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248 勇者?

 メイド服に着替えたキューラ達。

 宿での仕事を始めていくのだが、まずはその態度を直せと言われてしまう。

 その日の夜……キューラ達は宿の支配人と再び出会い。

 明日勇者が来るという事を知る。

 しかし勇者はクリエだ。

 一体どういうことなのだろうか?

 どういう事だ?

 俺は去っていく支配人を見送りつつ疑問に思う。

 今代の勇者はクリエだ。

 それ以外には居ない……だが、支配人が嘘をついている様には見えなかった。

 寧ろそんな嘘をついてどうなる?


「勇者かぁ……どんな人なんだろうね?」

「きっと素敵な人なんですね、だって勇者ですから」


 メアリーとエウレカは笑みを浮かべながら会話をしているが、そんな中ファリスが俺の服の裾を引っ張って来た。


「ファリス?」


 俺は彼女の名を呼ぶとファリスは首を横に振り始める。

 勇者のはずがないという意味だろうか? 俺もそう思うし首を縦に振る。

 すると……。


「二人共どうしたの?」


 メアリーが俺達の様子に疑問を抱いたんだろう。

 首を傾げて訪ねてきた。


「あ、いえ……」

「あ、分かりました冒険者でしたよね? だからきっと勇者に憧れているんですね?」


 エウレカは両掌を合わせころころと笑みを浮かべるとそんな事を口にする。

 いや、違う。

 違うんだが……この勘違いは今はありがたい。


「そうなんです、ですけど奇跡の力で世界を救う勇者に憧れるなんて……お……私には贅沢な……」


 そう口にするとメアリーは首を傾げたまま。


「確かに奇跡って何でも叶えてくれるって話よね? でも……なんか、こう……何時までも助けてくれるのかな? って不安になる事無い?」

「…………はい?」


 俺は思わず聞き返してしまった。

 この世界の住人は勇者の奇跡……その本質に気が付いてない。

 そう……貴族や王族を除いて……。


「確かに別の先輩達も何人か話してましたね? こう何度も人同士で争っていたら、神様が呆れて勇者は平和を保つためではなく、ううん私達平和を乱す人間達を裁きに来るんじゃないか? って……」

「それも今まで神の国に戻った歴代の勇者も全員この地に舞い降りてって話だったわね」


 二人は不安そうにそう話す。

 なるほど、この様子からだとやっぱり奇跡の本質には気が付いていない。

 だが、噂話程度にはこの世界にも勇者の力に疑問を抱き、不安がる人間はいる様だ。


「二人はどう思う?」


 そんな風に尋ねられ、俺は黙り込んでしまった。

 分からない、なんて口に出来ない。

 恐らくではなく、確実にいつか世界を滅ぼすために力を使う勇者が現れるだろうと思っているからだ。

 逆に今までの勇者の行動が分からない。

 大切な者のため? この世界のため? 理由はどうであれ彼らは自分が死ぬ事を知っていたはずだ。

 クリエは怖がっていた……なのに王貴族はそれを強制している。


 いくら人質を取られていても反発する者がいなかったいや、消されていたのだろうか?

 とにかく何も答えられない。


「……わからないよね」


 沈黙を答えと受け取ったのだろうメアリーはそう言うと――。


「仕事に戻ろう?」


 と言うのだった。





 それから一日は忙しいせいもあってあっという間に過ぎていく。

 夜はあてがわれた部屋で寝られるみたいだ。

 仕事を教えてくれた先輩、メアリーとエウレカ、そしてファリスと同じ部屋……。

 普通だったら緊張するか拒否していたはずだが、立場と考えごとがあり、俺は素直にベッドの上で横になっていた。

 しかし、寝られない。

 瞼を持ち上げると真っ暗な部屋が映る。

 明日来る勇者。

 それは一体誰だ? クリエは捕まった。

 もうすでに奇跡の力も無い……彼女を勇者と奉るのは無理があるだろう。

 寧ろ彼女の利用価値は世界への反乱分子である俺達をあぶりだす事だけだ。

 それの為に偽りの勇者を作り旅をさせる。

 俺が生まれたのがここではなく、別の異世界ならそれが出来たかもしれない。

 だが、この世界にはそれが無理だと言い切れる。


「…………勇者の見た目」


 俺は小さな声で呟いたが、この世界の勇者……神の子は金色の髪、金色の瞳を持つ者の事だ。

 だからこそ、偽ることが出来ない。

 だが、支配人は確かに勇者と呼んだ。

 この街も名もなき街と同じように勇気ある者を勇者と呼ぶ線はあるかもしれないが、可能性としては低い。

 なら、勇者がもう一人居たと考えるのが有力的か?


 絶対に一人しかいないとは限らないし、もしかしたら何人か居るのかもしれない。

 そう思いつつ、俺は再び瞼を閉じるのだが、やはり……寝付けない。

 そんなこんなでうだうだしていると朝が来た……。


 果たして、ここに来る勇者とは誰だ?

 そして、その勇者は本当に勇者で……何の目的の元に旅をしている?

 それだけじゃない、もし……もしも俺達人間に愛想をつかしていたら……。

 それこそ、魔王の誕生だ。

 流石に普通の魔王なら何とかなるとしても奇跡の力に逆らう手段は生憎知らない。

 この世界において最強最悪の魔王が……生まれそして世界と人間と共に滅びる。

 そんな事になるかもしれないんだ。

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