表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
280/490

268 キューラの選択

 レラを師とし修行をするキューラ。

 しかし、どうやらキューラには剣術の才能がないらしい。 

 武術を学んだほうが良いのでは? 

 そんな提案を受け、キューラのした選択は……。

 ノルンに仲間達を探してもらっている間。

 俺はレラ師匠のもとで体術を学んでいた。

 だが、修行は修行……そんなすぐに効果が出るものではない。


「ぜぇ……ぜぇ……」


 俺は息を切らしファリスが持ってきた木製のコップに入った水を煽る。

 レラ師匠は優しい師匠と言う訳ではなかった。

 事実修行の内容は厳しく……それに追いついて行くのがギリギリだ。


「よくやったな」


 ねぎらいの言葉をかけてはくれた物の結果は出せていないだろう。


「今日の分は終わりだ」

「あ、ありがとうございました」


 俺は礼を告げるが、その場からは動けなかった。

 動けるはずがない。

 何せ俺は……。


「それにしてもキューラは体力が無いな」

「………………」


 レラ師匠の評価を聞くなりファリスの周りの温度が下がった気がする。

 だが、ファリス……彼女の言う事は事実だ。


「は、はい……」

「基礎訓練、通常の訓練……これでバテていては戦いで使うのは厳しいぞ?」


 ぅぅ……それは分かっている。

 だが、そうだとしても自分を鍛えなきゃだめだ。


「それでも必要な事なんです」


 俺はそう言うと彼女はうんうんと頷く。


「向上心があるのは認める……それに剣をやめたからな。その分教え込む時間が増えた」


 彼女はそう言うと優し気な笑みを浮かべた。


「心配するな! 私だって才はあったと言っても苦労しなかった訳じゃない、師匠にはこってり絞られたよ」


 そう言うと彼女は笑い声をあげた。

 そう言えば、彼女の師匠は凄腕だったと聞いたが、一体どんな人なんだろうか?

 気になった俺は彼女に尋ねてみる事にした。


「あの……レラ師匠の師匠ってどんな人なんですか?」


 そう尋ねると彼女はしばらく考え込んだ後……。


「世間では凄腕と呼ばれているが、私個人から言わせてもらうとエロ爺だ……」

「「………………」」


 彼女の言葉に俺とファリスは揃って黙ってしまった。

 予想した答えと違った。

 だが、彼女はそんな事を気にする事も無く言葉を続ける。


「賢者や剣聖……色々な呼ばれ方をしてはいるが、まぁ……水浴びを覗こうとしてきたのは今でも許せないよ」


 笑顔は張り付いているが、相当怒っているのだろう事は分かった。

 それにしても賢者……いや、賢者?


「賢者って今アルセーガレンに居るって言う噂の?」

「いや、何処にいるかは分からない……ただ、あの爺の事だ容姿端麗なエルフが居る街に住み込むのは納得できるな」


 うん、師匠の威厳も何も無い爺さんだって事は分かった。

 そして、恐らく……いや、合っていてほしくないが……アルセーガレンの賢者とは……その爺さんの確率が高いな。

 だが……エロ、爺……かぁ……。

 なんだか会いたくなくなってきたぞ……。

 というか、その弟子のレラ師匠に教わるんだからもう会わなくて良いんじゃないか?

 いや、むしろそうしよう……その時にファリスはまだ大丈夫だとしてもクリエやトゥスさんが居たら面倒そうだ。


「どうした?」

「あ、いえ……何でもないです」


 俺が歯切れの悪い返事を返すとレラ師匠は眉をひそめ。


「良いか? もしアレに会うつもりなら尚更体術だけは学んだ方が良い」

「……へ?」


 突然なにを言い出しているんだ? この人は……。

 そんな事を考えていると彼女は遠い目をしながら……。


「あれでも賢者だ寝込みを襲うような卑劣な真似はせんが修行中に隙あらば触ってくる……そういう時に急所を狙うのが一番いい」


 本当に何を言い出しているんだ!?


「急所?」


 そして、ファリスは首を傾げている。

 男の急所……いや、人の急所と言った方が良いのだろうか? だが、ダメージ的には男の方が大きいはずだ。


「ああ、股間を蹴り上げる、生半可な速さじゃ駄目だ。避けられてしまうからな」

「…………」


 元々男の俺としては想像したくもない程の恐怖と悪寒が走る。

 しかし、ファリスはそうでもないのだろう……。


「なら、切り落とした方が早い」


 ああ、うん……こっちの方がえぐかったな。


「そ、それは酷過ぎるんじゃないかな?」


 レラ師匠もこれには思わず引き笑い。

 しかし、うちの妹さんはそうではないようで可愛らしい笑みの中にどす黒い何かを含めた器用な顔で続ける。


「キューラお姉ちゃんに手を出すごみは……そんなものいらないの」


 何故だか分からない。

 だが、彼女の好意はあくまでキューラ()()ちゃ()()に向けられているものだろう。

 もし、男に戻ったら今の笑顔で「いらないの」される可能性があるのかもしれないな。

 そう考えたら恐ろしい。

 まぁ、この姿は呪いで変わった物ではないらしいが……出来る事なら戻りたい。

 だとしても……後々の事を考えると恐ろしくなってきたな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ