、ゆっくりと休んでくれ」


 俺は彼の言葉に頷く……だが……。


「なぁ、他の皆の情報は……」

「残念だが今のところは来ていない、だがこの大陸には居るはずだ」


 魔大陸には行っていないか……それはそれで安心なんだが……。

 かと言って絶対に無事か? と言われると違う。

 やはり心配な物は心配だ。

 特に俺達の様に戦える人間ばかりじゃないからな。

 出来ればそう言った奴らが先に見つかってくれたら急いで保護しに行くんだが……。


「焦っても仕方ないか……」


 俺は自分に言い聞かせるように呟いた。

 自分達でも探さなきゃいけないんだ。

 とにかく、此処で焦って仲間がすぐに見つかる訳が無い……まずは情報。

 それが必要だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ