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俺は百合勇者の従者にならざるを得ない……  作者: ウニア・キサラギ
10章 勇者《魔王》として
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201 再び酒場へ

 宿へと辿り着いた一行は方法を考える。

 しかし、当然何かが思い浮かぶはずも無かった。

 そもそも本当にキューラ達が出会った貴族であるのなら話が出来るのでは? と彼は考えたが……。

 やはり、何かが変わる手段になるはずもなく……。

 また酒場に向かう事を提案するのだった。

 あの酒場に行って得られた情報。

 それは大したものが無かった……流石にあの情報通も食事を終えたのか居なかったし他に情報に通じた人は居たが……。


「妹殿の弱点……は無いか」


 唯一分かってるのは口喧嘩には弱いと言う事だろう、正論が通れば……の話だけどな。

 以前はロクタが街に来る可能性を考えたのか? と言うことでなんとかなった。

 だけど今回は兵の失態がある。

 貴族として当然の事! そう言われてしまえば終わりだ。


「どうするんですか? このままじゃ本当に……」


 殺すしかない。

 クリエはそこまでは口にしなかったが言いたい事は分かった。

 だが、俺はそんな事はしたくはない訳で……。


「貴族的には正しい事をしてても話が本当なら故意的なのは確実だ。なら……どこかに穴が出る」


 俺の言葉に溜息を吐き腕を組むのはトゥスさんだ。

 今回は無理に暗殺の方をやろうと言わないのは俺と同じ考えがあってのことだろう。

 しかし――。


「でも、その穴が見つからないから困ってるんじゃないかい?」


 彼女はそう呟く……痛い所をついて来たな。

 まさにその通りだ。

 だが、穴は確実にあるはずなんだ……あの洞窟だって俺達……つまり勇者一行とういうイレギュラーが現れなければ完璧だった。

 例えば俺達の様に無理を押し通し、入っていった人が居るとする。

 そこで犠牲が出てしまったり、無理だと判断し逃げてしまったりはともかく、入ってしまえばそれは兵士にとっては命令違反だ。

 だが、兵士が俺達を必死で止めなかった理由。

 それは勇者が居る事……そして、俺が言った可能性が間違っていなかった事。

 この二つだろう……と言う事は何かしらのイレギュラーが発生すれば、穴は出てくるはず……なんだが……。


「うーん……」


 それが今の所見つからない。

 悪さをしているだけはある一筋縄ではいかないって事だろう……。

 これで相手は貴族でなければ暗殺は良い判断だとは思う。

 だが、残念ながらこれは貴族の娘が標的だ。

 カミアが何かを企んでいる……と言う可能性も否定できない。

 余り疑うのも良くないとは思うんだが、彼女も貴族である以上腹の底は見えないからな。

 だからと言ってあの場でクリエの命をどう思うか、なんて聞ける訳がない。

 何故なら、俺達は既に妹と出会い、クリエの覚悟がどうとか話してしまっている。

 それを変に疑われて姉が探るために出てきた……なんて事もあるかもしれないんだ。


 そこまで考えて俺はああ、何で俺はこんなに疑り深くなったのか? と考えてしまった。

 事実、昔はこうじゃなかったはずだ。

 だけど、仕方がないか……何も考えずにクリエの命が奪われるのは駄目だ。

 なら、最悪の状況を予想し動かなければいけないよな?


「……どうしたものか」


 とは言え、今は方法が見当たらないんだよな……。

 だからこそ欲しいのは情報だ。

 相手の情報さえ手に入れば穴ぐらいは見つかりそうなものだが……残念な事に今現在は見つかっていない。

 情報をそうされているのか?

 とにかく分かっている事は三つ。

 今回のゾンビ事件の原因は貴族。

 もう一つは何らかの方法で罰を与えられるようにし、処刑している。

 そして……俺が持ってる本を狙っている。


 というか探している。

 この本はあの老人の幽霊……いや思念体から受け継いだ物だ。

 渡せる人間でなければ見つける事すらできなかったのかもしれない。

 ……かといってこれを餌におびき寄せるのは無しだな。

 これは新たな魔法だ……使う奴が使えば悪用が出来る。

 だが、正しく使えば魔王を倒す術にもなるはずだ。

 俺はこの魔法を覚えなきゃいけないし……万が一にも失うのは避けたい。

 それに、おびき寄せるにしてもまずは相手の穴を探す方が先だ。


「とすれば……」

「何か方法があるんですか?」


 クリエは首を傾げつつ、訪ねてくる。

 俺は首を縦に振り……。

 あった……たった一つで危険な方法ではあるが……。


「俺達はロクタを倒してるだろ? なら、その事で貴族に話をしても良いはずだ」


 何故あんな風に魔物を放って置いたのか? 街の人々の危険は考えなかったのか?

 それはあの時伝えたはずだ。

 しかし、彼女の親には一切そんな事は言っていない。

 子の責任は親が持つべきだ! なんて事は言うつもりはないが、それでも問い詰める理由にはなるだろう。

 それに、今はそれしか切り口が無い。


「周りに情報が無いなら懐に潜り込んで中から探す」

「……なるほどね、だけどその分危険には変わりがないよ?」


 トゥスさんはそう言うが他に方法が無い以上、思い切った手段に出た方が良いだろう。


「分ってる、もしもの時は俺達は逃げる……イリスも連れてな」

「わ、私も?」


 俺は頷き、仲間達の方へと目を向けた。

 彼女は放って置くことが出来ない、故郷にも帰ることが出来ず。

 不安が残る街に残すなんて事は俺の選択肢にはなかった。

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