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23 キューラ、王都を歩く

 不思議な夢を見たキューラ。

 それは彼に魔族の男性が何かを語りかけて来るのだが、何を言っているのかは分からず。

 次第に意識ははっきりとしていく……

 彼が目覚めるとクリエは一晩中起きていた様で、彼女を一人にしたことを反省したキューラは寝るように伝えるのだった……

 クリエは温かいスープの所為だろうか?

 眠気に襲われようで大人しくベッドへと潜り込んだ。

 すやすやと寝息を立てる彼女は美人だけあって見惚れてしまうほどだ……っとそうじゃないな……

 俺は羊皮紙に書置きを残し、身なりを整えると机の上に乗っかっているライムへと目を向ける。


「のぼせてた時はライムが頭に乗ってくれても良かったんじゃないか?」


 ライムにそう聞いて見るが、スライムである彼? はただプルプルしているだけだ。

 まぁ、何を言っても仕方が無いか……


「行くぞライム」


 俺が手を伸ばすとライムは飛び跳ね肩へと乗っかってきた。

 そう、これから俺は出掛ける事にした訳だ。

 クリエが体調不良と言う事を一応は王様に伝えなければならないだろう……かと言ってそれを本人にやらせる訳には行かない。

 問題は急用で無理に空けてくれたであろう時間を無駄にしてしまう事なんだが……

 大丈夫だろうか? いや、話してみないとどうなるか分からないな。


「とはいえ……」


 クリエは寝れない程、怖かったんだろう……

 その時に起きていられなかったのは従者として情けないな。

 せめてものお詫びという訳じゃないが……王様は俺の話を聞いてくれるだろうか? ま、従者の証があるんだ。なるようになるだろ。


 俺はそう考えると部屋を後にする。

 女の子が中で寝てるんだ鍵は閉めておこう……


「さて、と……」


 外へと出た俺は宿の前にある街の地図へと近づく――


「城、城はっと……」


 なるほど、宿を右、大通りを出てから真っ直ぐに行けば城か……近くて助かった。

 これならすぐに戻れそうだ。

 帰りに何か美味しそうなものでも土産に持っていくか……


「ん?」


 なんだ? 大通りに出たらやけに視線を感じるな。

 不思議に思い辺りを見回してみると、露骨に視線を泳がせる人が多い。

 一体どうしたんだ? 今は特に証を見せている訳でもない……

 いや、ライムか! 確かスライムの使役は前例が無いって言ってたからな。


「まぁ、目立つぐらいなら良いか」


 別にコソコソする必要なんてない訳だしな。

 それよりも急いで城に……っと思ったんだが……

 注目浴び過ぎじゃないか? ライムよ……

 俺は未だ注がれる視線に困り果て肩に乗るライムへと目を向ける。

 当然そこには何も考えていないんだろう震えている魔物が居る訳だが――


「全く、留守番させておけばよかったか? いや、でも一緒じゃないとなぁ……」


 街に入る前に言われてしまったのだから、もしばれた時の為に……

 いや、それならクリエの護衛って事でおいて来ればよかったのか? ともかくもう連れだしてきてしまったんだ。

 城に行ってすぐに帰ろう、土産は……諦めるか、流石にこの中で買い物をする勇気はない。


「そこのスライム連れたお嬢ちゃん!」


 とか何とか考えていたら早速声を掛けられた。

 無視するか?


「そこのスライムを連れた可愛いお嬢ちゃん! こっちこっちだよ!!」


 うわぁ、これは立ち去ろうとしてもずっと叫ばれてさらに注目を浴びるパターンか……

 面倒だなっと思いつつも俺は声の方へと目を向ける。

 そこには満面の笑みのおっさんが居て――


「いやぁ偶然運が良いね! どうだい一つ」


 そう言って差し出して来たのは串に刺さった肉だ。

 看板から察するに鳥だろう、つまり焼き鳥だ。

 それなのに近づかないと匂いがしないってのは勿体ないな、声を掛けられなかったら気が付かなかった。

 しかし、焼き鳥か懐かしいな……と思いつつ俺は値段を見てみる。


「いや、いい……さっき朝飯を食べたばっかりなんだ」

「そう言わずに美味しいからコレ! この墨の香りがたっまんねんだよなぁ~」


 そう言って差し出して来た焼き鳥にかぶりつく店主。

 おいおい、商品食べてちゃ儲かんないだろうが……


「うん、旨い! どうだ、一本! ほらその可愛い顔でかぶりついて小鳥の様な綺麗な声で旨いって言ってくれよ、な?」

「美味いんだろうけど、あいにく今腹がいっぱいだ。それに用事があるんでな……悪いが他を当たってくれ」


 ここまで買わない理由は別に腹がいっぱいだからじゃない、実は他にあって、値段を見たら高すぎなんだよ……

 一本7ケート、普通の食事が大体15ケートだぞ? その見た目と大きさなら2~3ケートぐらいが妥当だろうに……


「そ、そんな事言わないで、な?」


 そんなに必死に引き留めるなよ。

 まぁ、恐らくは売れなくて俺を売り子に使いたいんだろうけど……


「はぁ、俺に商売の手伝いをしろって言うならまず工夫しろ……まずそれは良い匂いだ。空腹の人を釣る為にも匂いを通りに漂わせるようにして値段は2~3ケートにした方が良い」

「2、3ケート!? 冗談じゃない!! ただでさえ売れないのに!!」


 そりゃ、売れないだろ……焼き鳥何てこの世界では初めて見たし……何より高い。


「だーかーらー、匂いを漂わせるんだよ、美味しそうな匂いがあれば客は勝手にやってくる。だが言っておくが、いくら匂いで釣ったり、俺が食べた所でその値段じゃ売れないぞ、他の店じゃ15ケートで腹一杯食えるんだからな?」


 店主へとそう告げると彼はがっくりと肩を落とした。


「せ、成功すると思ったんだ……」

「いや、実際その鳥肉を串に刺して炭火で焼くってのは悪くない、むしろこのまま売れない方がもったいない商品だろ、だったら今俺が言ったの試してみるのはどうだ?」

「はぁ…………」


 いや、そこまで落ち込まれると罪悪感しかないんだが……


「と、とにかく、俺は急ぐからな?」

「は、はい……毎度ぉー」


 言い過ぎた、か……しかし、この世界でも焼き鳥はぜひとも食べてはみたい。

 とはいえ、7ケートじゃなぁ……高すぎるんだ。

 それを好んで買う貴族も居ないだろうし、あの店主が考え直して俺の言った事を試してくれると良いんだが……

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