193 トゥスは何処へ?
修理は終わり、残るはクリエの武器を直すだけだ。
キューラ達は店主に邪魔だと言われ、そのまま店を追い出される。
だが、彼ははっきりと二日後だと口にした。
クリエの武器の事なら彼に任せれば大丈夫だろう、問題は――トゥスの方だが?
宿へと戻ってきた俺達だったが、そこにはやはりトゥスさんの姿はない。
「大丈夫でしょうか?」
クリエは当然彼女の事を心配するが、あのトゥスさんの事だ。
「武器もないのに外に行くような人じゃないし、大丈夫だと思う……けど」
そこまで口にしておいてだが、なんというか……。
「心配だな」
「ですよね?」
心配するなって言う方が無理な話だろう。
とは言っても……。
「修理をどこでやってるのか、それに何処に素材を取りに行っているのかも分からないしな」
そもそも素材が必要なのかさえも分からないな。
うーん……彼女が黙って外に行くとは考えづらいっという事は街の中にには居るんだろう。
静かな場所で修理しているのか? それとも……修理が出来ないと感じてどこかに銃を探しに行っているとか?
いくらなんでも買った時にすぐに直せないとは判断できないだろうし……。
「探しに行きますか?」
「ああ……そう、だな……」
とはいえ、放って置く訳にはいかないな。
俺はそう判断し、クリエの案に首を縦に振る。
「探す……でも、何処から?」
何故かイリスは俺の頭を撫でながらそんな事を口にし……クリエは不機嫌の様なそうでないような微妙な表情を浮かべる。
「ぅぅ……あああぁ? ……でも、でも!」
そして、何かを呟いているが……うん、関わったらいけない、そう思えるのは何故だろうか?
「うーん……」
普段なら酒場、賭けが出来る場所……そんな感じはするが……。
彼女は作業をする時はどんな場所でするんだ?
「全く想像がつかないな」
あの容姿でエルフらしからぬ発言と行動。
森を愛す事無く動物には病気があるから気を付けろともっともな事を言う。
ある意味、人間社会に生きてるエルフなんだろう……だけど、今はそんな事はどうでもよく……。
「うーん……静かな所じゃないですか?」
「静かな所?」
……静かな所…………うん、これほど似合わない所があるだろうか?
「キューラちゃん……いくらなんでも似合わないと思うのは失礼だと思います」
「へ!? 俺声に出してたか!?」
慌てて確認すると彼女は首を横に振る。
「キューラちゃん、そんな顔してたら誰でも分かる、よ?」
そ、そうか、顔に出ていたか……あまり顔には出さない方なんだけどギャップがあり過ぎたって事だろう。
でも、クリエの言う通りだな。
「一応見に行ってみよう、イリスどこか静かな場所は知らないか?」
俺が訪ねるとイリスは考えるのだろう天井を見上げ首を傾げる。
暫くそうしていたのだが、ゆっくりとこちらへと目を向けると……。
「旧市場なら静か……かも……」
「旧市場……ですか?」
イリスの答えに疑問で返したのはクリエだが、勿論俺も同じ意見だった。
何せ俺達はこの街に来て日が浅い。
「案内してもらえるか?」
そうお願いするとイリスは頷き……。
「うん!」
と言ってくれた。
それからすぐに旧市場と言う場所に向かう俺達。
一体どんな場所だろう? そう思っていると意外な場所へと辿り着いた。
そこは……。
「ここって……」
そう俺が迷い込んだ場所だ。
「ここ!」
イリスは笑みを浮かべこちらへと振り返り、クリエはその姿を見て「うへへへ」と笑う。
だが、そんな事はあまり気にならず……俺の意識が向いていたのはあの本屋だった。
ボロボロの本屋……俺が何故か気になり入った店。
看板もないのに不思議だが……導かれたって事だろう。
そう言えば確かにこの辺りは静かだ。
「そ、それで残るは……」
トゥスさんが何処に居るかだが……。
「お店が多くて探すのが大変そうですね」
クリエの言う通り旧市場と言うだけあり、店が多い。
だが、その店も殆どが閉まっている様子で人の気配が少ない。
うーん……。
「今居る人に聞いて見よう」
他に手が見つからず俺はそう提案し……クリエとイリスは同時に返事を返してくれた。
「手分けをしますか?」
「いや、一応こういう所では一緒の方が良い」
何が起きるか分からないからな。
そう付け加え、俺は一番近い店に立つ老人へと目を向けた。
「あの……」
声をかけると老人は此方へと振り返り……。
「…………」
「エルフの女性を見かけませんでしたか?」
俺は訪ねてみると彼はイリスを指差す。
「いや、この子じゃなくて」
思わずそう返すと老人は目を見開き、がたがたと震え始め……。
「あ、ああ!? ああああああああああ!!」
絶叫をし始めた。
一体なにが起きた!? そう思い慌てて後ろへと振り返ると其処には兵士が立っており。
「…………」
彼は無言のまま、俺達をかき分けるように退けると老人の手を取り引っ張り始めた。
突然の事に俺達はぽかんとしていたのだが……はっっとすると――。
「お、おい! 老人相手に何をしてるんだよ!!」
乱暴に引っ張る彼の腕を掴む。
だが、俺達なんか気にしても居ない様に兵士は此方への関心を持たない。
おかしい……そう思った俺は彼の兜を取り払うと……。
「っ!?」
彼は…‥‥最早腐りかけた死体だった。




