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俺は百合勇者の従者にならざるを得ない……  作者: ウニア・キサラギ
10章 勇者《魔王》として
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215 ヘレンの両親

 これからの事を話し合ったキューラ達。

 相手は何時でもヘレンを狙う事は出来る。

 しかし、キューラ達はわざわざ探さなければならない。

 情報を集めつつ彼らは動き始めるのだった。

「頼むぞ、レムス」


 皆と離れ離れになった俺は早速レムスへとイリスの事を見守ってやるように伝えた。

 するとレムスはその大きな羽を羽ばたかせ『かぁ』と一言鳴くと、去って行く……。


 烏は頭が良いというが、うん……よく聞き分けてくれる良い子だ。

 そう思いながら俺は俺でヘレンへと伝えた通り、彼女の両親……彼らの部屋へと向かった。

 ノックをすると中から返事が聞こえ……。


「話は通っているはずですが、キューラと申します」


 扉越しに名乗る。

 するとゆっくりと扉は開いて行き……中からはメイド服の女性が姿を現した。


「お嬢様から話はお伺いしております」


 予め、頼んでおいたことではあったらこうすんなり行くのは手早く対処してくれたヘレンのお蔭だな。

 そう思いつつ、俺は部屋の中へと足を踏み入れる。

 すると疲れきった顔の女性が椅子に座っており、もう一人男性はベッドで横になっている。

 俺は彼らに頭を下げ礼をすると……。


「あら、従者のお方ね……」


 女性はふらふらとしながら立ち上がり、倒れそうになる。

 慌てて支えようと走るのだが、間に合わず……。

 運良く女性は机に手を付き転ぶ事は無かった……。


「ごめんなさい、心配をさせてしまったわね……今日は特に寝てなくてね」


 これはヘレンから聞いた事ではある。

 彼女の母親……つまり目の前にいる女性ソアラは父親ルーシェと大恋愛をし嫁いできたそうだ。

 周りの反対を押し切り、父親は彼女との結婚をしたらしく、未だにその熱は冷めていないとの事……。

 だからこそ、メイド達が傍にいてもルーシェの世話を焼いているのはソアラであり、その為行政はヘレンが行っている。

 実質的な領主はヘレンと言う事になるが、今はそんな事はどうでもいい。


「少しはメイド達に任せたらどうでしょうか?」


 俺は見ていられなく、そう提案すると彼女は首を横に振る。


「好きでやっている事です」


 そう言われてしまえば俺は何も言えないな。


「でしたら、今は少し休んでください、見ればルーシェさんも寝ている様ですし」


 そう口にしつつ、俺は一つほっとする。

 前に尋ねてきた時はそこまで頭が回らなかったが、彼女は運良く胸元が見える服装であり魔法陣は無い。

 つまりゴーレムではないって事だ。

 問題はルーシェの方だが……これは彼女に聞けばわかる事でもある。

 とはいえ、このままでは本当に倒れかねないので休む事を提案し……。


「ルーシェさんが目を覚ましたら、私がソアラさんを起こしましょう」

「そうですか……分かりましたではお言葉に甘えさせてもらいますわ」


 彼女はそう言うとふらふらとした足取りで王の横にあるベッドへと倒れ込み、そのまま寝息を立て始めた。

 ドレスが皺になるのでは? と思ったが最早それさえ気にしていられない程、眠かったのだろう。


 さて……問題は……ヘレンの父であるルーシェだ。

 彼は突然体調不良になったらしい。

 だが、それは本当に体調不良なのだろうか? 彼がそうなったのは姉が出て行くほんの少し前だとの事だ。

 急に倒れ、不調を訴えた彼は次第に喋る事もしなくなった。

 今はどうやら寝ているようだが……起きている時にそのまま暴れまわったりするらしい。

 まぁ、とは言っても寝たきりだ暴れ回ると言っても限度があるが……。


「そうは言っても怪しいよな?」


 そう呟いた俺はそっと彼へと近づき、胸元を調べるべく布団をずらす。

 勿論、メイドには不審に思われないよう、汗を拭ってやるそぶりを見せつつだ……。

 そして、確認をした所。


「……無い、か?」


 ゴーレムではない様だ。

 なら、なぜ?

 疑問に思いつつ、服と布団を元に戻した後、俺は腕を組みヘレンと別れる前に告げられた言葉を思い出す。





「お父様には気を付けてください」

「何でだ?」


 突然言われた言葉に俺は首を傾げた。

 気を付ける気を付けないで言われたら気を付けるつもりではあるが……なんで、いきなりそんな事を?


「今は寝たきりですが、突然暴れ始め……抑えようとした使用人が怪我をした事が何回かあります……ですので」

「突然ってそれ大丈夫ですか?」


 クリエは不安そうに俺を見る。

 だが、俺は溜息をつき……。


「大丈夫だ……でも、何で暴れ始めるんだ?」

「分りません、その時だけは奇声を発し暴れるんです……何故そうなったのかは誰にも……」





 分からない。

 ヘレンは少しの間を置きそう悔しそうに口にした。

 元は民を愛し、己の信念を貫く自慢の父だったそうだ……。

 だからこそ、姉に何かをされているのではっと涙をこらえていた。


 いや、何かをされているのは間違いないだろう。

 突然、体調がおかしくなるという事は無いとは言えない。

 だが……。


「そんな病気は聞いた事もない」


 俺が知らないだけかもしれない。

 だけど、俺はそう思い……彼を見つめている。

 すると気になる点があった……。


「これ、大丈夫なのか?」


 そう気になったのは首の所についている傷。

 小さな傷ではある、だがそこからは血がにじみ出ていた。


「……よく見ると細かい傷があるな」


 見えてる部分でこれなら、暴れた時に動かすであろう手や足はどうなのだろうか?

 ヘレンが心配になるのも無理はない……どうにかしてやりたいが……。

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