242 森へと向かおう
キューラとファリスは小屋での朝を迎える。
だが、このままで過ごせるわけがない。
危険かもしれないが街へと向かう事を決意したキューラはファリスと共に歩き始めるのだった。
俺達は森を目指し歩き始める。
といってもまずは街道を探さないといけないな……。
その方が人に会える確率が高くなるからだ。
「ファリス疲れてないか?」
俺は一緒に歩くファリスへと声をかける。
すると彼女は頷いて……。
「大丈夫」
笑みを浮かべた。
しかし、疲れてないなんて事は無いだろう。
早く街道に出てくれると良いんだが……俺は焦る気持ちを抑え歩く。
すると遠くに見えていた森が大分近づいて来ていた。
「あ……」
ファリスはある一点を見つめ表情を明るくした。
どうしたのだろうか? そう思いながら彼女の視線を追う……そこは森へと真っ直ぐに向かうには離れた場所だ。
だが……。
「街道だ!」
そう俺達が求める街道がそこにはあったのだ。
「行こうファリス!!」
街道であれば他に人も歩く可能性もある。
それだけじゃない、馬車だってとおるかもしれない。
そうなれば街に行ける可能性は高い。
「うん!」
ファリスは笑み浮かべて俺の手を取って来た。
勿論、俺は彼女の手を握り返す。
この子は俺が守ってやらないといけない。
ファリスもクリエと同じだ……俺が守ってやらないといけない。
「今日中に街に着けると良いんだが」
流石にそれは無理だろう、だけど街道が見えた事で少し気が楽になった。
「がんばる!」
俺の言葉に片手を握り可愛らしいガッツポーズをとるファリス。
そんな彼女を見るとどこか気が休まる気がした。
もし一人だったら、俺はここまで来れただろうか? そんな事を思いつつ、ファリスの頭を撫で……。
「無理はするなよ?」
「うん!」
何度目かになる忠告にファリスは首を縦に振った。
そして、えへへと笑うと……。
「キューラお姉ちゃんは優しい……」
と嬉しそうに言って来た。
そうだろうか? そう思いつつ彼女の嬉しそうな笑みを見るとこちらも元気付けられる気がした。
「よし、もう少し街道に近づいてから食事を取ろう」
食事、と言っても昨日手に入れたマズイ林檎だが……無いよりはましだ。
「う…………うん」
だが、ファリスはあの林檎が嫌いなようで食事と聞いてピタリと止まった。
かと言って何も食べない訳にはいかない、そう思ったのだろうぎこちなく頷いた。
「仕事を見つけて金が手に入ったら美味しい物を食べよう……それまでの我慢だ」
「わ、わかった」
今度は割と早く答えたファリスは我慢我慢、と呪文のように唱えるのだった。
なんか、悪い事をしている気がするのは気のせいだろうか……いや、同じものを食べてるんだし気のせいだよな?
そう思いつつも俺は歩き続け……。
街道に着いた所でファリスと共にマズイ林檎を齧る。
空腹は多少満たされるもやっぱりまずい……。
「…………ぅぅ」
そして、ファリスもがっくりとうなだれ唸りながら林檎にかじりついている。
ああ、なんか本当に悪い事をしている気になって来るな。
「美味しくない……」
そして、小さな声でそう呟いたファリス。
それに対し何も言う事は出来なかった……事実この林檎は美味しくない。
恐らくライムでも吐き出すぐらいまずいだろう。
早くまともな食事にありつきたいものだ。
「我慢しよう……」
俺はそうファリスへと伝え、ファリスはこくこくと力なく頷いた。
それから暫くその場で休息を得た俺達は再び歩き始めた。
すると、後ろからガラガラと言う音と馬の歩く音が聞こえる。
振り向いてみると……。
「馬車か……」
乗合馬車がこちらへと向かって来ていた。
これは都合が良い、これで街の場所が分かる……そう思っていると御者は俺達に気が付き。
「おや、お嬢さん達姉妹で旅の途中かい?」
姉妹? はて……俺の瞳を見れば姉妹だとは思わないはず。
そんな事を考えていると……御者は俺の顔をまじまじと見ている。
「お姉さんの方はその右目どうしたんだ?」
「へ?」
右目? どうってなにもしてないが……疑問に思いファリスの方へと目を向けるとファリスも心配そうに俺の顔を見てくる。
だが……すぐに首を傾げた。
「どこが、変なんだ?」
俺は疑問を浮かべつつ御者に尋ねると彼は一瞬驚いたような顔を浮かべ目を擦る。
「すまない、見間違いだったみたいだ……それとなるほど魔族と混血の子だったのか……こんな所で武器も持たずに何をやっているんだい?」
「ああ……街を目指してるんだ武器は寝ている内にゴブリン達に持っていかれたみたいでさ……」
俺はそう告げる。
本当は武器を取られたままなのだが、それは言う必要はないからだ。
「なら乗っていくかい?」
「いや、その……金も盗られててな」
流石に無賃乗車は出来ないだろう、そう思っていると彼は気のどくそうな顔を浮かべ俺達を見ると……。
「いや、乗ってってくれ、君達みたいな女の子達をほおっておいたら商売の神であるケート様にも怒られるに違いない、商売とは信用信頼! 客もいるこの状況じゃ見捨てる事なんて出来ないよ」
と後ろを指差しながら笑うのだった。




