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俺は百合勇者の従者にならざるを得ない……  作者: ウニア・キサラギ
10章 勇者《魔王》として
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228 脱出!

 キューラ達は牢屋に捉えられていた。

 それを予測してかイリスは自身の技術を売り、牢の外へと出た。

 しかし、彼女一人では鍵を見つけキューラ達を助けるのは無理だろう。

 キューラはそう思い、脱出の策を考え……。

 実行に移したのだった。

 大きくなったライムはヘレンを連れ去るとこちらへとよじ登ってくる。

 だが、広場には混血や魔族が居る。

 当然の様に魔法を唱え始め……。


「っ!!」


 まずい……そう思った瞬間。

 銃声が鳴り響き……俺はハッとする。

 誰かが撃たれた!? そう思うも目に付いたのは騒めく人々。

 どうやら、威嚇射撃だったようだ。

 だが、そのお陰で詠唱が止まった。


「今の銃声……」


 クリエは俺を支えながら疑問を含んだ声を発する。

 そして、彼女はゆっくりと窓の外を見回し……。


「居ないですよ?」


 彼女は誰が居ないのか名前は言わなかった。

 だが、それは俺にも分かる事だ。


「何処からか俺達を援護してくれてるんだ!」


 そう確信した俺は下の階から飛び出したイリスを確認する。

 彼女もまたライムに掴まり……いよいよその大きなスライムは此方へと辿り着こうとしていた。


「よし!!」


 このまま事が順調に進めが良いが……。

 そう思いつつ、俺はライムが来るのを待ち。


「キュ、キューラさん!? ここ個これは一体!?」

「話は後だ! そのままじっとしてろ!」


 ライムが鉄格子を壊してくれるとすぐにクリエに連れられライムの体の中へと飛び込んだ。


 溶かされる。

 普通ならそう思うだろう……そうじゃなくとも息が出来ない。

 だが、ライムは賢い……溶かすことはせず、息が出来るように顔だけは出させてくれている。

 しかし、相手は大人しく俺達を逃がすつもりなんてないんだろう。

 再び魔法を唱える者達。

 と同時に鳴り響く銃声……今度は混血の魔法使いが撃たれその場に倒れた。

 間違いない……どこかで彼女が俺達を守ってくれている。


「今の内だ! ライム!!」


 俺がそう言うと使い魔であるライムはプルプルと震えながらゆっくりと進んでいく。

 流石に早く動くことはできない。

 だが、それでもこの大きさだ……その分移動距離が長い。


「か、身体中にまとわりついて気持ち悪いです!?」

「が、我慢してくれって――ひぁ!?」

「ひゃん!? いま、今変な風に動いた!?」

「うへ、うへへへへ……ライムちゃんにまとわりつかれるキューラちゃんも良いですね」


 イリスとヘレンはまともな反応だと思うが、クリエ? こんな時まで何を考えているんだ君は……。

 って俺もそんな事を考えている場合じゃない。

 追手は……来てるっと言っても流石にライム相手じゃ混血や魔族ぐらいしか来ないな。

 だが魔法を唱えられたら一巻の終わりだ。

 どうにかして、魔法を止めなきゃならないんだが……俺は今魔法を使えないし、都合よく使えそうな物が落ちている訳もない。

 トゥスさんが何処からか援護してきてくれているが、それも限界はあるだろう。


「ライム! 身を隠しながら進むんだ!」


 と言ってみたは良いが人四人を運ぶライムは池の水を吸って大分大きくなっている。

 見つからずに移動なんて芸道はまず出来ないだろう。

 それに進む速度だ。

 これも大きさの分早くはなってる……が、その速度自体は変わっていない。

 ややこしい話だが、追いつかれるのも時間の問題だ。


「ヘレン! 魔法で援護を頼めないか!?」

「そんな器用な事できませんよ!?」


 器用って……ただ魔法を唱えてもらうだけなんだが……。


「ただでさふぇ!? 変な感じですのに!?」


 ああ……確かに集中力が無くなるな。

 こうなるとヘレンの魔法には頼れない。


「イリス、銃は持ってないか?」

「無理だよ!? だってぬるぬるがぬるぬるが!!」


 イリスは銃を持ってるのか? それとも持っていないのか答えはしなかったがやはりライムの身体から与えられる刺激が気に入らないのだろう。

 というか、俺自身も全身に受けるのは初めてだし実際いい気分ではない。


「えっと私が魔法を……」

「駄目だ!」


 そんな中唯一平気そうなクリエが提案をしてきたので俺はすぐに却下する。

 理由は簡単だ。

 クリエは魔法を使えない、もし使えばその命に係わるかもしれないからだ。

 だが、他に方法も無いんだよな……とはいえ、使えるかどうかも分からないクリエではリスクが高すぎる。


「ライム、悪い……耐えてくれ」


 いくら弱点と言っても一発でライムを仕留めるには上位の魔法じゃなきゃダメだ。

 それが使える人間は稀……今追って来てる奴にその稀な奴が居ない事に欠けるしかない。

 かと言って、効果が無いわけじゃないんだ……。

 ライムには辛い思いをさせる事になる。

 そう思った矢先……。

 ライムに一本の氷の矢が突き刺さり、痛みに悶えたライムの身体は凍っている部分が千切れた。


「ライム!!」


 俺がライムの名前を叫ぶとライムは懸命に前へと進む。

 くそ、俺は主人だというのに……こいつに何もしてやれないのか?

 そんなもどかしさを感じつつ次は来ないようにと願うしか俺にはできない。

 魔法さえ、魔法さえ使えれば……ライムを守ってやれるのに……。

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