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俺は百合勇者の従者にならざるを得ない……  作者: ウニア・キサラギ
10章 勇者《魔王》として
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221 消えた二人

 ヘレンの近くに居るであろうクリエ。

 彼女へとドールを使い連絡をしようとしたキューラ。

 しかし、彼女とは連絡が取れなかった。

 不安を感じ、トゥス達へと連絡をしたキューラはヘレンの部屋へと辿り着くが……。

 もうすでにそこはもぬけの殻だった……。

 屋敷を飛び出して来たのは良いものの、二人は何処に行ったのだろうか?

 俺は闇雲に探すなんて言う愚かな真似はしない。


「すみません!!」


 道行く人にクリエの事を聞けばわかるかもしれない。

 彼女は目立つからな……勇者だし、似ている人がというのはあまりないだろう。


「な、なにかな?」


 振り返って来た男は俺の顔を見るなりへにゃりと表情を崩す。

 だが、そんな事は気にしていられない。


「その、勇者を見なかったか? 何処に行ったか探しているんだ」

「……勇者? 何だって呼んだかい?」


 いや、お前じゃない。


「いや、だから金髪で金色の瞳、正真正銘の勇者だ」

「……ああ、そっちか……分からないな」


 いや、他に何があるんだよ!? 他の勇者ってなんだよ!?

 寧ろ聞きたいって……だが今はそんな心の叫びは飲み込み……。


「引き留めて悪かった!」


 俺はその場を去ろうとする。


「ちょっと待って、ほら、言うことあるんじゃない?」

「……ああ、悪い、ありがとう!!」


 俺は礼を言っていなかった事を思い出し、慌てて告げると走り出そうとした。

 しかし、彼は俺の腕を掴み、危うく倒れそうになった。


「違うって、ほら……俺ってかっこいいだろ? 勇者だのなんだの嘘ついて本当は話しかけたかったんじゃない?」

「……何言ってんだ? こっちは急いでるんだ! 引き留めたのは悪いけど手を離せ!!」


 一体なにがしたいのだろうか? だが、かまってやる時間はない!

 俺はそう思いながら従者の証を見せる。

 すると浮かんだ証を見て男は青い顔になり……。


「あ……ああ? ほ、本当に従者? 勇者の!?」

「だから、そうだって! 急いでるんだ……手を離してくれ!!」


 ナンパ野郎に時間を取られている訳にはいかない。

 今重要なのはクリエ達が何処に行ったかだ……。


「す、すみませ……」

「本当に見てないんだろ? 時間を取らせて悪かった!」


 俺はそれだけを伝え再び走り出す。

 今回は手を伸ばしてこないという事はどうやら緊急事態だという事を理解してもらえたようだ。

 だけど、一体何処に居るんだ二人は……!


 俺は辺りを見回しながら走るがクリエ達らしき影は見つけられない。

 まさかもう手遅れに? いや、奴らにヘレンはともかくクリエを殺すメリットはないはずだ。

 なら、どこかに彼女は連れていかれ、監禁されている?

 何のために?

 いや、そんなのは分かり切っているか……クリエを捕まえる理由。

 そんなのは……自分達が生き残る為に彼女を犠牲にする他ない。

 まだ、攻めて来てはいないものの新しい魔王が敵だというのは分かりきっている。

 今のうちに……なんて考えてもおかしくはないんだ!!


 つまり、クリエが絶対無事という事はないだろう。

 俺は焦る気持ちを抑えることが出来ずに走り――。


『カァー!!』


 その鳴き声を聞くなり、空を仰ぐ。


「レムスか!!」


 俺の元へと舞い降りてきた大きな烏は翼をはためかせると再び飛んでいく……クリエ達を見つけたんだろう。

 助かった……そう思いながら俺はレムスの後を追い……。


「ここ……か……?」


 辿り着いた場所は旧市場の古い建物の前だった。

 

「レムス、トゥスさん達を呼んできてくれ」


 俺はレムスへとそう頼み、彼が去って行くのを見守ると家を睨む。

 此処にクリエ達が居るのか?

 だが、どうやって入る?

 正面から突破するのは簡単だ、だがそれはあまりにも馬鹿正直すぎやしないか?


「って言っても窓から入ったら音でバレるな……」


 そう呟いた俺は扉へと手をかけ、ゆっくりと家の中へと入っていく……。

 家の中は暗く、人の気配がしない。

 本当にここにクリエが居るのか? そう思いつつも家の中を進んでいくと奥の部屋から光が漏れていることが分かった。

 人が居た……いや、本当に人だろうか?

 疑問を浮かべつつ部屋の中の様子を窺うと……。


「…………」


 何やら話声が聞こえ、その声は聞きおぼえがある。

 カミアだ……。

 此処で間違いがない! 後はどうやって二人を探すか、だが……。


「どうやらちゃんと誘導をしてくれた。みたいだな」


 そんな声が聞こえ、俺は何の事だろうか? と首を傾げる。

 次の瞬間扉は開け放たれ……。


「っ!?」


 部屋の中から現れた両目が赤く染まっているロッシュはニヤリと笑う。


「なっ!?」


 突然の事に声を失っていると、彼の後ろの方に鎖でつながれぐったりとしている二人の女性を見つけた。

 クリエとヘレンだ……。


「お前――!!」

「本当に馬鹿な子供だ……だが、お蔭で良い商品と客が付いた」


 ロッシュは魔族だった? どうやって瞳の色を隠していた!?

 分からない、分からないが……こいつはやっぱりカミアとはぐるだった様で彼女は豪華な装飾の椅子に座りこちらを見下すように笑った。

 くそ! 最初から……はめられていた!?

 ロッシュについて、彼女が信頼しているからと勝手に信用するのは間違いだったんだ……!

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