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197 情報を求め酒場に

 キューラの見つけた本はやはり特別な物だった。

 今までの精霊石の道具を覆すほどの魔法を手に入れたキューラだったが、そこにはやはりアンデッドに関しては何も書かれていなかった。

 一体、あのアンデッド達は何なのだろうか?

 彼らは情報を集めることにしたのだった。

 翌日俺達は酒場へと向かう。

 酒場は昼間からもやっているし、情報収集をするだけならどっちでも構わないからな。

 それにしても……やっぱり酒場と言うのは凄い人だかりだ。

 冒険者に職人……様々な種族が居る。

 そんな中でもエルフはやはり珍しいのだろう。

 俺達が入るなり、酒場に居た人達はトゥスさんとイリスに釘付けになっていた。

 中を見渡してみてもエルフは居るが見当たる所一人だし、もそもそと野菜を食べている。

 うん……あれがエルフだよなぁ。

 そんな事を思い浮かべつつ俺達はカウンターの方へと向かい店主に声をかけると。


「何だ、ミルクなら出ないぜ」


 と不愛想なおっちゃんが言って来た。

 まぁ、俺が頼むならお茶かミルクなんだろうけど……。


「いや、今日は情報が欲しくて来たんだ。誰か詳しいやつは居るか?」


 ここに来た理由を告げると店主らしきおっちゃんはクリエへと目を向け一瞬驚いた表情を浮かべる。

 しかし、すぐに不貞腐れた表情へと変え……。


「あそこだ」


 そう言って指を向けた先には見るからに怪しい男が一人酒を飲んでいた。


「ありがとう」


 俺は礼を告げ、そちらの方へと向かうとクリエ達もついて来る。

 4人で動く事自体は珍しくないもののエルフ二人と勇者が居る一行は目立つのだろう、視線を感じつつ進むと、怪しい男は此方へと気が付き、笑みを浮かべてきた。


「なんだ? オイラに用か?」


 何処か嫌らしい笑みには何か裏があるのでは? と思ったが、情報屋なんてそんなもんかと考えた俺は彼の席に座り。


「情報が欲しい」

「……なんだやっぱりお客さんか、勇者ご一行とはオイラも有名になったもんだね」


 と言いつつ空になった木のコップを見せてきた。

 情報が欲しいならと言った所だろうか?


「一杯奢るよ」


 それを伝えると情報屋は頷き、店員を呼び止める。

 そして、何やら注文をするとこちらへと視線を戻し……。


「で、情報は何が欲しい? とは言っても情報屋と言えるほどの情報はないけどね」


 なんだ、情報屋じゃなくて情報通だったのか?

 まぁ、とにかく今は何でもいい。


「この街に居るアンデッドについて聞きたい」


 そう切り出すと彼は閉じかけていた瞼を薄く開き……。


「……会ったのかい?」


 話を切り出した俺の方へと目を向ける。

 俺は頷き答えると彼はしばらくの沈黙の後。


「何かを探している連中の成れの果てだ」


 それは知っている……俺達の求める情報じゃない事に気が付いたらしい彼は笑みを浮かべる。


「結構危ない話なんだ酒すら飲めない子供には言えないな」


 と言って来た。

 予想通り、酒が飲めない奴には情報をやらんというものだろう。

 俺はトゥスさんへと目を向けると彼女はニヤリと笑みを浮かべ――。


「なら、アタシが一緒に飲んでやるよ」


 と乱暴に椅子へと腰を掛け、俺の方へと目を向けてくる。

 クリエとイリスも椅子へと座ると偶々目が合った店員さんがこちらへと向かってきて……。


「何になさいますか?」

「追加で麦の蒸留酒と適当に酒の入ってない飲み物を三つ……ついでに何かつまめるものを適当に頼めるかい?」


 トゥスさんがそう告げると店員はメモを書き問って行き……笑みを浮かべるとカウンターの方へと向かっていく。

 注文を告げに行ったのだろう。

 そのやり取りを見ていた情報通は驚いた表情を浮かべ。


「エルフが強いのを飲むなんてな」

「あん?」


 っておい!? 笑みを浮かべて言ってくれたのにそんな威嚇をするような!?

 俺は慌ててトゥスさんの腕を軽く叩きなだめようとする。


「それで情報は?」


 だが、彼女は気にすることなく話を進めようとしていた。


「まぁ、焦るな、先ずは乾杯だ」

「律儀だね……」


 そう言いつつ不機嫌そうに舌打ちをするトゥスさん。

 喧嘩にならないだろうか? そうひやひやとしながらも飲み物が届くと笑みを浮かべながら乾杯をしているのを見た俺達は……。


「「「……酒飲みは分からないな(分からないです)」」」


 と声をそろえるのだった。


「まぁ、そう言うなって」


 情報通は笑みを浮かべながらコップに入った酒を煽ると……。


「さて、アンデッドの情報だろ?」


 話を切り出した。


「まずあれは普通に発生した魔物ではない」

「ああ、それは分かる」


 アンデッドとは死んだ時、未練を残したことによる後悔で生まれる魔物だ。

 この平和な街では殺しなども少ないだろうし、ましてや兵士ばかりがアンデッドになるのはおかしい。


「ありゃ、お姫様のうっぷん晴らしで生まれたんだよ」

「……え?」


 お姫様? って……ここには城なんてないぞ?

 俺達が疑問に首を傾げていると……。


「貴族の娘と言った方が良かったな……二人いて姉の方はまぁ、普通だが妹がな……奴は食事に毒を仕込みその様子を楽しんでいるんだ」

「まてまてまてまて……」


 俺は思わず声を上げる。

 いくら貴族だと言ってもやっていい事とやっちゃいけない事がある。

 ましてやこれは人としておかしいぞ!?


「それじゃ……ただの犯罪」

「いや、違うな……」

「違うんですか?」


 即答された事に俺は口をパクパクとさせるとクリエが代わりに聞いてくれた。


「ああ、奴は殺された兵士達に罪が重なり、処刑をされるように仕向けているんだよ……」


 なんていうか頭の回る奴だな。


「面倒な奴だね」

「ああ、それで街を守ろうとする意志が残っている連中を旧商店街に配置しているって訳だ」


 だから表立っていないってのか……なんというか、かなりおかしな話だ。

 というか、アンデッドならいずれ朽ち果てて腐臭がするはずだ……。

 だってのに問題にならないのはおかしい……とんでもない街に来てしまったな。

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