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俺は百合勇者の従者にならざるを得ない……  作者: ウニア・キサラギ
10章 勇者《魔王》として
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216 寝込む領主

 レムスにイリスを見守るよう命じたキューラはヘレンの両親の所へと向かう。

 寝たきりの父親は今は大人しいが時折暴れ出すとの事だ。

 彼はゴーレムなのか? 怪しいと思いつつ胸を確認するが、そこには魔法陣は無く……。

 ゴーレムではない事を証明するのだった。

 元通りにした後俺は部屋の中で少し考え事をしていた。

 まず、両親共々ゴーレムではない。

 これはヘレンも喜ぶだろう……朗報だ。

 次に、気になった事である小さな傷……。

 俺はにじみ出ていた血を布でふき取ってやったんだが……これが更なる疑問を生んだ。


「色が……違う、のか?」


 何処か変な臭いがし、鉄臭いという訳ではない……。

 だが気になるのはその色の方だ。

 布にふき取るとどこか薄いように感じるのだ。

 それまでは気が付かなかったが……これは一体?


「うーん?」


 体調不良と何か関係があるのか?

 それに、変な臭いと言ってもそれほど不快ではない。

 腐っているとかではないのか? そもそも腐ると血って薄まるのか?

 俺は医学とかそういうのには詳しくないから分からないが……。


 血が薄まる……とはいえ、水分をたくさん飲んだようには見えない。

 そこにあるのはコップ一杯位の水だ。

 なら、飲み過ぎて薄くなったわけではない。


「まさか、そんな毒でもあるって言うのかよ?」


 俺はそう呟き……。

 頭の上に乗っていたライムを降ろす。

 はっきり言って毒とかそう言う物には疎い俺だが、これだけは分かる。

 セージスライムのライムであればある程度の毒物は除去できる。

 そうじゃなくても症状が軽くなるはずだ。


「ライム、少しポーションを分けてくれないか?」


 ポーションと言ってもライムには分からないだろう。

 だが、俺が何を求めているのかは分かるはずだ。

 そう思い口にした俺は机にライムを降ろし、水のみを差し出した。

 するとライムは触手のように体を伸ばし、水の中へと身体の一部を入れる。

 じわじわと色が変わっていく水はあっという間にライムと同じ色になった。

 これがセージスライムのポーションだろうか?


 スライムに毒は無いのだし、試しに飲ませてみよう……。

 とは言ったものの、起きてくれないと飲ますことは無理だな、下手に飲ませて窒息でもさせたら事が事だ。

 彼が起きている時を見計らって飲ませるしかないか。


 そんな事を考えながら俺は部屋の中を見回す。

 貴族ってのは煌びやかな部屋に居る物だと思ったが、服装こそ貴族と分かるが、部屋の中はそこまで華美な装飾はないな。

 そう言えばヘレンもそうだった。

 必要以上の贅沢はしない……そういう意味なのだろうか?


「こういう貴族も居るのか……」


 信じきるにはまだ早い。

 そうは思うにもクリエを守ろうとしてくれる協力者は必要だ。

 それが例え貴族や王だとしても関係はない。

 俺達の目的を果たすために仲間は増やさなくては……。


「その為には……」


 ヘレンの信頼を得る……そう、信用ではなく信頼だ。

 その為に両親であるこの二人を助けなくてならない。

 特に父親の方だ……もし本当に毒を盛られているのであれば、早く対処しなくては手遅れになるかもしれない。

 かと言って、先程思った通り、この薬を今、飲ませる訳にはいかない……焦っても結果はついて来ないからな。


 後は……。


「この屋敷に何人、いや……何体敵が居るかって事か……」


 まさか胸元を調べて歩くなんて事は出来ないし、普段通り生活するしかない。

 それに姉の方にはもう俺達の事は知られているはずだ。

 だとすると強硬手段に出てくるのもそう遅くはないだろう……。


「はぁ……」


 そう思うと気が滅入る。

 また人と戦わなきゃいけないのか……それで俺は姉の方、カミアを殺さなければならないのかもしれない。 

 例え相手が女性であろうとクリエの敵は俺の敵だ……。

 そう割り切ろうとして割り切れる程、単純じゃない。

 確かにやっている事は許せない。

 ヘレンが怒っていたのも分かる……彼女に今姉を殺してくれと依頼をされても俺達には断る理由がないよな。

 だが、それとこれとは話が別だ。

 違わないとトゥスさんには言われそうだが、それでも別だ。


「…………」


 俺は溜息をつき椅子へと座り込むとベッドへと目を向ける。


「ん?」


 すると、父親確か……ルーシェだったか、彼がこちらを向いていた。

 いつの間にか起きていた様だ。


「…………」


 俺は薬の入ったコップを手に取り、それを水のみへと移す。

 そして……。


「薬です……セージスライムのポーションを持ってきました。試しに……」


 そう告げてから彼へと飲ませた。

 怪しすぎるとは思うが彼はもう憔悴しきって考える力もないのだろう。

 口へと注がれるそれを飲み干していく……。

 頼む、これで良くなってくれ……そう願いながら俺は少なくなっていく薬を見つめる。


「……少し休んでください」


 そして、そう告げると彼は言葉が聞こえたのかは謎だがゆっくりと瞼を閉じる。

 さて……これで毒なら暫くすれば少しは良くなるはずだが……。


「気になる所ではあるが、即効性のある薬何て存在しない……気長に待つしかないよな」


 俺はそう言いつつライムを掌に乗せる。


「ありがとうな、ライム」


 ライムには本当に世話になってる。

 今回も毒かどうかを調べるためにはただの薬じゃ駄目だ。

 それでもセージスライムのポーションであれば、流石にすべての毒に効果がある訳ではないが、それでも様々な毒に効果がある。


「逆に効果が無い物を探す方が大変か……」


 そう考えればこれが一番手っ取り早く毒かどうかを調べることが出来る訳だ。

 本来なら教会に行き、試しに解毒の魔法を使ってもらった方が良い。

 だが、現状何処に敵が居るか分からないからな……。


「さてと、後は見張るとしますか……」


 俺はライムを頭へと乗せると椅子に座り、部屋の中で警備をすることにした。

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