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259 新たな拠点

 ノルンはどうやら町を救った英雄としてキューラたちを扱うようだ。

 拠点としても利用することを提案する。

 対しキューラはどうするつもりなのだろうか?

 それから俺達はノルンと言う貴族の屋敷に厄介になった。

 彼は言葉通り俺達を支援してくれるようだ。

 すぐに兵を派遣……仲間に関する情報を集めてくれている。

 そして……。


「頼まれていた装備はこれで全部だが良いのか?」


 そう口にする彼は心配そうだが……。


「ああ、十分だ」


 俺は剣や服を新調した……武器に関しては使い慣れた物じゃないから不安だが、精霊石の剣と同じ様に作ってもらった。

 服は着ていた物に似ているものだが、短いスカートの下に動きやすいようレギンス……いや、スパッツの様な物を履いている。

 勿論ただで貰う訳にはいかない。

 恐らく彼は恩人の為だと言いながら気にし無さそうだが、それでもだ。

 とはいっても今は手持ちの金がないんだよな。


「何かやる事は無いか?」


 俺が訪ねると彼は首を横に振る。


「…………いや、何も無い」


 そう言ってもくれるが、何も無いなんて事は無いだろう。

 遠慮しているのが見て分かる。

 何故なら、そう言うまでに少し時間があったからだ。

 俺は少し溜息をつき……。


「身体が鈍る、何でも良い何かする事は無いか? そもそも手伝ってもらってるのに何もしないってのは性に合わない」


 正直にそう言うと彼は迷うが……。


「では、近辺に魔物が出ている……それの退治を頼みたいのだが」


 と言って来た。

 それ位ならお安い御用だ。


「分かった、どの辺りの事なんだ?」


 すぐに行こうと思うが、場所を聞かずに行っても何も出来やしない。

 俺はまずは情報だと彼に聞く。


「ああ、街を出て西の方だ……小さな林と川がある。そこにどうやらトロールが来ていてな」

「…………」


 どうやら、トロールが……なんて悠長な事を言っている場合だろうか?

 この世界のトロールはオーク同じ豚の魔物だ。

 だが……オークのように賢くはない。


「それ、大丈夫なのか?」

「いや、非情に困っている」


 この世界にも家畜としての豚が居る……彼らはその豚を盗むのだ。

 そして、子を作りどんどん増えていく……生まれてくる子は豚ではなくトロールだ……。

 この近くに来たと言う事はこの街にも同然豚が居ると言う事だ……。

 つまり、トロールはそれを狙って来た。


「ぅぅ……」


 近場にトロールが居る、そう聞きファリスは嫌な顔を浮かべた。

 それも当然だトロールは目が良くない。

 俺達は家畜に関わっていないから特に問題はないが、匂いが付いてれば豚だと判断され連れていかれる。

 そうなれば当然……。


「被害は?」

「まだ、見かけたと言うだけで被害は出ていない、だが……」


 トロールはオークよりも力も強い、並みの兵じゃ歯が立たないだろう……。

 とんでもない魔物に目を付けられたな。


「分かった、なんとかしよう」


 俺はそう言うとファリスの方へと目を向ける。

 すると彼女は大慌てでぶんぶんと首を横に振った。


「ファリス?」

「トロール、嫌い……(にお)い……(くさ)い!!」


 涙目で訴えてくるファリス。

 とは言っても俺は実際にトロールと戦った事は無い。

 出会った事すらないからな。

 どんな魔物かは見てみないと分からない。

 だが……臭いのか……それは精神的にも辛いな。


「大丈夫なのか? あれは女性には特につらい魔物だぞ……(にお)いがな」


 貴族にも注意された。

 だが、そうは言っても倒さなければどうしょうもない。


「街が襲われるのよりましだ」


 そう言うと彼は随分長い所困った様子で考え事をする。


「確かにそうだ……非常に困っている……だが、しかし」


 何か不都合でもあるのだろうか?

 そういえば、トロールってなんか大事な事を忘れているような。


「お、おいキューラ? トロールは――」


 カインが引きつった笑みを浮かべながら俺の名を呼ぶ。

 なんだろうか? そう思いつつ……俺は思い出した。

 トロールはただ家畜や人を襲う訳じゃない。

 抵抗されないようにその体臭には興奮効果がある……しかも厄介な事にこの体臭は雄以外に効果がある。

 つまり、人……女性でも例外はなく……。


「…………ファリスは連れて行けないな」


 ファリスが嫌がっていた理由は臭いだ。

 つまり、生粋の女性である彼女は危ない。


「キューラ? お前もだぞ」

「え? いや、でも俺は……」


 そこまで言いかけて俺ははたと気が付いた。

 俺は確かに男だ。

 だが、今は女……もしかしたらトロールの体臭の効果があるかもしれない。

 そうなったら……無抵抗だ。

 それこそトロールには襲われないとしても……別の意味でエロ同人のようになってしまうだろう。


「…………なぁ、ノルン? もしかして……」


 そして、この貴族が困っている理由は……まさかと思い尋ねると……。


「ああ、この街の腕の立つ者は女性だ……とてもじゃないがトロール退治には向かわせられん」


 と彼は頷き言って来た。

 本当に困ったぞ……どうにかしたいが、どうすればいいんだ?

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