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俺は百合勇者の従者にならざるを得ない……  作者: ウニア・キサラギ
10章 勇者《魔王》として
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207 どちらにつく?

 キューラが宿に戻ると其処には芋虫にされた少女クリエが居た。

 キューラは困惑をするのだが、どうやらトゥスが気を利かせてくれたらしい。

 彼女の拘束を解き、キューラは大事にならなかった事を伝えるのだった。

 さて、姉から依頼された時……あれから状況は変わったが、やることは決まった。


「俺達はこれから妹ヘレン側に付く……」

「へぇ……何があったんだい?」


 トゥスさんは興味ありげに俺に聞き俺は事の顛末を話す。

 俺が追いかけた先に居たヘレン達が居た事、毒入りの果物と子供を使い暗殺をしようとしていた事。

 それがあの姉と一緒に居た子供だという事だ。


「ヘレンは何の疑いも無くあの子から果物を受け取った……もし、あの子の家族に何かがあるのなら疑っていてもおかしくはない。話を聞いても子供が恨みを持っている事の方が不思議だ」

「何かが原因でヘレンさんを疑うようになったって事ですか?」

「親を殺されたら……姉の方には懐かないと思う……」


 クリエの言葉にもっともな答えを告げるイリス。

 確かにそうだ。

 だけど……多分恐らく……。


「精神操作、催眠……方法は分からないが操ってるんじゃないか?」

「人を操る? まさか、そんな方法ありえない」


 ああ、分かっている。

 分かっているんだ……()()()()()()()()()()()()()()って事ぐらい。

 前の世界でもマインドコントロールなんて言葉があったが、実際に被害にあった訳じゃないから実在するのかは分からない。

 だが、憎い相手、死ぬほど嫌いな相手に依存してしまうという事はあるだろう。

 それをそういうのなら……あるいはこの世界にも方法が見つかってないだけで可能かもしれない。

 そして、最も確率の高い方法それは……。


「異世界の魔法にならあるかもしれない」

「はぁ?」


 心底呆れた様な声を出すトゥスさん。


「いや待てキューラ、確かにこの世界以外に人が居ないなんて事は無いとは思うけどね、だけど……どうやってその異世界の魔法なんてのを使えるようになるんだい? それこそありえない!」


 だよな?

 確かにそう思うのが普通だ。

 俺だって記憶が無かったらそう思ってたし、あの本だってすんなり受け入れる事は出来なかっただろう。


「これを見てくれ」


 だが、俺には幸運な事に異世界地球で生きた記憶と知識がある。

 だからこそはっきりと言える。

 異世界は確かに存在し、稀に記憶を持ったまま転生することが出来るってな。


「確かキューラちゃんが手に入れた本ですよね?」

「ああ、此処には異世界の魔法である魔法陣に関することが書かれている。早い話が精霊石の道具を武器に流用したり、もっと便利な道具を作ることが出来る」


 精霊石の道具も便利な物だ。

 魔法を蓄えそれを使って灯の代わりにしたりすることが出来る。

 だが、永続的には使えない……必ず調整が必要になり、調整を一切しない場合は何度か使えば効果は無くなる。

 俺の剣に掛けられている軽くなる魔法も恐らく風かなにかの魔法が込められているはずだ。


「魔法陣……確かにその本はそう言った事が書かれてたね、だけどそれが本当に異世界の魔法なのかい?」

「……ああ、俺はそう信じる、魔法の道具なんてもっと便利な方が良い。精霊石は便利だけど使い勝手が悪いからな」


 俺がそう言うとトゥスさんとイリスは不満そうだ。

 だが、それは事実であり、学校でも習った……。

 もし仮に火を吹く武器があるとするならば、それは重宝するだろうと……。

 焚き木もいらず、食事も焼くだけなら切るだけで出来る。

 だが、そんな道具を作る術はないと……。


「その、魔法陣? ですか? それはなんですか?」

「ああ、簡単な話……魔法を言うのではなく、地面や布、床に書いて発動させるんだ」


 俺がそう言うとクリエは首を傾げた。


「魔力をそそぐんですか? どうやって?」


 この世界の魔力とは体力と同じだ。

 使えば疲れるが具体的にどうやって使うのかは分からない。

 ただ、自然に使っているだけだ。


「それは出来ない、だけど魔法自体には関係ないみたいだ」

「そう、なんですか?」


 正直俺もこの本を全部読んだわけじゃない……どこかに魔力の事は書かれているとしても今重要なのはそこじゃない。

 俺はこの魔法陣に催眠魔法があると睨んでる。

 じゃなかったら親の敵に子供が手を貸すなんて到底考えられないし、考えたくもない。


「明日あの子供に会いに行こう……それで身体を徹底的に調べる」

「大胆だね、そんなに子供が気に入ったのかい?」

「そうなんですか!? キューラちゃんそんな……」


 違う、そうじゃない、なんでそうなる!?


「魔法陣が無いか調べるんだ!」


 俺は念を押すように伝えるとトゥスさんは大笑いし……。


「分ってるよ! そんなムキにならなくてもいいじゃないかい」


 からかってるのは分かってるが、そこにいる勇者殿は何故か信じているからな。


「そ、そうですよね、良かった……」


 本当この勇者様は変態なのか純真なのかどちらなのだろうか?

 まぁ、とにかく誤解がとけた所で……。


「今日はもう寝よう」


 今日は出来る事は無い。

 幸い少年を探す手間は無い、なぜならヘレンの方が屋敷に連れて行ったからだ。

 何処に居るのか分かっているのだから焦る必要はないわけだ。


「良いんですか?」

「ああ、今日行っても迷惑だろうしな」


 俺はそう伝える。

 事実もう外はまっくらだ……こんな時間に屋敷に行っても明かりさえついていないかもしれない。

 なら、明日に向かえば良いだけだからな。


「そんじゃ、楽しむとしますかね」

「おい、何で寝ようって話が出て酒が出てくるんだ?」


 俺の提案を受け入れてくれた様子のトゥスさんはうきうきとしながら酒とつまみを出している。

 呆れ顔のイリスは二歩位後ろに下がっているが、慣れていると言っても俺も今回は突込みを入れざるを得ないな。


「大丈夫だ、そんなに飲まない」

「わ、分かってますけど……明日起きられないんじゃ?」


 クリエも加勢してくれるが……トゥスさんは半眼で訴えてきた。


「起きれば良いんだろう? これぐらいの楽しみも貰えないのかい?」


 しかも俺に目を向けて……はぁ……つまりは、魔王としての俺は部下に休暇も与えないのか? とでも言われてるのか?

 なんかそう言われると……いやだな。


「分かった、深酒だけはするなよ」


 俺は溜息をつきながらそれだけを告げ寝る準備を始めた。


「分ってるよ」


 そんな言葉がベッドへと潜り込んだ時に嬉しそうにそう言う聞こえたが……本当に大丈夫だろうか?

 俺は不安に駆られ一人小さな明かりを頼りに魔法陣の本を読み始めた……。

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