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俺は百合勇者の従者にならざるを得ない……  作者: ウニア・キサラギ
10章 勇者《魔王》として
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208 少年が居る貴族の屋敷へ

 貴族の妹ヘレンの方へと着く事に決めたキューラ達。

 キューラは少年が魔法で操られているのではないか? と考え、それを探るためまた屋敷に行く事を提案するのだった。

 翌日、俺達はすぐに屋敷へと向かう事にした。

 だけど昨日の門兵達に勿論止められてしまったのだが……。


「話なら直接ヘレン様が聞いたはずだ」

「ああ、今日は別件で……領主じゃなくてヘレンとえっとなんて言ったっけ? あの爺さん」


 俺がそう言うと、二人の兵士はお互いに顔を合わせ……。


「ロッシュ様の事か?」


 その名前を出され俺は頷く。

 すると兵士達は……。


「いや、だが……お二人も暇では……」

「それにヘレン様達も民の頼みごとを聞いている。やはり少し待っていただけないか?」


 うーん……出来ればすぐに会いたいんだが、此処で強硬手段に出ても駄目だろうか?

 そう思い俺はクリエの方へと目を向ける。


「その必要はない」


 だが、すぐに屋敷の中から男の声が聞こえ、俺達がそっちを向くと其処に居たのはあの老人だ。

 彼は俺を見るなりしわくちゃな顔に笑みを見せ……。


「お嬢はそいつらが来る事を予想していた。さ、入れ」


 兵士が答えるよりも先に俺達を屋敷の中へと誘う老人。


「「ロ、ロッシュ様!?」」


 そんな彼の態度に兵士達は驚いていた様だが、まぁ……運が良かったのか?


「なんか怪しいね……」


 俺はそんな事を考えているとトゥスさんは老人を睨みつつそう呟いた。

 確かにすんなり入れるのは怪しいのかもしれない。

 だけど、昨日あんなことがあったばかりだ、別に変な事ではないはずだと思うのは俺だけだろうか?


「…………」


 クリエは緊張しているのか? それとも怖いのか? 黙っていた。

 トゥスさんと同じで怪しいと考えているなんて事は無いだろうな……とにかく静かだ。

 イリスは間違いなく緊張だろう、身体がガチガチになっている。

 とにかく俺達は老人ロッシュに案内をされヘレンの部屋へと案内をされた。

 民の話を聞いていると言っていたが、あれは嘘だったのだろうか? それとも朝だからだろうか?

 まぁ、それは良いか……。

 道中、何人かに物珍しいものを見るような視線を受けたがまぁ……気にしても仕方がない。


「お嬢、入るぞ」


 老人ロッシュはノックもせずに扉を開け――。


「ま、待ってください!?」


 中からは焦った声が響く……。

 暫く沈黙が流れたがロッシュは扉を閉め此方へと向き直るを豪快に笑い。


「着替え中だ待て」


 おい……着替えは良い、朝だし分かっている事だ。


「「ノックぐらいしろ(してください!?)!?」」


 俺の声と部屋の中の声は同時に響き渡った。


 暫くし、中から入って良いと言われ、俺達は揃って部屋の中へと入る。

 するとヘレンはロッシュを睨みつけているがまぁ仕方がないだろう。


「それで、あの少年の事で話をしに来たんですね」


 彼女は大きなため息とともに俺達の目的を口にした。


「ああ、頼めるか?」


 俺は頷き答えると彼女は少し迷い始めた。

 何かあったのだろうか? そう思っていると……。


「実はあの少年……」


 悲し気な表情を浮かべて彼女は語り出す。


「あの子は私の側近の兵士……の子供でした。その事から会う機会もあったんです」


 なるほど、まぁ……その兵士が利用をされてしまったって事だろうか?


「それで良く懐いてくれていて……それが、昨日から何度話をしようとしても私を人殺しとしか……」


 塞ぎ込んだ彼女は嗚咽をもらす。

 そんな彼女の傍へと寄った老人の騎士は……。


「あの少年に頼まれたらしい……お嬢は彼の父の為に姉を止めると決めただが……」

「その依頼主がおかしくなったって事か……」


 俺の言葉に顔を跳ね上げた彼女は睨みつけてくる。

 言葉が悪かった……と思うが他に言いようがない。


「とすると、やっぱりキューラちゃんの言った通り操られている? って事ですか?」

「ああ……だけど……」


 実はあの後、魔法陣について研究してみた。

 とは言っても解読できる限りだったが、少なくとも他人を操る様な高度な魔法は無い。

 魔法陣自体はこの世界に無かっただけで理解さえしてしまえばだれでも扱えそうなものだった。

 だからこそ、分かってしまったのだ。


「その線は薄くなった」

「おいおいキューラ、今日は操られてないかを確かめに来たんだろう?」


 呆れ声なのはトゥスさんだが、彼女がそう呆れてしまうのは最もだ。

 しかし……。


「無い物はないんだ……だけど、確かめに来たのは間違いない」


 操られている訳ではない。

 だが、方法が無いわけでもなかった。


「…………その確かめに来たのって?」


 イリスは可愛らしく首を傾げ、俺は言おうかどうか迷った。

 これを言ってしまえば恐らくヘレンは傷つくだろう。

 そして、もし本当にそうであれば……姉の方は人の皮を被った化け物と言ってもいいかもしれない。


「何かあるんですか!? 早く言ってください!!」


 俺が黙っている事に苛立ちを覚えたのだろう彼女は声を荒げる。


「彼の身体に魔法陣が無いかを調べる」

「それじゃ最初と同じじゃないかい? 操る事は出来ないんだろ?」


 トゥスさんの言葉に頷いた俺は……一呼吸おいてその事を口にした。


「ああ、だからその魔法陣があった時はそれは人間じゃない……遺骨から作られた魔法生物だ」


 本の内容を思い出し、俺は……その事を口にした。

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