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251 魔王を目指す者VS勇者を名乗る者

 キューラは支配人を守る為、ファリスと共に勇者に立ち向かう。

 だが、その場では十分に戦う事が出来ない。

 キューラは場所を変えるのを提案し、勇者もそれを受け入れるのだった。

「ここなら大丈夫だろ?」


 俺は広場へと移動をし、勇者へと尋ねる。

 彼は周りを目にして笑う。


「お前の処刑場としては良い場所だな!」

「いや、処刑?」


 確か俺はお前に辱められるという話だったはずだ。

 殺すつもりなのだろうか?

 まぁ、良く分からんやつだな……だが、余裕はありそうだ……俺は余裕って訳じゃない。

 武器は無いし接近されたら終わり。

 ファリスも一緒に戦ってくれるのが心強いが相手は4人でこっちは2人だ。


「どうしたものか……」


 先輩達は当然の様に憲兵を呼ぼうとしていたが、流石にそれは止めた現状立場が悪いのはこっちだ。

 なんて言ったって相手は勇者。

 あんな理由があろうが丸く収めてしまって自分に有利な話にするのは得意だろう。

 その証拠にあの僧侶の子は怯えていた。

 何をされたんだろうか? 考えただけで虫唾が走る。


「…………」


 ファリスと言えば俺の事を性的対象として見たのがよっぽど嫌だったのか顔には笑みが張り付いているものの勇者をじっと睨んでいる。

 いや、俺を守ってくれるのは頼もしいし嬉しいが……。

 なんというか酷く情けないな俺。


「おい、小娘さっさと始めよう、それでお前が俺の腹の上で悶える姿を公衆の面前で晒せよ」

「…………殺す」

「いや、殺すな」


 変な事を言ってあまりファリスを刺激しないでくれ、押さえるこっちも大変だ。

 今は言葉を聞いてくれているがキレたらどうなるか分からない。


「んじゃ、戦いますか」


 俺はそう言いつつ周りへと目を向けた。

 いつの間にか人が集まってきている。

 その中には支配人と二人の先輩も居て心配そうに俺達を見ていた。

 だが、此処で引く訳にはいかない。

 さっき言ったように恩があるんだ。


「とは言ったものの」


 どうやって戦う? 俺は武器無し、相手は4人。

 戦士に僧侶に勇者……そして奴隷。

 戦い方は大体予想がつくが……だからこそどう動くのか分からないのが一人いる。

 奴隷だ……見た所武装をしている様子はない。

 戦士たちは表情こそは怯えている……だが予想通りの武器を構えてきた。

 奴隷である彼女だけは怯えているだけで武器を取りだそうとはしない。

 従者である以上、こちらに刃を向けてくる事だけは違いないが……。


 さて、ここで奴隷エルフについて考えられる要素は一つ。

 俺達、混血や魔族、人間と違いエルフとドワーフは魔法が使えない。

 だが、道具を作り出す能力に長けている。

 それが精霊石や鍛冶だ。

 そして、あの勇者が仲間に入れている理由……。

 あのボロボロの服に隠せるだろう武器。


「……銃しかないよな」


 相手が人間であれば殺すことなど用意な道具。

 服の中に仕込んでおけばバレやしない。

 人が多いこの状況では使えないから構えないのだろう。

 とするとどんな武器を使う? あの見た目で体術などは使えないだろう。

 剣も同じだ……だが銃は使えるはずがない……そう高をくくっていた。


「やれ、フィオ」


 勇者の言葉でびくりと怯えたエルフは戸惑ったような表情を浮かべた。

 そして、がたがたと震えながら後ろを振り向く……。

 どうしたんだ?

 疑問に思っていると勇者は奴隷エルフを見下すように見ている。

 すると一瞬大きく震えた少女は普通じゃない表情で……怯え切った顔で大粒の涙を流しながら服をまくり上げ、腿に隠してあった銃を手に取った。

 やっぱり銃を仕込んでいた! それは予想内だが……まずいぞ!!


「おい! 馬鹿!! こんな所で撃ったら!?」


 俺達に当たるのは勿論勘弁だ。

 だが、外れても誰かには当たる。

 焦った俺は――。


「逃げろ!!」


 周りの人間に対し叫んだ。

 だが……。


「どうせ脅しだろ? あの子がきっと勇者様に無礼な事を」

「見ろよ、あの子に銃が使える訳ないだろ? 大の男だって肩がいかれる事があるって聞いたぜ」

「逃げろって……あの子、何を言ってるの?」


 話を聞いてくれない。

 こうなったらあの子を止めるしかない。

 そう思うと同時に轟音が鳴り響いた。

 だが、俺やファリスには当たっていない。

 慌てて後ろを見るが誰かが倒れたという事は無い。

 外れたか? 辺りを確認するとどうやら地面に当たったみたいだ……ほっとしつつ俺は前を見る。

 やっぱりあいつは勇者なんかじゃない。

 ここに集まった人は少なくとも彼の敵ではないはずだ。

 なのに、それを危機にさらす。

 こいつは……勇者を名乗る資格なんてない!!


「ファリス!! エルフの子を黙らせる!! 必要以上の怪我をさせるな!!」


 難しい注文だ、だがそうしなくちゃいけない。

 俺は勇者クリエの従者だ。

 なら、この場で必要なのは死人を出さずこの場を沈黙させる事。

 あの偽物はどうでも良いが、彼の従者であろう3人は無理矢理連れてこられているのだろう、怯え方が尋常じゃないしな。


「…………難しい」

「分ってる、でも頼む……」


 俺がそう言うとファリスは困ったような表情を浮かべつつ鎌を構える。


「それがキューラ様の望む事なら」


 また様付けになってるな。

 それは止めて欲しいんだが……今はそれどころじゃないか……。


「やるぞ!!」


 俺に武器は無い、だが魔法ならある。

 相手には混血すらいない、夜目が効かないなら俺達は暗闇を作れば勝てる!!

 だが……視界を奪えばエルフの子が困惑し銃を乱射するかもしれない。

 俺達に有利な状況……暗闇を生み出す魔法を使うにはまずはあの子を黙らせないとな。

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