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俺は百合勇者の従者にならざるを得ない……  作者: ウニア・キサラギ
10章 勇者《魔王》として
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218 領主とキューラ

 ヘレンの父ルーシェは毒物を仕込まれていた。

 その事が事実になったのだが、すぐに回復する事は無い。

 そう思ったキューラは警護を続けていたのだが……。

 いつの間にか寝てしまっていた。

 起きると彼らはおらず焦るキューラ……。

 しかし、どうやら起きた後職務室へと向かったらしく、キューラも向かうと彼らに礼を言われるのだった。

 見た目も性格も全く違う。

 だというのに何故両親に重ねてしまったのか疑問だ。

 だが、一つ分かった事はある……。


「いいですか? 無茶はしない事……」

「分ってる」


 この二人は優しいという事だ。

 民を護ろうとしていたのは本当なのだろう……。

 これでクリエの身を本当に案じてくれているなら、手を貸して良かったと思える。

 だが、まだ分からない。

 嘘をついている可能性がある……疑いたくはないが、クリエの命がかかわっている以上、安易に信じる事は出来ない。


「それと、一つお願いがある」


 だが、それと同時に姉の方カミア。

 彼女を探し出し対処をしなくちゃならない。

 戦うのか、それとも牢に閉じ込めれば良いのか、まだ迷ってしまうが……。

 恐らく、殺すしかないだろうって事は頭にある。


「なんですか?」

「まず、客人は胸元を確認するようにして欲しいんだ。相手はゴーレムを使う、そのゴーレムは証である魔法陣が胸にあるんだ」


 そう言うとソアラは深くうなずき。


「分りました、その様にしましょう」


 相手という言葉が誰を指すのかはもう分かっているのだろう、一瞬瞳が揺れたのが分かった。

 だが、こうなった以上何も言えないのだろう……彼女はしっかりと前を見据えている。


「…………」


 そんな彼女を領主であるルーシェは心配そうに見つめていた。

 俺は……。


「出来る限りの事はする。だけど、期待はしないでくれ……」


 俺は、二人を見ていたら再び両親が重なり、自然とそんな言葉が出てしまった。


「……はい」


 泣きそうな声で返事をしたソアラ……。

 そんな彼女を見て母は元気だろうか? と疑問に思う。

 それに、家族の元へと送ったファリス……彼女の事も心配だ。

 もう母達を見ても牙をむく事は無いだろうが、彼女を狙う敵も居るだろう……。

 だが、それでも彼女を故郷へと送った理由は安全だからだ。

 その上、ファリスは強い、きっと何があっても母達の助けになってくれるだろう。

 そう、思っていたが……。


 心配になって来たな。

 手紙ぐらい出してやるか……。


 俺はぼんやりそんな事を考えたのだった。






 キューラが領主達と話している……同時刻。

 一人の女性は暗い部屋の中で爪を噛む。


「どうして戻って来ないんですか!?」


 怒鳴った先には虚ろな瞳の人形たちが居り、彼らは何も答えない。


「ああ、もう!!」


 彼女は苛立ちを見せ……辺りにあった物を人形へと投げつける。

 彼らは逃げる事もせず、それを甘んじて受けると、傷口からは何も出てこなかった。


「荒れているな」


 そんな中、姿を現したのは一人の影……。

 男性らしき影はゆっくりと女性へと近づき……。


「どうした?」


 と女性へと尋ねるのだった。





 俺達が屋敷の警護についてから二日。

 一つ気になる事がある。

 異常なまでにカミアは尻尾を見せないのは此方を警戒してるのだとしても……爺だ。

 彼はあれから姿を見せていない。

 まさか、とは思うが……。

 いや、あれだけ強い爺さんだ。

 一度相手の手口を見ている以上、そう簡単に殺されるって事は無いだろう。


 ならなぜ戻って来ないのか?

 疑問は残るが……一つ考えた事は……このタイミングで姿を消す理由。

 まさか、まさかとは思うが……。


「…………そうなると最悪の状況だな」


 食事の際にぼそりと呟いた俺、するとクリエは心配そうな顔を浮かべて顔を覗き込んできた。


「キューラちゃん?」

「あ、いや…………大丈夫だ」


 まだそうとは決まった訳ではない。

 なら、変に不安がらせるのも良くないだろう……。

 そう思って俺は言葉を濁す。

 だが、トゥスさんは――。


「大丈夫って顔じゃないね……それになにか気になる事があるなら行った方が良い、対処が遅れてからじゃ意味がないと思わないかい?」


 厳しい口調でそう言われ、俺はせき込んでしまった。

 確かにそうだ。

 だが、確証がない……とはいえ、トゥスさんが言っている事もは最もで最悪の状況を考え、動くのは大事だ。

 俺はそう考えを改め直し、ゆっくりと口を動かす。


「爺さん……ロッシュがまだ戻ってない。彼は今何をしている?」


 俺はヘレンへと尋ねると彼女は首を横に振り……。


「分りません」


 とだけ答えられた。


「……最悪、ロッシュの爺さんは殺されているかもしれない。いや、元から敵だったって線もある……」


 俺は考えていた事を口にし……。


「今後はあの爺さんの動向も見張った方が良いかもしれない」


 とは言ったもののもし対峙するような事があれば、どう戦えば良いのか分からない。

 俺はあの人に勝てるイメージがわかないんだ。

 そう、あの時の闇商人のように……どう考えても軽くあしらわれるような気がしてならない。

 この嫌な予感が当たってくれなければ良いんだけどな。


 そう思いながらスープへと口をつけると……。


「ロッシュは信頼できる人です」


 ヘレンは声を震わせそう口にした。


「……分かってる、だけど今この場に居ない以上、彼が何をしているのか俺達は誰も分からないんだ」


 彼女の心情は何となく分かる。

 信頼できる人を悪く言われ気分は悪いだろう……。

 だが、今言った通りこの場に居ない以上何が起きてもおかしくはない。

 俺のその言葉を聞くとヘレンは黙り乱暴にパンを千切ると口の中へと放り込んだ。

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