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俺は百合勇者の従者にならざるを得ない……  作者: ウニア・キサラギ
10章 勇者《魔王》として
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214 屋敷に戻って……

 服を選び終えたキューラ達はトゥスの元へと向かう。

 そこで合流した彼女は「駄目だ」と一言を告げた。

 どうやら、彼女が求める酒はそこにはなかったようだ。

 そして、そんな彼女を見てヘレンは「清楚で美しく俗世を知らないのがエルフ」だと訴えるのだった。

 屋敷に戻った俺達はある事に気が付いた。


「姉ってここには居ないのか?」


 そう、姉カミアの姿が見えないのだ。


「はい、勘当されていますので……ここには姉の部屋はありません」


 なるほど……確かにやってることがやっている事だ。

 ヘレンを見る限り、民を大切にしているみたいだし、両親もその可能性が高いからな。

 なら、追い出されていてもおかしくない。

 だが気になるのは姉は此処にいるって言う話を聞いたような? あれも情報操作だったのだろうか?


「でもそうしたら、何処に寝泊まりをしているんでしょう? いくら、危ない人とはいえ女性が外で寝泊まりするのは……危ないですよ?」


 クリエの言う事は確かに間違いではない。

 俺達の様な冒険者でも外泊時は警戒する……魔物だけじゃない、こういった街中でも危険があるからだ。

 特に女性となればそう言った連中もやってくる場合もあるからな。

 だが……。


「それは大丈夫だと思う」


 俺はそう口にする。

 するとトゥスさんも頷き……。


「そうだね、逆に外の方が安全かもしれないね」

「ど、どういう……こと?」


 トゥスさんの言葉にイリスは疑問を持ち首を傾げる。

 それに対し俺は――。


「例えば、此処にヘレンや両親が居る事は当然分かっている……だからこそ、カミアの奴はヘレンを襲うのにわざわざ探す必要はない。対し俺達は奴に会う為に探さなきゃいけない訳だ。同時に奴はゴーレム達に守られているし、ゴーレムの判断材料は胸の魔法陣だけだ」

「……でも、ゴーレムって……」


 ゴーレムと言われイリスが思い出したのは少年のゴーレムの事だろう。


「ヘレン、殺された中に手練れの騎士や兵士は?」

「え、ええ……何人か、ですが……っ!? まさか……」


 彼女は俺の言葉の意味に気が付いたのだろう。

 口元を押さえ、驚きの表情を見せた。

 そう、そのまさかだ……。


「ああ、奴はその騎士や兵士を自分の身近な所に置いているはずだ。自分の身を守らせるためにな。そうなれば睡眠を必要としないゴーレムの護衛が居れば何処に居ても安全は確保できるって訳だ」

「となると、面倒な事だね……」


 そうなんだよな……。

 俺達はロッシュの爺さんを含めて戦えるのが4人。

 こっちにいる兵士や騎士が何処まで戦えるか分からないが、カミアはそこまで馬鹿じゃないのは分かってる。

 恐らくはもうすでにこちらが気が付いていない所で戦力は削られているはずだ。

 つまり、頼りになるのはトゥスさん、クリエ、ロッシュ……そして俺だ。


「…………」


 ならどうする? 相手を探す手間もある。

 こっちから仕掛けるにしても相手の戦力が全く分からない……現状のままでは駄目だ。


「ヘレン頼みがある」

「な、なんでしょうか?」


 暫く黙っていたからだろうか? 声を掛けたら彼女はびくりと驚いた。

 だが、そんな事を気にしている暇はない。


「ここ最近で死んだ冒険者、騎士、兵士の情報を洗いざらい調べてくれ……それを元にどの程度の実力だったかを調べてくれると助かる」


 彼女の答えを聞かずにトゥスさんの方へと目を向け……。


「トゥスさんはこの屋敷に怪しい奴らが居ないか調べてくれ……クリエはそうだな、俺と一緒にと言いたい所だがここでヘレンを守るんだ」

「そ、そうは言ってもキューラちゃんは何処に? まさか無茶をする気じゃないですよね!?」


 警戒するクリエに対し俺はゆっくりと首を振る。


「まさか、俺はヘレンの両親の部屋を守る。勿論連絡の手段が必要だ……」


 俺はそう言うと一つの魔法を口にした。


「ドール……」


 嘗て奴隷になって侵入する際に使った魔法。

 土塊の人形を作り出す魔法だ……ゴーレムとの違いはこっちはただの通信用と言った方が良いだろう。


「これを皆に渡しておく……」


 以前は1個作るのがやっとだったが、今回はまだ余裕がある皆に分け与えるぐらいは出来るだろう。


「そして、水だけど自分で買って来たもの以外は飲むな……後ロッシュの爺さんにはいつも通りの警戒を頼んでくれるか? 変に動かすと怪しまれる可能性がある」


 コクコクと頷くヘレンはドールを見つめ目を丸めていた。

 そんな彼女とは別に不安そうなイリスは……。


「私は? 私も……なにか……」

「イリスには重要な頼みがある……!」


 俺は笑みを浮かべ、彼女の耳にそっとそれを告げた。


「…………でも、良いの?」

「ああ、許可なら後で取ってやる」


 俺はイリスへ向け笑みを浮かべる。

 実は一つ考えた事があったのだ……これはイリスにとってもチャンスであり、悪い話ではない。

 寧ろこの状況は利用しない方が勿体ないだろう。

 そう思って彼女に伝えると彼女は笑みを浮かべ「えへへ」と口にした。

 嬉しいみたいで何よりだ。


「な、納得できません!」

 

 そんな中、そう声を荒げたのはクリエだ。


「キューラちゃん、風邪完全に治った訳じゃないですよね!? それなのに一人で何て……!」

「風邪? そう言えば……体調不良は無くなったな……」


 クリエに言われるまで気が付かなかったって事はもう体は何ともないんだろう。

 それに……。


「クリエ落ち着け、風邪は大丈夫だし、なにより一人じゃない……」


 俺はそう言いつつ頭に乗るライムと近く床へと降り大人しくしているレムスへ目を向ける。


「ライムとレムスが居るしな」

「それは……」


 クリエは俺の言葉に急にもごもごと口にし始め……。


「でも、私が寂しいです……」

「何か言ったか?」


 小さな声で何を言ったのか分からなかった俺は尋ねるもクリエは拗ねてしまったのかぷいっとそっぽを向いてしまった。

 心配なんですとでも言ってくれたのだろうか? だが、本当に二人が居れば俺は安全だとは思う……といったもののレムスに関してはイリスに何かあったらマズイって事で見張らせる予定なんだが……まぁ、口にしない方が良いだろうな……。

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